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(047)SONYと三井物産の株主総会での実践勉強

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前3月期の定時株主総会がほぼ終わりました。
SONYと三井物産の定時株主総会に行ってきました。
高齢株主の多さに世界で先行する高齢社会日本の現状を見た感じです!!
21日に行われた物産の総会は雨の中、凄い人で会場に入りきれず第2会場で映像での参加となりました。品川駅から傘をさし蒸し暑さで汗だくの人並みには驚きました!!
三井物産は配当利回りが高い企業なので個人株主が多いのでしょう。創業来初めての赤字決算で多くの株主が心配で聞きに来たのかも知れません。

両社共に冒頭から高齢株主が大声で暴れ、波乱の幕開けでした。
SONYの議長は静粛に、、の指示に従わなかった株主に対して、即刻強制退出を命じ、係員に退出を実行させた速さには驚き!!
三井物産の議長は何度も静粛に、、を求め続け、かなり辛抱、最後には係員が外に連れ出しました。
構造改革にメドをつけ前年度1,260億円の損失に対して1,478億円の利益を出し強気に転じたSONYと1,900億円の利益予定に対して834億円の損失で創業来初めて赤字企業に転じた三井物産に、"即刻と辛抱"の違いが出たのか?と思いましたが、説明を聞くにつれ「ゆとり感」の違いが表れているように感じました。

(047)話は、総会において使用された会計処理用語・経営指標について触れます。
(045)話で新入社員営業マンにどれだけの経済知識が必要と思うか?について書きましたが、今回はSONY,三井物産の定時株主総会で実践的に勉強したことを書きます。
営業マンにとって必要な知識であると改めて感じております。

1) 減損処理
両社ともに減損処理が大きく作用しました。
稼ぐ力が低下した資産を現実の価格に反映することを減損処理といいます。
キャッシュが減る訳ではないのですが、資産の目減り分利益が減ります。減損処理を断行すれば、通常余程のことがない限り翌期は楽になります。
SONYの場合;2014年度に行った減損処理及び構造改革が効いて、2015年度大幅な損失縮小となって1,478億円の純利益となりました。(2014年度1,260億円の赤字)
2015年度も長期性資産の再評価が行われ、ディバイス事業では、902億円の減損処理が行われています。
三井物産の場合;資源・エネルギー価格の下落による減損処理で、投資損失が1.320億円となり2015年度に834億円の赤字計上となりました。(2014年度3,065億円の黒字)
ただし、このところの原油価格の戻りで、今期は大きな収益計上になるはずです。会社は今期2,000億円の純利益を予定しています。
このように減損処理はマイナスイメージだけではありません。多くの場合V字回復の伏線と言えます。

2)キャッシュ・フロー
三井物産の場合;大きな資金を運用する商社の特性か投資活動によるキャッシュ・フロー管理が重視されておりました。
2015年度のフリーキャッシュ・フロー(純現金収支)は、
A)営業キャッシュ・フロー(5,870億円)
B)投資キャッシュ・フロー(4,081億円)
A)-B)=1,789億円でした。
2015年度の事業活動の結果、手元に残った自由に使えるお金は1,789億円だったということです。
SONYの場合;株主に送られてきた定時株主総会の資料にキャッシュ・フローの説明はありません。
ここに業態と経営視点の違いを感じました。

3)EBITDA
グローバル経済での経常的な収益力を測定する指標です。
企業の国際価値が分かる指標で、国によって異なる金利、税率や減価償却など会計基準の違いからの影響を除外し公平性を持って企業比較することができる便利な指標です。
計算式;
連結損益計算書上の売上総利益+販売費及び一般管理費+受取配当金+持分法による投資損益+連結キャッシュ・フロー計算書の減価償却費及び無形資産等償却費の合計した数字で、実質稼ぎだした収益を示します。

三井物産の場合;2015年度3,364億円(前年比4,519億円減)だったと報告しております。
SONYの場合;株主に送られてきた総会資料には何も触れられていませんでした。
外国人株主比率が54.6%と高いSONYがEBITDAに触れず、22.8%の三井物産が重視しているのが不思議です。

4)中期経営計画
両社ともに中期経営方針を発表しており、株主資本利益率(ROE)を最も重視する経営指標に据えています。アベノミクスでも日本企業の資本生産性を高めることを目標に入れており、両社共に
ROEを10%にしたいと述べてます。
SONYの場合;2015年度4.7%で中期経営計画最終年度の2017年度にROE10%にしたいと説明。
三井物産の場合;2015年度ROEがマイナス2.2%に転落(2014年度7.7%)
次の中期経営計画期2018年度~2020年度に10%を達成したいと説明。

以上の通り、企業により、業態により、株主に説明する情報の優先度が違うことが分かります。
どちらの企業が株主に配慮しているか?というと
配当利回りの高さだけではなく、説明の親切さを見ると三井物産だと感じました。
剰余金の配当に関して、三井物産は2015年度年間64円が2016年度50円になることもあってか総会決議事項として取り上げたのに対してSONYは2015年度年間20円を取締役会で決定していて総会決議事項に取り上げておりませんでした。
三井物産は震災後支援している気仙沼漁港のお土産をくれたがSONYはお土産を廃止した、、という観点ではありません。
よりコンシューマーを相手にしているSONYは、もっとハートを感じさせてくれた方が好感持てる!!と感じたのは筆者だけだろうか?

会計処理用語/経営指標の説明;

・減損処理
稼ぐ力」が低下した資産を現実の価格に反映することを減損処理という
例えば、ある企業が使う設備機械の帳簿価格は1億円だが、その機械で作る製品の人気がなくなってしまいその機械を他の企業に売却しても3,000万円でしか売れなかったとする。その機械の「稼ぐ力」が下がったと判断し差額の7,000万円を損失に計上し帳簿価格を3,000万円まで下げます。これは一過性の処理ですので、来期に効いてきます。

・キャシュフロー
キャッシュフロー計算書は、
企業の様々な現金の出入りを整理したもので、企業の資金の状況を知ることができる
製品を販売すれば売上高が計上されるが、代金回収が数か月先ということも珍しくない
売上高だけでは分からない実際の現金の出入りを管理している
・重要なことは、事業活動の結果手元に残った自由=フリーに使えるお金、つまり営業CFと投資CFを足して求める純現金収支で、これをフリーキャッシュフロー(FCF)という
このフリーキャッシュフローを使って、借入金返済や、配当、自社株買いを行うことが多い

・キャッシュフローは3通り
期末の現金残高=期初の現金残高+-営業CF+-投資CF+-財務CF
1)営業CF=仕入れや販売など日々の営業活動に伴う現金の出入り
2)投資CF=工場の建設や機械設備の購入といった投資活動に伴う現金の出入り
3)財務CF=営業活動や投資活動を維持するためにどの程度の資金が調達または返済されたかを示す
資金が不足した場合にどのように資金の穴埋めをしたのか、反対に資金に余裕があり、フリーキャッシュフローがプラスの場合、資金をどのように使ったのかを把握することができる

・EBITDA
企業の国際価値が分かる指標で、国によって異なる金利、税率や減価償却などの会計基準からの影響を除外し公平性を持って比較することができる便利な指標
企業の国際価値が分かる指標で、国によって異なる金利、税率や減価償却などの会計基準からの影響を除外し公平性を持って比較することができる便利な指標、
計算式=連結損益計算書上の売上総利益+販売費及び一般管理費+受取配当金+持分法による投資損益+連結キャッシュ・フロー計算書の減価償却費及び無形資産等償却費の合計した数字

・中期経営計画
多くの企業が、向こう3年間で何を実現させるかについて中期経営計画を公表しています。
企業のHP IR情報で見ることができます。
中期経営計画を公表する企業が増えています。
TOPICS500(大型株と中型株500社)の約80%が中期経営計画を作成公表しています。
多くの企業が、向こう3~5年間で何を実現させるかについて中期経営計画を公表しています。
中期経営計画を企業がこぞって発表するようになったのは、1999年日産自動車ゴーン社長が「コミットメント必達目標」を打ち出し注目されて以来とされています。
2015年6月に導入された企業統治指針が日本企業の中期経営計画のあり方を大きく変えています。
掲げる「努力目標」から達成する「公約」に性格が変わり、株式市場も投資材料として吟味し始めています。
中期経営計画の進捗状況を発表する企業も出てきました。(例:日立製作所)
2015年6月に導入された企業統治指針が日本企業の中期経営計画のあり方を大きく変えています。
掲げる「努力目標」から達成する「公約」に性格が変わり、株式市場も投資材料として吟味し始めています。
中期経営計画の進捗状況を発表する企業も出てきました。(例:日立製作所)

・ROE
株主から預かったお金で効率的に稼ぐ力を示すのが株主資本利益率(Return of Equityの略)です。「当期純利益÷自己資本」で求められ、株式市場、経営者から最も注目される指標の一つです。
日本企業はROEを重視するようになり、中期経営計画で目標値を打ち出す企業が増えてきました。
8%を一つのメドにしていますが、中期経営計画で10%以上を目標にする企業が増えています。

アベノミクスの成長戦略の一環として、グローバル競争に打ち勝つ攻めの経営判断を後押しして日本企業の資本生産性を高めることで、経済の好循環を実現させようとしています。

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