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組み込みソフトウェアは日本の救世主になるのだろうか?

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かなり前の話になってしまいますが、日本IBMが家電向け組込製品の開発支援サービスを強化したという記事

最初読んだ時は、日本IBMに家電のノウハウなんてあるんだろうか?どう見ても日本の家電メーカーの方がスキルはあるだろうと思ったのですが、要は、開発方法論、設計支援ツール、プロジェクト管理等、業務アプリ開発のノウハウを組み込みソフト開発に応用するという形での支援をするという話のようです。まあ、それだったらわかります。

こういう動きの背景にあるのは、組み込みソフトがどんどん大規模化して、重要性も増してきて、従来のような職人芸や力技に頼った開発では限界が来ている、業務系ソフト開発のようにもう少しサイエンティフィックなアプローチが必要だということでしょう(業務系ソフトも職人芸や力技だよという突っ込みはなし^^;)。

まあ、これは言うまでもないことで、AV系家電の組み込みソフトアは下手なパソコンソフトよりも複雑化してますし、トヨタのプリウスの事件でもわかるように組み込みソフトのバグが重大な問題を引き起こす可能性も増しています。

さらには、IT市場の大部分が低成長化する中で、数少ない右肩上がりの分野として組み込みソフトウェアに注目が集まるのも当然です。

また情報家電は日本が世界的に競争力を維持できている分野ですから、今後伸ばしていかなければならないのも当然です。

そういうことなので、日本IBMだけではなく、多くのITベンダー、そして、METIを初めとする政府機関も組み込みソフトウェアについて騒ぎ始めてるのは当たり前のことです。

ちょっとバブル入っている気もしますが、これ自体は正しい方向性だと思っています。

ただ、一点気をつけるべきことは組み込みソフトの開発、少なくともコーディング・レベルでは本質的にオフショア開発に向いているという点です。

あくまで業務系ソフトウェアと比較してですが、仕様のあいまいさも少ないですし、開発後の仕様変更も少ないですし、国の文化の違いの問題も小さいでしょう。

コミュニケーションで問題が生じがちな業務系ソフトやコールセンター業務よりも、仕様に厳密にしっかり安く作ればよい組み込みソフトウェアの方がオフショアに持って行きやすいだろうということです(もちろん、現在でも既にかなりの部分が海外で開発されているでしょう。)

もちろん上流スキルを国内に蓄積することは重要なのですが、国内のプログラマーの雇用確保という点では、組み込みソフトは期待されているほどの効果を上げられるのかというとちょっと微妙だと思うわけです。

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