【メイキング】AIと共創するブログ執筆術:「雇用の未来」はこうして生まれた
昨日公開したブログ記事「雇用の未来:雇用なき成長の時代に情報サービス産業は生きていけるのか?」、皆さまお読みいただけましたでしょうか。
実はこの記事、執筆プロセスの大半においてAI(生成AI)を活用して作成しました。今回は、実際に私がどのような手順でAIと対話し、記事を練り上げていったのか、その「舞台裏」を詳しくご紹介したいと思います。
単にAIに「書いて」と丸投げするのではなく、どのように指示を出し、検証し、仕上げていくのか。これからの知的生産のヒントになれば幸いです。
執筆の全プロセス:AIをどう使い倒したか
今回の記事作成は、以下のステップで進めました。
1. 動機と仮説の検証
まず、「雇用なき成長」という言葉を耳にする機会が増えたものの、それが事実なのかをデータに基づいて確認したいと考えました。そこで、Gemini 3 pro に以下の質問を投げかけました。
「生成AIの技術革新が進み経済は成長したが雇用は減少しているという事実はあるのか?統計資料や論文などを引用し、その事実を確認して下さい。」
2. セカンドオピニオンの取得
AIの回答を鵜呑みにせず、まったく同じ質問を Chat GPT 5.2 Thinking にも行いました。異なるモデルに同じ問いを投げることで、視点の偏りを防ぐためです。
3. AI同士のクロスチェック(統合と検証)
次に、Gemini 3 proに対して、Chat GPT 5.2 Thinkingが出した回答内容を添付し、以下の指示を出しました。
「以下は『生成AIの技術革新が進み経済は成長したが雇用は減少しているという事実はあるのか?』という問いに対する別の調査レポートです。
・この内容を検証せよ。
・ここで示した調査レポートとの整合性や違いを確認せよ
・その上で、改めて『生成AIの技術革新が進み経済は成長したが雇用は減少している』という事実はあるのか?
改めてレポートをまとめて下さい。」
※これは私がよく使うテクニックです。
両者の回答はおおよそ共通していることが多いですが、まとめ時の視点や整理の方法が異なります。両者を照らし合わせ、AI自身に検証させることで、より客観的で俯瞰的なレポートを作成させることができます。
4. 特定領域への深掘り
全体像が見えたところで、テーマを「情報サービス産業」に絞り込みました。
「情報サービス産業において『生成AIの技術革新が進み経済は成長したが雇用は減少しているという事実はあるのか?』について調査して、その結果を報告して下さい。」
5. 記事の構成とドラフト作成
調査結果をもとに、記事としての構成を指示しました。
「この内容をブログの記事として書き直してほしい。
タイトルは『雇用の未来:雇用なき成長の時代に情報サービス産業は生きのこれるのか?』
文章の展開は以下の流れにしてください。
・本調査レポートとこれまでやり取りを踏まえ、産業全般についての生成AIと雇用との関係について説明する。
・情報サービス産業についての生成AIと雇用との関係について説明する。
・情報サービス産業の未来を展望し、その見通し、課題、どうすべきかを説明する。」
これで、おおよそのストーリーが固まります。
6. 「壁打ち」によるブラッシュアップ
ここからが重要です。上がってきたドラフトを読み込むと、疑問点が湧いてきます。
例えば、「売上が伸びているが雇用は減っていない理由は、AIによる生産性向上である」という記述がありました。これに対し、私は次のようにツッコミを入れました。
「これは人手不足による人件費単価の上昇したこと理由ではないか?それとも、ここで言うように、AIツールによる『生産性の向上』によるものなのか?どちらなのかを裏付けとなるデータを引用して説明せよ。」
このようなやり取りを10箇所ほど行いました。また、抽象的な説明に対しては「裏付ける具体的な事例やデータを引用し、補足せよ」といった指示も数回行っています。
7. 人間による仕上げと図解
最後に、文章全体の流れを読み直し、より自然な表現になるよう私が直接修正を加えました。
さらに、記事内の「砂時計型」の概念を視覚化するため、AIにイラスト作成の指示を出しました。
「エンジニアの雇用構造は、中間層が分厚い『ピラミッド型』から、上下に分かれた『砂時計型』へと変化します。
上層(需要増): AIを監督・設計できるアーキテクト、顧客の課題を解決できるPM。
下層(需要減): テストや単純実装のみを行う初級エンジニア。
この文章にある部分をイラストにしてください。背景は白にしてください。」
驚異的な生産性と「砂時計型」の実感
以上の作業にかかった時間は、実質1時間程度です。
もしAIを使わず、データの裏付け調査から構成、執筆まで行っていれば、半日以上はかかっていたでしょう。
まさに前回のブログテーマである「砂時計型」の現象が、執筆作業そのものにも起きています。調査や下書きといった「中間工程(知的力仕事)」がAIによって劇的に圧縮されたのです。
AIライティングの注意点とメリット
もちろん、すべてをAI任せにはできません。注意すべき点もあります。
- AIは「はしょる」: AIは膨大な情報を処理できる反面、アウトプットを効率的にまとめようとして、人間が「ここは情緒的に語りたい」「論理の飛躍がないように丁寧に説明したい」と思う重要な部分まで、さらっとした要約で済ませてしまう傾向があります。
例えば、「この技術の革新性を説明して」と頼んでも、一般的なメリットを箇条書きで返すだけで、なぜそれが革新的アプローチなのかという文脈が抜け落ちることがあります。
そのため、「ここは読者が一番知りたい部分だから、事例を交えてもっと詳しく掘り下げて」や「専門用語を使わずに比喩を使って説明し直して」といった具体的な再指示(リテイク)を出し、文章に厚みと説得力を持たせるプロセスが不可欠です。 - 人間に合わせすぎる: 「AIによって雇用は減少するのか?」と質問すると、AI以外の可能性(人口動態や景気変動など)を考慮せず、AIのみを原因として「雇用が減る」というストーリーを無理にでも文章化しようとします。常識的に考えれば単一の要因だけということはあり得ません。こうした偏りを見抜き、「他の要因も含めて俯瞰的に」と指示し直すなど、疑問を投げかけ続ける必要があります。
- 最後は人間の責任と仕上げ: 文章というのは読む人がいるからこそ意味を持ちます。読み手の感情の動きを想像し、文章に熱量や納得感を持たせる仕上げは、人間にしかできません。
さらに重要なのは「責任」です。AIが書いたものをそのまま公開したからといって、「AIが勝手に書いたのだから私には責任がない」とは決して言えません。世にリリースする以上、その文章の内容や品質に対する全責任は人間が負わなければなりません。AIはあくまで道具であり、最終的な品質保証と責任の所在は、使い手である私たちにあることを忘れてはいけません。
一方で、得られるメリットは絶大です。
- 生産性の劇的向上: 文章作成における生産性が、何%や何割といったレベルではなく、何倍、あるいは何十倍にも跳ね上がります。
文章を書く行為自体は知的作業ですが、そのプロセスには「適切な表現や構成を考えて文字を入力する」や「関連情報を調べ、反映、引用する」といった、いわゆる「知的力仕事」が相当な割合を占めています。AIはこの部分を大幅に削減してくれます。
つまり、前回のブログで触れた「砂時計型」で言うところの、真ん中のくびれた部分(中間的な作業)が劇的に圧縮されるのです。この効果は絶大です。 - 最高の学習体験: AIが生成した文章を、私たちは何度も読み直すことになります。その過程で「なぜこうなるのか?」と徹底して質問し、AIとの壁打ちを繰り返します。
すると、知らなかった事実や、自分では思いもよらなかった表現に出会い、知識が増えていきます。さらに、これまで自分の中で繋がっていなかった事象がうまく繋がったり、同じ物事に対する全く異なる視点を与えられたりすることで、自分の中にある知識の構造が再構築されることがしばしばあります。
これはまさに、自分専属のハイレベルな家庭教師を雇って議論しているようなものです。 - アジャイルな思考: 調べて、考えて、組み立てるという一連の知的作業プロセスがあっという間に完了します。
通常であれば「せっかく手間と時間をかけて作ったのだから、いまさら作り直すのは気が重い」となりがちですが、AIを使えばその心理的ハードルが消滅します。
状況が変わったり、新しい気付きがあったりすれば、「じゃあ、今の前提で一から作り直そう」と躊躇なく思えるようになります。変化の速い現代において、この「執着のなさ」と「身軽さ」を与えてくれるAIは、何よりも頼りになる相棒だと実感します。
人間とAIの「共進化」
AIはこれからもますます賢くなります。この事実に直面したとき、私たちはAIを「仕事を奪う敵対的な存在」として捉えるべきではありません。むしろ、「自らの能力を劇的に拡張してくれる相棒」として捉えることが極めて重要です。
歴史を振り返れば、人類は道具を進化させることで文明を飛躍させてきました。
かつて農業において、馬に鋤を付けて耕していた時代から、トラクターや耕運機が登場したことで、労働力を減らしつつも生産性を劇的に向上させ、爆発的な人口増加を支える基盤を作りました。
土木工事においても、人間がスコップやツルハシで作業していた時代から、ブルドーザーやパワーショベルを使うようになったことで、それまで不可能だった規模のダム建設や高層建築が可能になりました。
これらは単なる生産性や効率の向上にとどまらず、産業構造を変え、経済のあり方を再定義し、人口動態や文明そのものに不可逆的な影響を与えてきました。
AIもまた、そのような存在です。これまでの道具が人間の「肉体的能力」を拡張してきたのに対し、AIは人間の「知的能力」を拡張するものです。
使い方次第では、自分の知的能力を何倍、何十倍にも拡張できる可能性を秘めています。しかし、強力なエンジンを積んだ車を運転するには高度な運転技術が必要なように、AIという強力な知的重機を使いこなすには、人間側もまた賢くならなければなりません。
これは「共進化」と呼ばれるプロセスです。
1960年代、コンピュータの先駆者であるJ.C.R.リックライダーは、著書『人間とコンピュータの共生(Man-Computer Symbiosis)』の中で、人間が目標や仮説を立て、機械が処理を行うことで、人間単独では不可能な知的作業が可能になると予言しました。
また、マウスの発明者ダグラス・エンゲルバートも『人間の知性の拡張(Augmenting Human Intellect)』を提唱し、テクノロジーは人間の問題解決能力を増幅させるためにあると説きました。
さらに、「私たちは道具を作り、その後、道具が私たちを作る(We shape our tools and thereafter our tools shape us)」という言葉(ジョン・カルキン/マーシャル・マクルーハン)が示す通り、AIという新たな道具は、私たちの思考様式そのものを変え、進化させる触媒となります。
AIに的確な指示を出し、その結果を評価・統合するプロセスを通じて、私たちの知性も磨かれていく。この「人間と道具の共進化」こそが、これからの時代を生き抜く鍵となるのです。
AI時代にこそ求められる「人間力」
この一連の説明を通じて、改めて強く感じることがあります。
それは、AIに対して的確な指示を出し、反射神経的に対話や壁打ちを行うためには、使い手である人間自身の「土台」が不可欠だということです。
AIが出してきたアウトプットに対して、「これはおかしいのではないか?」「別の視点があるのではないか?」と瞬時に問い返す力。それは、日頃の読書や情報収集、沢山の人に出会い語り合うこと、そして現場でいろいろとやってみて体験することからしか生まれません。
リアルな体験と幅広い教養によって培われた知識の厚みがあってこそ、AIという強力なパートナーと対等に渡り合い、価値あるアウトプットを生み出せるのだと思います。
AIを使うからこそ、より人間らしく学び、行動する。
そんな逆説的な真理を、日々の執筆を通じて実感しています。
【募集開始】ITソリューション塾・第51期
2026年2月10日開講
時代の「デフォルト」が変わる今、ITソリューション塾・第51期の募集を開始します。
ITソリューション塾は2009年の開講以来、18年目を迎え、これまでに4000名を超える卒業生を送り出してきました。
開講当時、まだ特別だった「クラウド」は、いまやコンピューティングの「デフォルト」です。そして18年目のいま、社会は急速に「AI前提」へと移行しつつあります。
これは単にAIの機能が向上したということではありません。ビジネスや社会のあらゆる現場で実装が進み、AIがあらゆる仕組みの「デフォルト」になろうとしているのです。
第51期ではこの現実を受け止め、AI技術そのものの解説に加え、クラウド、IoT、システム開発、セキュリティなど、あらゆるテーマを「AI前提」の視点で再構成して講義を行います。
【ユーザー企業の皆さんへ】
不確実性が常態化する現代、変化へ俊敏に対処するには「内製化」への舵切りが不可欠となりました。IT人材不足の中でも、この俊敏性(アジリティ)の獲得は至上命題です。AIの急速な進化、クラウド適用範囲の拡大、そしてそれらを支えるモダンITへの移行こそが、そのための強力な土台となります。
【ITベンダー/SI事業者の皆さんへ】
ユーザー企業の内製化シフト、AI駆動開発やAIOpsの普及に伴い、「工数提供ビジネス」の未来は描けなくなりました。いま求められているのは、労働力の提供ではなく、モダンITやAIを前提とした「技術力」の提供です。
戦略や施策を練る際、ITトレンドの風向きを見誤っては手の打ちようがありません。
ITソリューション塾では、最新トレンドを体系的・俯瞰的に学ぶ機会を提供します。さらに、アジャイル開発やDevOps、セキュリティの最前線で活躍する第一人者を講師に招き、実践知としてのノウハウも共有いただきます。
あなたは、次の質問に答えられますか?
- デジタル化とDXの違いを明確に説明できますか? また、DXの実践とは具体的に何を指しますか?
- 生成AI、AIエージェント、エージェンティックAI、AGIといった「AIの系譜」を説明できますか?
- プログラミングをAIに任せる時代、ITエンジニアはどのような役割を担い、どんなスキルが必要になるのでしょうか?
もし答えに窮するとしたら、ぜひITソリューション塾にご参加ください。
ここには、新たなビジネスとキャリアの未来を見つけるヒントがあるはずです。
対象となる方
- SI事業者/ITベンダー企業にお勤めの皆さん
- ユーザー企業でIT活用やデジタル戦略に関わる皆さん
- デジタルを武器に事業改革や新規開発に取り組む皆さん
- 異業種からSI事業者/ITベンダー企業へ転職された皆さん
- デジタル人材/DX人材の育成に携わる皆さん
実施要領
- 期間:2026年2月10日(火) ~ 4月22日(水) 全10回+特別補講
- 時間:毎週 水曜日 18:30~20:30(※初回2/10など一部曜日変更あり)
- 方法:オンライン(Zoom)
- 費用:90,000円(税込み 99,000円)
受付はこちらから: https://www.netcommerce.co.jp/juku
※「意向はあるが最終決定には時間かがかかる」という方は、まずは参加ご希望の旨と人数をメールにてお知らせください。参加枠を確保いたします。
講義内容(予定)
- デジタルがもたらす社会の変化とDXの本質
- ITの前提となるクラウド・ネイティブ
- ビジネス基盤となったIoT
- 既存の常識を書き換え、前提を再定義するAI
- コンピューティングの常識を転換する量子コンピュータ
- 変化に俊敏に対処するための開発と運用
- 【特別講師】クラウド/DevOpsの実践
- 【特別講師】アジャイルの実践とアジャイルワーク
- 【特別講師】経営のためのセキュリティの基礎と本質
- 総括・これからのITビジネス戦略
- 【特別講師】特別補講 (現在人選中)
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