知っている!自慢ですか?自信ですか?
「知っている!」という言葉の裏には、「自慢」と「自信」の2つがあるように思う。両者を見分けるのはそれほど難しいことではない。
「自慢」のための「知っている!」は、この言葉を発することで、その場でのマウントを獲ることを狙ったものだ。あるいは、保身のためかも知れない。
特徴としては、声が大きい、「知っている!」を繰り返す、「そのことなら知ってますよ」と他の人が話してところに割り込もうとするといったところだろうか。
昨日のブログで述べたとおり、この手の「知っている!」には、体験的裏付けが乏しい場合が多い。そのため、知っている内容を聞いても薄っぺらで、迫力なく、説得力がない場合が多い。そんな薄っぺらでも知っていることは事実で、何も間違っているわけではない。ただ、狙いは「マウントを獲る」ことだから、高圧的にこの薄っぺらさをごまかそうとする。
例えば、経営者が、「DXのことなら分かっている。そんなことよりも今期の業績のほうが重要だ。」というような場合、彼はDXのことを分かっていないことがすぐに読み取れる。
そもそもDXのことが分かっているのなら、「DX」と「今期の業績」は対比できることではないことくらいすぐに分かるだろう。DXとは、ビジネス・モデルの変革、ビジネス・プロセスの変革、企業の文化や風土の変革であり、今期の業績という短期的な視点での議論とは次元が違う話しだ。
「皆さんにとってのDXってなんですか?ご意見聞かせてください。」というのも怪しい。たぶん、自分に答えがないので、人の意見を聞いて、「まさにその通り」と迎合して、自分も知っていますというスタンスをとることで自分の立場を守ろうとしたいのだろう。
いずれの場合も「知っている!」というのだけれど、十分には理解できていないという自覚もあるので、強い態度あるいは迎合することで、「知っている!」を示して、その場のマウントを獲ろうとするのではないか。
「自信」があって「知っている!」という人は、言葉が控えめだ。知れば知るほど奥深く難しいという自覚があり、自分が知っていることなどのほんの一部でしかないという自覚があるからだ。
特徴としては、声が小さい、あるいは、頷く(うなづく)程度であり、「知っている!知っている!」と自ら連呼することはない。他の人が話してところに割り込もうとすることはなく、尋ねられたら「大体のところは分かっているつもりです"が"」や「基本的なところは抑えています"が"」という不安感を込めた言葉を発する。
例えば、経営者が、「DXのことなら分かっている"が"、これは相当の覚悟で丁寧に時間をかけて取り組む必要がある。ただ、今期の業績目標を達成することもまた重要だ。」というような場合、彼はDXのことを分かっているように思う。"が"という表現に自分の理解が不十分であり、さらに理解を深めなくちゃいけない、どのように実践すればいいのかなやんでいるという不安や弱点を滲ませている。また、「DX」と「今期の業績」を対比すべきことではないことを理解している。
また、「皆さんはデジタル化とDXの違いが分かりますか?ご意見聞かせてください。」というのも、自信があるゆえの発言だ。DXとは何か、デジタル化とは何かが分かっているからこそ「デジタル化とDXの違い」という言葉が使える。では、何が違うのですかと問われると、明確に両者の違いを説明できる自信があるからこそ、このような発言ができるのだろう。
このように「自慢」と「自信」のどちらかであるかは、わりと容易に見分けることができる。
ただ、ちょっとやっかいというか、困った「知っている!」がある。それは、似非科学、陰謀論、"変な"宗教的教え、霊能力者(?)の言葉といった、にわかには信じがたい、あるいは常識に照らして理解しがたい知識を前提に「知っている!」という言葉を使われることだ。
外部的特徴は、「自信」の場合と似通っているが、強圧的であったり、感情的であったりして、理屈以外のところで訴えかけようとする。あるいは、「神様の教え」や「自然の摂理」を持ち出したり、「それは〇〇という研究者が論文で科学的に証明している」とか、「私の意見じゃなくて、あの有名な〇〇さんも言っていることですから」みたいに、自分ではない圧倒的(?)権威ある第三者に自信の根拠を持たそうとしたりする場合だ。
そもそも、「研究者の論文」というのは、絶対ではない。それを批判的に捉え、そこでの内容が覆されることも多く、そういうオープンな議論のきっかけを提供するのが論文であって、絶対を証明するものではない。また、「あの有名な〇〇さん」も一個人であり、たとえすばらしい人格者や知識人であっても、我々と同じ人間ではないのか。
まあ、それも人それぞれの生き様であり、こういうことに頼ることで、心の平安を得ている人もいるわけだ。あるいは、こちらの知識不足故、理解できないのかも知れない。だから、多様な考え方があることは、受け入れなくちゃいけないとは思う。
ただ、そういう知識を前提に自信を持って「知っている!」ことを逆手にとって、「そんなことも知らないの?!」と言葉の暴力を振るわれるのは勘弁して欲しいなぁと思うことはある。「知らないでごめんなさい。だから許してください」で許してもらいたい。
ということで、「知っている」という言葉も、こう考えてみると、いろいろと奥深く、まだまだ自分はこんな言葉さえも十分には「知らない」のだと思い知らされる。
【募集開始】次期・ITソリューション塾・第47期(2024年10月9日 開講)
次期・ITソリューション塾・第47期(2024年10月9日[水]開講)の募集を始めました。
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「クラウド」については、そのサービスの範囲の拡大と機能の充実、APIの実装が進んでいます。要件に合わせプログラム・コードを書くことから、クラウド・サービスを目利きして、これらをうまく組み合わせてサービスを実現することへと需要の重心は移りつつあります。
このように「生成AI」や「クラウド」の普及と充実は、ユーザーの外注依存を減らし、内製化の範囲を拡大するでしょう。つまり、「生成AI」や「クラウド」が工数需要を呑み込むという構図が、確実に、そして急速に進むことになります。
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