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そもそも著作権利用の包括契約ってどーなのよ?

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音楽著作権管理のあるべき姿で言えば、使った分に応じて利用者(あるいは利用者にサービスを提供するプロバイダー)が料金を支払って、(可能な限り少ないピンハネで)著作権者(作曲家・作詞家)に利用料がわたるようにするのが理想でしょう。しかし、現実的には、全曲を申告するのは事務作業的にやってられないことが多いので包括契約にしているわけです。いわば、包括契約は妥協案です。

生演奏を提供するライブハウスやCDをかける音楽喫茶等では包括契約せざるを得ないことが多いと思われます。と言いつつ、今はネットでJASRACのデータベースを検索すればすぐ番号がわかりますし、通常のライブハウスであればそんなに負担はないかもしれません。ただ、一説には個別許諾にすると包括契約より高くなってしまうという話もあるようです(ライブハウスやジャズ喫茶とJASRACの関係についてはいろいろとあるようですが、まだ充分に調べ切れておりません。もう少し情報がそろった段階で書きます。)

放送局については、普通はどの曲をかけるかは事前にわかってるので個別申請でも大丈夫そうな気がしますが、実際のオペレーションを知らないのでよくわかりません。過去の番組とかを流すときにやっかいなのかもしれません。

一方、ネットの世界であれば、個別許諾でもそんなに困らないと思います。eyeVIOなんかはうまくJASRACのデータベースと統合されてますのでほとんど負担なく曲情報が入力されます(余談ですがeyeVIOは音が悪いので自分では使う気はないですが)。

ニコ動でも同じような仕組みにしてもよいですし、最悪、自分でJASRACのデータベースを調べてタグに楽曲番号を入れろという方式になっても、せいぜい数分間の手間なのであまり困りません。

ということで、ネットの世界では必ずしも包括契約である必要はないんじゃないかと思います。特に、JASRACがJ-WIDのWeb APIを解放して、mp3のタグとして管理番号埋め込むような仕組みを作ればかなり自動化できると思います。

さらに言えば、曲名と作家名を入れれば複数の著作権管理団体を串刺し検索してしかるべき管理番号をゲットするような仕組みも簡単にできるでしょう。利用料の配分の方も、自動化して適切な管理団体に分配するようにできるはずです。

一般に多数の著作権管理団体があるとややこしくなって大変と言われていますが、それはライブハウス等での上演権の話であって、ネット上の公衆送信権(含む、通信カラオケ)については、適切なシステムさえあれば複数の著作権団体があってもそんなに困らないでしょう。

少なくともネットの世界では、複数の著作権管理団体が正当な競争を行なって、権利者(作曲家・作詞家)も利用者もハッピーな仕組みが作れると思います。ライブハウスなどのフィジカルな世界とは分けて考えた方がよいかもしれません。

そういう意味では、今回の件は、ネットには直接関係ないですが、著作権管理事業にも競争原理が必要という認識を世の中に与えたという点では良かったのではないかと思います。

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