そもそも何で国内曲とか外国曲とかややこしいことになっているのか?
なんか今週はニコ動に振り回されてしまった感じであります。ところで、前回書いた質問(「静止画あるいは真っ黒画面にJASRAC管理外国曲を付けたものはアップできますか?」)について、ニコ動側から回答が帰ってきました。お答えはNGというこことです。「動画投稿サイト」としてJASRACと契約している以上、投稿されたものはすべて「動画」とみなすという運用のようです。
さて、そもそも、なぜ同じJASRAC管理曲でも国内曲はOKで外国曲はNGというややこしいことになっているのでしょうか?
この説明をするためには、まず逆に、なぜ外国の曲を日本で演奏したり、ネット配信(動画なし)したりする時に、その外国の著作権団体の許諾を受けなくてよいかを考えてみましょう。これは、世界各国の著作権管理団体がネットワークを結んで互いに許諾を行い、利用料のやり取りをしているからです(JASRACのサイトの「JASRACの国際ネットワーク」を参照)。音楽の著作物の利用は歴史がありますので、この辺は結構しっかりしてます。
こういう仕組みがあることで、ビートルズのカバーをライブハウスで演奏したり、CDに録音したりする場合でも、イギリスの著作権団体とやり取りする必要はなく、JASRACがワンストップショップとして機能してくれるわけです。
ところが、動画のBGMとして音楽を使う権利(通称、シンクロ権)については、この国際ネットワークの範囲外となっています。国内曲ならどうせシンクロ権もJASRACの管理下なので問題ないですが、外国曲の場合であれば作詞者・作曲者の国の著作権管理団体(あるいは、音楽出版社)と直接やり取りする必要があります。「さよならをおしえて」を動画サイトに合法的にアップするためには、フランスの団体と交渉して、許諾をもらって利用料を直接支払う必要があることになります。正直、やってられないですね。
では、なんで、動画だけ特別扱いなのかということなんですが、私の推測では、昔は動画に音楽を付けるというと映画にBGMを付けるケースくらいしかなかったからだと思います。映画は基本的に巨額が動くビジネスなので、著作権法でも特別扱いになっている規定が多いです。
このルールが決まったときには素人が短い動画を非営利でネットに投稿するという状況はまったく想定されていなかったのでしょう。しかし、私が「さよならをおしえて」をニコ動にアップすることで、いったいどのような不利益がフランス人の作曲家に及ぶのでしょうか?少なくともCGMの短い動画のBGMについては、早急に権利の相互許諾の国際ネットワークを作ることをJASRACにお願いしたいものです。
追記: シンクロ権については著作権法には直接の規定がありませんが、「動画と共に使用することを許可する(あるいは、許可しない)」という特約を付けた複製権(あるいは、公衆送信権)の許諾(ライセンス)と考えることができるでしょう。はてブで「シンクロ権は著作者人格権」と(妙に断定的に)書いて人がいるようですが、間違って覚える人が出てくると大変なのでここで注記しておきます。
また、日本だけではなく、少なくとも英国においてもYouTubeが著作権管理団体と契約を結んでいます。それぞれの内国曲を自由に使えるのですから、ネットの世界で国をまたがって相互利用できない理由はないでしょう。映画やCMまでブランケット契約にせよとまでは言いませんが、CGM系サイトの短い動画については国をまたがった相互利用を可能にしてもらいたいものです。