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 セールスジャパンの経営を始め、様々な事業活動に携わるマイク丹治が、日々仕事を通じて感じていることをつづります。国際舞台での活動も多いので、日本の政治・社会・産業の課題などについて、グローバルな視点から、コメントしていきたいと考えています。

カジノの功罪

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ようやく出てきたカジノ法案

どのくらいの人が気付いたかは分からないが、先々週に民主党の古賀一成氏を中心とするいわゆるカジノ議連が、会長試案ということで、日本でのカジノ解禁に関する法案を発表した。カジノと言えば、多くの人がギャンブルということで顔をしかめると思うが、私はたまたまその産業に関わっていた時代があることもあって、日本の経済活性化、そしてわが国への海外からの観光客の流入という観点で、望ましいと感じている。

もちろん自民党政権の時代にもカジノ議連はあり、様々な議論を行ってきていた。ただ、これは今も同じだと思うが、わが国の社会では何故かギャンブルイコール悪という風潮が強く、従って自民党が言いだせば民主党が反対、民主党が言い出せば自民党が反対、というジレンマの中で、なかなか前に進まなかったのではないかと推察している。

そのような環境下、思い切って法案を出したのだからこれは意義深いと感じている。法案の考え方は、あくまでカジノを特殊な例外として、当初2か所、最終的にも10か所という限られた政府の選定する地域に限って認めるものとし、元来議論のあった刑法典の賭博行為の禁止への抵触を回避する構造となっている。また、最大の観点は、わが国唯一公営でなく行われている同種の遊戯であるパチンコ、パチスロに全く触れなかった点だ。

パチンコ、パチスロとの関係

パチンコ、パチスロはわが国ではギャンブルとは想定しておらず、従って景品交換という形式を取っているが、実際に景品を通じて現金に換金できるという点では、カジノのスロットマシンと区別するのは難しい。ましてやそもそもパチスロはスロットマシンから派生したものでもある。従って、仮にスロットマシンを有するカジノが出来て、そこでは現金換金が直接できるとなると、パチンコホール業者などから不公平との反論が出る可能性がある。

これを認識しつつ、限定認可という手法をとって、複雑な業界事情があるパチンコ、パチスロ産業に触れずに、まずは経済再生と地域復興という目的を達成するために、カジノ解禁を目指して来年の通常国会での審議を目指す動きには、心から敬意を表したい。もちろん、上記の刑法の観点や、パチンコ業界の反応、更には実際に事業者の認可などをどうするか、地方主導型だが地域間の調整をどうするか、などなど課題は山ほどあるが。

政府主導の産業政策はうまくいかない!

今週のエコノミストに、先進諸国が再び産業政策を重視しだした、という記事が載っていた。要は、中進国などが政府主導で急速な経済成長を続ける中、やはり政府の様々な支援による経済誘導は重要という認識が高まっているというのだ。もちろんこれはそもそもリーマンショックで相当程度金融機関や大手企業が国有に近い状況になっているという事情も反映されている。

しかし、一方で「産業政策」と言えば日本、閣僚が新幹線や発電設備などの商談で世界を飛び回る姿は、やはり私が心配したように揶揄され始めている。そして、更に菅政権の成長戦略などが取り上げられ、政府が介入して成長産業が成立するというのは、過去にあったためしがない、とコメントされている。私も、果たして完全な市場主義が優れているのかどうかとなると、疑問を呈するが、少なくとも産業の成長という観点ではこの議論に賛成だ。

例えば、高度医療を受ける外国人に特別なビザを発給して、日本で高度医療を受けていただき、結果として経済が潤う、という政策が掲げられている。そのこと自体を否定するつもりはないが、これが成長戦略の一つとして挙げられているのを見ると、何故?と言いたくなる。

医療よりカジノのほうが現実的

まず、わが国の医療はそんなに高度なのか?確かに有名な医者はいるようだが、それでも海外に治療に出かける人が多いのは何故?外国人にとってありがたい話かもしれないが、それは高い治療費を払える一部の人だけで、あまり日本の印象を高めることにならないのでは?そもそも一方で自国で高度な医療を受けられない日本国民はどうするのか?保健医療制度との関係をどう考えるのか?そして、これが一体どの程度の経済効果なのか?などなど疑問は尽きない。

つまり成長戦略と言っても政治家の考えられることなどこの程度なのだ。だとすれば先に述べたカジノなどは極めて秀逸と言える。もちろんパチンコ業界との調整などの問題は残るが、パチンコは日常のゲーム、カジノはショッピング、飲食、ショーなどを含めたリゾート型で、全く異なるという位置づけであれば、一方で景品両替を含めた複雑な産業構造となっているが故に、いずれにしても同列の取り扱いが難しいパチンコ、パチスロとの住み分けも出来るような気がする。

そして、そのもたらす経済効果は、マカオなどの例を見ても絶大。そして日本が格好の市場であることは、世界のカジノ王ウィン氏やアデルソン氏が関心を示し続けていることからも間違いない。そして、そのカジノに世界中から顧客が来て、カジノだけでなく京都など日本の観光を楽しみ、日本ファンになっていく、是非前向きに進めてほしいものだ。

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