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 セールスジャパンの経営を始め、様々な事業活動に携わるマイク丹治が、日々仕事を通じて感じていることをつづります。国際舞台での活動も多いので、日本の政治・社会・産業の課題などについて、グローバルな視点から、コメントしていきたいと考えています。

マイク丹治のグローバルアイ その4

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今日は4つほどコメントしたいと思います。まず、郵貯問題、それから今週行ってきた香港の感想、最近の法律改正、最後に小沢氏の起訴問題です。

新聞記事によると、郵貯の預入限度額の増額を踏まえて、アジアなど海外のインフラ投資に対するわが国企業の関与を直接支援するという話があるようです。確かに、他国の企業が政府の強力な支援を受けて大きなプロジェクトで入札に勝つという状況があるのは事実のようです。ただ、そもそも未だに世界の大国であるわが国が、表立ってこのようなプロジェクトに政府が関与するということを表明すれば、当然WTOへの提訴など、市場原理に違背しているとの批判を受けるのは明白です。まして、リーマンショックを受けて、わが国は輸出主導型の経済構造から脱却する方向性を模索していたのではないでしょうか?いつまで経っても、紆余曲折はあるものの、結局元の木阿弥、政府として社会主義経済を目指すのであればいざ知らず、無策所以の先祖返りとしか思えません。ましてや、貸付などに関するノウハウもない、国際業務の経験もない郵政会社がどうやって実行するというのでしょうか?

仮にこのような制度を検討するにしても、あくまで一旦国債を購入して、その原資で旧国際協力銀行などを通じて行うようにすべきですし、また政府が大企業と一体となって会社を設立するなどというのは言語道断です。更に言えば、今大事なことはこのような分野を支援することではなく、日本経済を支える中小企業やベンチャー企業に資金が回るようにすることです。BIS規制や、世界経済の低迷で、金融機関や投資家は投資意欲、リスクテイク能力を欠いています。政府が郵便貯金の資金を原資とした国債の発行を通じて、直接リスクテイクする機関を設立し、ある程度の損失を覚悟して中小企業やベンチャー企業に直接投融資を行うことによって、経済活動を活性化させることが必要だと考えます。10兆円程度のファンドがあっても良いと思います。

ところで、先週は香港とフィリピンに行ってきました。いつも香港で思うのは、東京よりはるかに国際化されているということです。これは街並みとかではなく、市内を歩いていて一流の国際人が多数歩いていると感じるということなので、ひょっとすると私の単なる勘違いかもしれませんが。もし上述の私の直感が正しいのであれば、それはもちろん香港が地勢的にアジアの中心にあるとか、中国へのゲートウェイになってきただとかのことが一番の理由だと考えられます。でも、もっと大事なのはビジネスの世界で人を惹き付けてきたということでしょう。税金や投資環境など様々な要因があると思いますが、とにかくビジネスの世界で魅力的なのだろうと考えます。それに対して日本はあまりに制限が多く、社会として柔軟性に欠ける。だから結局は海外のビジネスが関心を失ってきたのだろうと思います。今回フィリピンの最大手のコングロマリット、SMグループの総帥のテシー・コソン女史とお会いした際、「いろいろと世界が大きく変わりつつあるのに、日本は静かですね。」と言われたのが、心に響きました。

さて、このところ従前から議論されてきた基本法の改正が、民主党政権の成立を経て矢継ぎ早に成立しようとしています。これは、どうも民主党が基本理念を示さない中で、自動的にスケジュール通りに事が進められているという状況のように思えてちょっと不安です。商法改正で労働者代表の取締役をということですが、そもそも今の商法がドイツ法の監査役制度、アメリカ法の会計監査人制度、アメリカ流の社外監査役や社外取締役など、様々な制度を継ぎ接ぎで導入した揚句、世界に類を見ない何十通りも会社の形態がある制度になっていることをきちんと整理したのかどうか、極めて疑問です。民法については、現在の契約形態の多様化などに対応するということで債権者法の改正を行うようですが、小生の駒場時代の同窓生である角立教大学教授が先日朝日新聞に寄稿していたように、どうも付け焼刃の感じが否めません。そもそもわが国の法律は、明治以来のそれが何度にも亘って加筆修正されてきていますが、すでに社会は大きく変化を遂げており、もはやこのような改正では社会を規定するものとして機能しなくなっているのではないでしょうか?世界の経済体制自体が揺らいでいる今、そろそろ法学者が根本から現行法をその制定の目的から見直し、新たな社会の要請に従った法律の目的を明確にして、これを踏まえた法律体系、基本法の制定を提言すべき時に来ていると考えます。

長くなりましたが、最後の課題、小沢氏の起訴問題です。私は個人的には小沢氏は旧来の金権自民党の系譜を引いていると思いますので、問題となっている資金などは相当程度好ましくないものである可能性が高いと考えます。従って、起訴の有無に関わらず、小沢氏は民主党政権を自らの砦と考えるのであれば、議員辞職をして表に出ないようにして裏から支えれば良いのではと思います。ただ、実際に個々の政策に小沢氏が時々口を出すというのは、結局今の民主党が彼の砦ではなく、一時の仮の宿ということなのだろうと感じる次第です。だとすれば、彼はとにかく頑張り続けて、最後は自らが率いる政権を作り上げるということなのだろうと推察します。問題は、彼が何をしたいのか明確ではないということであり、それが国民を不安にさせます。それもまた彼独特の戦術なのでしょうが。ところで、一点だけここで指摘したいのは、起訴のベースになる検察審査会です。どうも仕組みがよくわかりませんが、二度起訴相当と出れば起訴しないといけない、という制度で、メンバーは国民から選ばれるのですが、刑事事件という極めて慎重に対応すべきものに関して、いくら助言を受けるとは言っても一般人に判断させるというのは、ちょっと乱暴な気がします。元々被害者に配慮した仕組みとのことですが、例えば裁判官や弁護士に審査させるなど、工夫が必要ではないでしょうか?もちろん私は小沢氏の支援をする気はありませんが、検察が不起訴にしたということは、立件が難しいということであり、ここで更に無駄なコストを使うよりも、小沢氏が自ら議員辞職をするべきだというのが私の個人的見解です。

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