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従量制自動車保険について

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今週はTeradataのユーザー会PARTNERS 2007(@Las Vegas)に来ているわけですが、基本的にユーザー主導のイベントなのでいろいろと興味深いデータウェアハウス関連のユーザー事例を知ることができます。

なかでも興味深かったのは英国の保険会社Norwich UnionによるPay-As-You-Drive(従量制)自動車保険です。今までも私の講演のたびに紹介してきた事例ですが、今回は担当者の話を直接聞けたので非常に参考になりました。契約者の車両にGPS機器を搭載して走行パターンを補足し、それに応じて毎月の保険料が決定されるという仕組みです。走行量が多かったり、危険地域の走行が多かったり、平均速度が速かったり、夜間の走行が多かったりすると保険料が高くなるという仕組みです。あたかも、携帯電話の料金体系のようなものです。

これによりハイリスクな契約者の保険料は高くなりますし、ローリスクな契約者の保険料は安くなります。また、車を使わなければ安くなります。極端な話、その月にまったく車を運転しなければ保険料も最低額になるということです。利用者にとっても保険会社にとってもメリットがある方式と言えるでしょう。

ただ当然ながら扱うデータ量が半端ではありません。試行段階で他社DBMSを使用したところ、データ量に耐えきれなかったのでTeradataを選択したということのようです。Teradataというと超ハイエンド・データウェアハウス専用DBMSというような印象があるかもしれませんが、これからこの手のユビキタス的なアプリケーションが普及するにつれてますます出番が増えてくるかもしれません。

アイデア的にはすばらしい事例だと思います。講演の時にNorwich Unionの人に特許についてはどうなってるのかを聞こうと思ってましたが忘れてしまいました。ホテルの部屋に戻ってからちょっと調べてみると、少なくとも日本では2000年に富士通が同様のアイデアを出願しています(その後、審査請求を出さなかったため取り下げ)。取り下げの理由は不明ですが、先行技術が既にあって進歩性を立証できる見込みがなかったのかもしれません。いずれにせよ、自動車保険を従量制にするというアイデア時代はかなり以前からあるようなので、このアイデアそのもので特許を取るのは難しそうです(実装上の細かい工夫であれば特許化の余地はあると思いますが)。

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