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サイボウズとマイクロソフトの協業について

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 サイボウズとマイクロソフトがグループウェア製品の開発・販売で提携をするというニュースが流れている(参考記事:「サイボウズとマイクロソフト、SharePointを基盤に新グループウェアを開発へ」)。この件についてグループウェア業界としてはどうとらえるべきかちょっと考えてみた。
 9月28日に両社からのプレスリリースが出ているが、その内容によるととマイクロソフトのコラボレーション基盤であるMOSS(Microsoft Office SharePoint Server)上でサイボウズが新しいグループウェア製品を開発して販売するということのようだ(製品販売開始時期は未定)

 マイクロソフトは、最近自社製品のMOSSをポータルソフトから基盤系のミドルウェアへとシフトさせるように戦略を変化させた。この流れに沿って2009年3月に富士通と協業を発表し(参考記事:「富士通とマイクロソフト、エンタープライズ市場でのソリューションビジネスで協業 」)その第1弾の成果として2009年8月に富士通製のグループウェア「Teamware」とMOSSを組み合わせた製品を発表し展開を始めている。この件については当ブログでも8月10日に「TeamwareとMOSSの連携というニュースを読んで」という記事で取り上げた。
 したがって今回のサイボウズとの提携もこの既定路線にそったものであり特に驚く内容のものではない。

 ただサイボウズ側から見た場合これは若干異なってくる。サイボウズはこれまでグループウェア製品としては、自社で独自開発した小規模向けのサイボウズ Officeシリーズと中規模向けのサイボウズ ガルーンシリーズの2本立てで展開をしてきた。今回の発表では、この2つの上位にあたるより大規模向け製品をMOSS上で開発すると言うことであるが、これは従来の自社開発路線からは大きな転向になる。

 実はOfficeシリーズはともかくガルーンシリーズについては、初期のガルーン1の後即座にガルーン2をリリースしたが、その後にはバージョンアップがずっと止まっていた。ガルーンシリーズは当初の大規模向けという触れ込みにも係わらずアーキテクチャー面から実は1000人を超えた規模で使う場合にいくつかは問題があり、大規模向けのEIP型グループウェアとしてはドリームアーツのINSUITEなどに大きく水をあけられてきた。
 また独自アーキテクチャーで構築されておりデータベースやデータ形式などがオープン仕様でなく、他システムとの連携等を実現するためのカスタマイズや追加開発がしづらいという問題もあった。このため特にガルーン2については、長い間オープンなアーキテクチャーでスケーラビリティを持ったものへのバージョンアップが期待されていた。ところがガルーン3はいっこうに開発されず、結局別の製品体系を新設するという事だ。いかにグループウェア専業ベンダーとはいえ製品ラインが3つにもなるのはちょっと多すぎなきがする。

 さて今回発表にある次期ガルーン(製品名は発表されていないがココではあえてこう呼ぶ)をマイクロソフトアーキテクチャーで構築することになったらしいが、これは吉と出るか凶と出るか非常に微妙なところだと私は考えている。マイクロソフトアーキテクチャーベースとすることで開発者の確保やユーザ管理部分など基本的機能の開発コストの削減は期待できるものの、これまでサイボウズ製品の利点だったものが失われる可能性も高い。

 この失われそうな利点とは以下の3点である。
 まずは製品価格の高騰。これまでサイボウズ製品は独自アーキテクチャーで単体にて稼働する製品であったが今回MOSS上で構築することでMOSS分のライセンスフィーが必要になる。さらにユーザ管理部分をActive Directoryに委ねたりデータリポジトリ部分にSQL Serverを採用した場合、製品を動かす為に追加で複数のライセンスフィーが必要になる。これまでサイボウズ製品は、Lotus Notesなどに比較して低価格であることをウリにしてきたが、新製品ではこれは厳しそうだ。
 次にミドルウェアにMOSSを採用することによるパフォーマンスの低下が懸念される。当たり前の事だが高機能なミドルウェアを間に挟めば挟むほど余計なオーバーヘッドが掛かってCPU負荷は上がりシステムレスポンスは劣化する。MOSSのパフォーマンスについては、IAサーバーでしか動かないという要素を差し引いてもこれまでも優れているという評判を聞いたことはない。そしてグループウェアの大規模導入時には、朝の出勤時等のピーク時の負荷対応などが大きな課題になることが多い。このためにCPUやサーバを増やすとまたコストが増大する。
 最後にこれまでサイボウズ製品が優れていると評価されてきたインターフェースの部分についても新製品でそのまま継承できるか疑問だ。定評のあった日本人向けのインターフェースをマイクロソフトの世界標準インターフェースに上手く統合できる保証はない。MOSSベースとするからには当然マイクロソフト的なデザインにある程度従う必要が有るし、MOSSベースの画面の中に一部だけ独自インターフェースを残すような形式だとかえって使いづらいものになるだろう。
今回の提携で中途半端にマイクロソフト寄りになるとかえって危険だ。

 マイクロソフトのほうはしたたかで、この協業と並行して自社のグループウェア製品であるExchange Server の2010へのバージョンアップを行って、そこでは日本人受けしそうな機能やインターフェースを実装してきている。この「年内発売予定のExchange Server 2010の4つのポイント」という記事によると2010では日本のユーザからのフィードバックを受けて「会社の部署による階層管理ができる階層化アドレス帳」と「グループスケジュールでは時間軸の横軸表示」を実装したとある。Exchange Server 2010の出来が良ければわざわざアドオン的な他社製品を買い足さずにMOSSとExchangeというマイクロソフト純正の組み合わせをチョイスするユーザは多いだろう。

 他にも最近のグループウェア市場には、オープンソース系のZimbraなども参入しているし、システム部門にとって管理運用負担の高いメール・スケジューラや掲示板等のグループウェアはいっそSaaS化してアウトソースするという動きも一部にある。GoogleやSFDC、ZOHO等も虎視眈々とグループウェア市場を狙っている。
 サイボウズにとってはマイクロソフトと手を握ったからといって安穏としていられる状況ではまったくない。

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