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【連載企画】合法的音楽配信サイトを作ってみる(5)

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連載企画と言いながら、流れが止まってしまいましたが、着々と進行しています。

JASRACから発行されたIDとパスワード(英字大小文字と数字のランダムな組合わせ)を使って、JASRACのJ-TAKT(ご登録者/ご契約者サービスメニュー)にログインできるようになっています。ここから、いろいろと変更処理やクレジットカードによる利用料の支払いができるようになっています。

しかし、変更処理ができるとは言っても、たとえば、楽曲数を増やしたりとか、ストリーミングに加えてダウンロードもやるとかの変更を行おうとすると、結局、手続きを最初からやり直すことになります(JASRACに申し込み書を送って、書類の到着を待つということの繰返し)。結局、ユーザー登録する意味は、いちいち住所等を再入力しなくて済むというくらいしかありません。

実は、もう公開できそうな初音ミク作品はいくつかあるのですが、最初に申し込んだ時に余裕を見て12月からサービス開始としてしまったので、それはもう変更不可能なのです。すぐに始めたければ、再度、許諾の申請をしなければいけません。少なくともクレジットカードのオーソリが済んでいる利用者に対しては、オンラインでもっと柔軟かつ迅速に変更手続きをできるようにしていただきたいものです。

それから、JASRACから「音楽著作物利用許諾書」という書類が(だいぶ前に)届いています。この書類に書いてある許諾マークダウンロードキーを使って先ほどのJ-TAKTサイトから許諾マークをダウンロードすることができます。このダウンロードマークをサイトに掲示することが求められています。マークは単なるpng型式の画像ファイル(配信形式と曲数が書いてあります)で特に属性情報はくっついていないようなんですが、何らかの形で管理情報がエンコードされているのかもしれません。

ところで、JASRACというとネット・コミュニティでは目の敵になりがちですが、少なくともネット配信に関してはそれほどアコギではないと思います。非営利+ストリーミングでであれば、月額1000円払えば無制限に配信可能です。こんな形態にまで金を取るなんてと思われる方もいるかもしれませんが、逆に考えれば、金さえ払えば外国曲も含めてほとんどの音楽作品を大手を振って使えるのですから、そんなに悪い話ではないでしょう。

ただ、金の問題はまあいいとして、上記に書いたように利便性という点では、いかにもお役所仕事という感じがします(JASRACは役所ではないですけどね)。たとえば、ISPと提携して、ISPのサービスのオプションとして許諾サービスを一括で提供できるようにすれば、利用者も広がるし、結局、得だと思うのですが。

より、根本的な解決策はもっと競争原理を働かせることでしょう。建前上は著作権管理事業はJASRACの独占事業ではありません(他の著作権管理団体のリスト)。ただ、事実上は、歴史的経緯もありJASRACの独占に近い形になっています(ちなみに、音楽著作権管理事業は公正取引委員会の監視対象になっています)。ある程度政策的に、このような現状を公正な競走が行われる方向にシフトしていくべきでしょう。

現在は、著作権の利用パターンごと(CD化、楽譜発行、公衆送信等々)に分けて、著作権管理事業者と信託契約を結ぶことが可能になっています。たとえば、CD化の権利をJASRACに信託して、ネット配信の権利を別の団体に信託することが可能です。これをさらに一歩進めて、複数の団体に持ち分を定めて信託できるようにしてはどうでしょうか?たとえば、ネット配信の権利をJASRACに50%、他の団体、たとえば、イーライセンスに50%信託するというようにです。著作権の共有は著作権法的には問題ないですから、原理的には可能だと思います(この辺の制度や実務に詳しい方いたら教えてくださいな)。

すべての領域(特に生演奏関係)でこれをやると管理業務が大変なことになってしまいますが、ネット配信に限定すれば、かなりの程度自動化できますので何とかなるのではと思います。著作権者(作曲家、作詞家)の人も、複数団体に分けて信託をすれば、どの団体が、最小限のピンハネで利用料をクリエイターに還元するという著作権管理団体の本来の業務に忠実かということがわかると思います。また、音楽著作物の利用者の方も、一番、利便性が高い団体と契約するでしょうから、その辺でも競争原理が働くでしょう。

【バックナンバー】

【連載企画】合法的音楽配信サイトを作ってみる(4)

【連載企画】合法的音楽配信サイトを作ってみる(3)

【連載企画】合法的音楽配信サイトを作ってみる(2)

【連載企画】合法的音楽配信サイトを作ってみる(1)



Comment(9)

コメント

kyousum

著作権を共有すると、原則として全ての持分権者の許諾なしには行使できなくなってしまいますよね(65条2項)(3項の例外規定がありますけれど)これでは競争は難しいと思います。
同じ持分権に関して複数の管理団体に委託できるようにするのはありと思うのですが、共有以外の構成が必要と思います。
…共有でも両者への信託条項に色々書いておけば大丈夫ですかね?

すめ

>ところで、JASRACというとネット・コミュニティでは目の敵になりがちですが、少なくともネット配信に関してはそれほどアコギではないと思います。
なぜアコギではないかという理由が上の文章の後に書かれていますが、正直「?」と思わざるを得ません。「目の敵」にされている一番の理由は徴収したものを還元してない、公表しないなどの不透明さにあると思います。集めた月額1000円のうち95%を手数料として自分の懐に入れているのか、逆に5%を手数料として得て、残りを著作権者に分配しているのか、だれも分からない(知ることができない)から、アコギだと言われているのではないでしょうか。つまり徴収額の大小ではなく、(また大槻ケンジの例を出すまでもなく)JASRACが相当量のピンハネをしていると思われているから、「目の敵」にされているのだろうなと考えていました。

JASRACへの疑問

> 非営利+ストリーミングでであれば、月額1000円払えば無制限に配信可能です。

前々から疑問に思っていたのですが、ストリーミング配信について、JASRACから技術的なサポートを得られるのでしょうか?
具体的には、”ダウンロードさせない方法”を手取り足取り教えてもらえるのか? ということなのですが・・・その手の資料は送られて来ますか?
旧プレイヤーズ王国のような、きちんとダウンロード出来ないようにする方法を私は知りません。
こんな私でも、ストリーミング配信で契約出来るような体制になっているのでしょうか?

通りすがり

ネット配信なら月額1000円ですか。
これは安い。
漫画等で歌詞をちょこっと使うだけで5万円取られるんですけどね。

yoshi

月額1000円とは、1曲に対しての金額ですよね?
何曲でも配信できなら本当に安いと思いますけどそうでないから全然安いとは思えないのですが・・・

>集めた月額1000円のうち95%を手数料として自分の懐に入れているのか、逆に5%を手数料として得て、残りを著作権者に分配しているのか、だれも分からない(知ることができない)

この場合の手数料は12%のようです。ホームページに大きく載ってます。印象でコメントしない方がいいと思います。(別にJASRACの味方ではありませんが)

http://www.jasrac.or.jp/park/procedure/procedure_p_5.html#

>月額1000円とは、1曲に対しての金額ですよね?

10曲ごとのようです。(上記と同じページ)
個人的には非商用ネットラジオをやったら一体いくらかかるのか知りたいです。曲の使用にあたってはレコード会社の許可が必要なので、ほぼ無理だとは思いますが。

栗原潔

>庵野雲さん
代わりに回答どうもありがとうございます。
なお、ダウンロード(非商用)の場合は、10曲ごと月額1000円ですが、ストリーミング(非商用)の場合は10曲以上であれば月額1000円で固定です。私は100曲(これが上限?)で申請しております。これでも、月額1000円(年額だと割引で10000円です)。安いと思います。
非商用ネットラジオも、CD音源を使わなければストリーミングと同じではないでしょうか?この手の質問は、JASRACのサイトから問い合わせると結構迅速に答が返ってきます。
なお、「JASRACへの疑問」さんの疑問(ストリーミングとダウンロードの切り分け)については、過去のエントリーで書いています。
http://blogs.itmedia.co.jp/kurikiyo/2007/09/post_01ec.html
わかりやすいように、本文に過去記事へのリンクを付加しました。

>栗原潔さま
よく分かりました。ありがとうございます。
「10曲ごと(曲数の制限なし)」とは、こういう意味だったのですか!
ただ、JASRACに登録されているCD音源以外の音源ってあまりないのではないかと思います。だから安いのかな?

toshi

>たとえば、ネット配信の権利をJASRACに50%、他の団体、たとえば、イーライセンスに50%信託するというようにです。

のくだりですが、複数団体に信託すると使用料の回収業務に支障が生じると思います。
もちろんどちらの団体から許諾を得ているかを表示するなど解決方法が無い訳でなないでしょうが、実際の業務においてはかなりの混乱が生じるでしょう。

>たとえば、ISPと提携して、ISPのサービスのオプションとして許諾サービスを一括で提供できるようにすれば、
手続きの煩雑さを緩和することはできますが、報告についてはなんら変わらないと思います。なぜならどの楽曲がどれだけ使用されたかは楽曲使用者(サイト運営者)にしかわからないからで、さらに権利者に使用料を分配するにはこの報告こそが最も大事だからです。

権利管理業務が独占で無くなった以降のJASRACのネット配信に対する対応は、完璧ではないにせよかなり良い線ではないかと個人的には思っています。

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