オルタナティブ・ブログ > 栗原潔のテクノロジー時評Ver2 >

知財、ユビキタス、企業コンピューティング関連ニュースに言いたい放題

世界のIT市場は3%縮小とフォレスターは言うがその実態は?

»

米国のIT調査会社フォレスター・リサーチが2009年度の世界の総IT支出が前年比3%減となるという調査結果を発表したとのニュースがありました(ソース)。

一般に、IT予算のカットは企業の競争力低下に結びつきますので、景気が悪い時でもIT予算はそれほど縮小しないのですが、昨今の経営環境はそれをも許さない厳しい状況にあるということでしょう。

しかし、このニュースの元となったフォレスターのプレスリリースを読んでみると興味深い点がわかります。現地通貨で地域ごとの伸び率を見ると、アメリカでは1.9%の伸び、西欧は1.3%の伸び、東欧・中東・アフリカ地域は5%の伸び、アジア太平洋は3%の伸び(残念ながら日本単独での伸びはこのプレスリリースからはわかりません)です。地域別に見るとすべてが伸びているのに、なぜ全体でマイナスになっているかというと、2008年度初頭と比較して(円を除く)各国通貨がドルに対して安くなっているからです。特に、ユーロ安が効いていると思われます。

ちなみに上記のニュース記事にもあるように、現地通貨ベースで「加重平均」を取ると3%の伸びだそうです(さすがにフォレスターは某投資銀行のようにアホではないので、パーセント値を単純平均したりはしてないですね)。

こう考えてみるとそれほど暗い話ではないようにも思えますが、ITベンダーのほとんどは米国拠点であり、ドル建てで業績を計算しますので、やはり状況が厳しいことには変わりはありません。

また、フォレスターの調査では2000年と2001年も前年比マイナス成長だったようですが、その時と違うのはどの市場セクターも弱く、「弱い市場セクターを補完する成長市場が存在しない」という点だそうです。確かにそれは言えるかもしれません。2009年のITは全くのお先真っ暗というわけではないですが、模索の時が続きそうです。

Comment(1)