ロケフリ裁判について(2)
今回のロケーション・フリー事件(「まねきTV事件」)と似た事件として、「録画ネット事件」(判決文)や「選撮見録(よりどりみどり)事件」(判決文)などがあります。どちらも、TV局側の主張が認められて著作権の侵害が認定されました。
この場合の著作権の侵害とは正確には複製権の侵害です。複製権というのはTVの場合で言えば要するに録画する権利です。著作権法上は私的複製は認められている(そうでなければ、CDをiPodに落とすこともできません)のですが、その規定は以下のようになっています(一部省略、太字は栗原による)。
著作権法 第30条 著作権の目的となつている著作物(略)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(略)を目的とするときは(略)その使用する者が複製することができる。(後略)
要するに私的複製をする時は使用する本人がコピーなり録画なりをする必要があり、業者に頼んでコピーしてもらうというのはNG(著作権法違反になる)なわけです。客からLPレコードを預かってCDにコピーしたりとかmp3にエンコードしたりとかする商売はいかにも需要がありそうですが、著作権法違反です。自分のレコードを自分で聴くためにコピーしてもらうんだから勝手やんと思えそうですが、私的複製はどこかで歯止めをしないと違法コピーし放題になってしまうためこういう規定になっていると思われます。
先の二つの事件では、業者側所有の機器に業者側の業務として録画を行なってますので、明らかに利用者以外の者が複製を行なっているということで、私的複製とは認められませんでした。送信可能化権の議論の前に、複製権で既にアウトということです。
ところで、ソニーのロケーション・フリー・ベースステーションはHDDレコーダ等を接続してネット経由でリモートコントロールで録画操作ができるようになっています。実際、「まねきTV」でも利用者が買ったHDDレコーダーも預かって録画ができるようにするサービスも提供しているようです。今回の件では複製権は判断の対象に入ってないですが、東京地裁の決定のロジックで言うと、HDDレコーダーへの録画も私的複製として認められそうに思えます。
知財高裁でひっくり返されるリスクはあるとは言え、同様のサービスに進出するプロバイダーが今後出てきそうな気がします(だいたいどこに気をつければ差し止めの仮処分を受けないで済むかは決定文読めばわかりますので。)