知財資本主義と「特許ゴロ」の境目
パテントサロン経由で知りましたが、本日のワールドビジネスサテライトの特集は
「特許争奪戦」。知的所有権をめぐる日本の政府・企業と外資との攻防とは。
だそうです。日経平均1万円割れでそれどころではなく「急遽予定を変更してお送りします」になってしまうような気もしますが、もし予定通り放送されるのだとすると、おそらく、最近日本進出を図ったインテレクチャル・ベンチャーズ(IV)の話なのでしょう。
追加: 本当に「番組の内容を一部変更して...」でしたね orz 私のせいではないですがどうもすみません。
IV社は様々な企業から関連する特許権を買い集めて、特許ポートフォリオを作り、それを再ライセンスする会社です。マイクロソフトの元CTOであるネイサン・ミアボルト氏が創立した会社です。よく言えば、知財の流通を促進して価値を高める企業ですが、いわゆる「パテント・トロール」とみなされることも多い会社です。
ご存じの方も多いと思いますが「パテント・トロール」とは、自身では特許発明を実施しないで、ライセンスだけで収益を得る会社です(日本語で意訳すれば「特許ゴロ」)。特許権を主張する企業が自身も事業会社である場合には、通常クロスライセンスにより解決が図られて、双方が得をし、結果的に産業の発達が促進されることが多いわけですが、トロールの場合は言い値でライセンスせざるを得なくなることもあるため、かえって産業の発展が阻害されるリスクがあります。
実は、IV社については、拙訳の「オープン・ビジネスモデル」でも10ページほどを費やして紹介されています。そこを読むと、ミアボルト氏自身も含めた優秀な科学者の集団であり、単に特許権を金にあかせて買い集めるような企業ではないことがわかります。とは言え、結果的にトロールとみなされてしまうケースがあることは否定できないでしょう。まともな投資ファンドとグリーンメーラーの境目がよくわからないことがあるのと同様だと思います。
こういう問題を防ぐために、特許権の効力をもう少し弱めるべきではという議論もあります(いわゆるアンチパテント主義)が、そうすると、実は特許大国の日本の国益に反する点もでてきてしまうので難しいところです。
ちょっと余談になりますが、「オープン・ビジネスモデル」の導入部では、無形財産の自由な流通の促進により価値を高める例として「住宅ローンの証券化」が挙げられています。あくまで例のひとつとして挙げたので本の全体的な主張には直接関係ないのですが、結果的にずいぶん間の悪い例になってしまったと思います。