個人でCDを作成した場合の原盤権について
»
もうほとんど過去の話になっているので蒸し返すのも何ですが、宮沢賢治の「セロ弾きのゴーシュ」を声優さんが朗読したCDを作った人が、無断でニコニコ動画にアップされたので、苦情を申し入れたが削除してもらえなかった(現在は削除)という事件がありました(ソース)。
ここで、このCD製作者さんがニコ動に対して削除を要求できる正当な権利があるのかという話ですが、既にこちらの弁理士さんのブログでもファイナルアンサーが出ているようにレコード製作者の権利(通称、原盤権)のひとつである送信可能化権(著作権法96条の2)に基づいて要求できると考えます。
宮沢賢治は1933年没なので、文芸作品としての「セロ弾きのゴーシュ」はパブリックドメインになっていますが、そのことはレコード製作者の著作隣接権の発生とは関係ありません。極端な話、著作物ではない野鳥のさえずりを録音してCDにした場合でもレコード製作者の著作隣接権は発生します。
また、通常はレコード製作者(=原盤権が原始的に帰属する人)とはレコード会社になりますが、個人で企画製作したCDならば、その個人がレコード製作者になります。ということで、別途、契約で原盤権を他人に譲渡でもしてない限り、今回のCD製作者さんの削除要求は正当なものであったでしょう。
ニコ動がなかなか削除してくれなかったのはその辺の事情がわかってなかったのか、あるいは、製作者さんがうまく説明できていなかったとのでは(たとえば、「セロ弾きのゴーシュの著作権が...」みたいな説明をしてしまうと、「パブリックドメインの作品にお前は何言ってるんだ」と思われてしまうかもしれません)と推測されます。
SpecialPR