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破壊せよ、とグーグルは言った

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既に周知と思いますが、グーグルが書籍検索サービスについて米国出版業界と和解しました(ソース)。弁護士の福井健策先生がブログで法律的な分析をされていますのでご一読をお勧めします。

和解案の骨子は以下のようになるかと思います。

  • グーグルの現行のブック検索サービス(著作権切れ書籍は全文表示、著作権が有効な書籍はキーワードのみ表示)はフェアユースの範囲内であり米国内では合法
  • 絶版本(で著作権が有効なもの)はグーグルがスキャンデータを販売できる。売り上げの63%が著作権者に回される。
  • 刊行中の本は通常通りキーワード周辺の一部だけが表示される。
  • 刊行中の本でもオプトインでグーグルにスキャンデータを販売してもらうことができる。
  • 絶版の本でもオプトアウトでグーグルの販売対象からはずしてもらうことができる。
  • サービスが提供されるのは米国内のみだが、スキャン対象の書籍は全世界。
  • このスキームに入りたくない著作権者は今年の5月5日までにグーグルに通知する必要あり

要するに絶版本はグーグルが勝手にスキャンして、勝手に売っちゃうよ(お金は払うよ、いやなら言ってくれればやめるよ)というスキームです。著作者の立場から言えば、今までは絶版本から得られる期待収益はゼロであったのが、多少は収益が期待できるようになります(しかも63%という魅力的な印税率)。まあ、自分の意志で和解したのですから著作権者にとっては十分に魅力的に見えたということでしょう。

頭の中では思いつきそうではありますが、これほど破壊的なスキームを実現しようとする人はまずいないでしょう。それを平然とやってのけるグーグルにはしびれる、あこがれると言う他はありません。

せっかくなので、音楽でも「破壊」を続けて、廃盤はグーグルが勝手にリップして販売してよいというスキームができればおもしろい(Jazzの名盤でも廃盤になっているのは結構多い)のですが、まあそうはならないでしょうね。

どちらにしろ日本は当分(永遠に?)蚊帳の外のような気がするのが、残念なところです。

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