人工知能に置き換えられない営業とは
「○○株式会社の財務状況はどうなっているか調べて!」
「同業他社と比べて何処に課題がありそうかなぁ?」
「この課題に対して使えそうな提案事例は探して!」
人工知能は、こんな日本語での問いかけの意味を理解し、必要な情報を探し出して教えてくれます。財務データはインターネットから収集し、事例などは人工知能が内容を解釈し、質問の意図から情報を探してきます。営業は、その情報を参考に戦略を立て、提案書をまとめてお客様に向かうことができるのです。
こんな時代はそう遠くない話しです。
ソフトバンクは、IBMのWatsonを自社の営業支援システムや市場分析システムなどの社内システムと連携させ、このような質問に応えられるシステムを開発しているそうです。
- お客様の問い合わせや依頼に迅速、的確に応えること。
- お客様の求めに応じて最適な提案をすること。
- 納期やリソースの調整を的確に行い、お客様の要請に応えること。
このような「お客様の期待に応える」だけの営業は、やがて人工知能の配下に置かれ、お客様とのコミュニケーション機能を受け持つユーザー・インターフェースとしての役割しか果たせなくなるでしょう。
「気は使うし時間も合わせなければならない人間の営業は面倒だから使いたくない」
銀行で窓口が開いていてもATMを使うのと同じ理屈です。面倒な人間を相手にするより、直接人工知能に問い合わせるお客様も増えてゆくかもしれません。AppleのSiriやMicrosoftのCortana、そして米国で爆発的に売れているAmazonのEchoのように、自然な話し言葉で問い合わせたり指示したりできるようになれば、ますます「ものわかりの悪い」、あるいは「融通の利かない」人間の営業などを相手にするよりも「人工知能の営業」の方がよほど便利な相手になるでしょう。
そんな時代に営業はどのような役割を果たしてゆくべきなのでしょうか。
「お客様の相談相手となって、不安や迷いを課題として整理し直し、その解決策をデザインする」
そんな役割を担う存在となることです。
お客様の相談相手となる
「お客様の立場に立つ」
良き相談相手になるためには、まずこれが前提です。ところで、「お客様の立場に立つ」とはどういうことでしょうか。
「自分がお客様の立場なら、どう考え、どう判断し、どう行動するかを想像すること」
お客様の心の中に入ることはできないし、そもそも経験や知識のバックグラウンドが違う相手の思考を理解することは不可能です。もちろん相手の気持ちやお客様の置かれている状況を理解する、あるいは想像する努力は大切ですが、相手になりきることはできません。ですから、お客様とは別人格で他人である自分がお客様のポジションを任されたとしたら「こう考える、こう判断する、こう行動する」を想像することしかできないのです。そして、その想像を相手と共有し議論することで、相手への理解をさらに深めてゆくことができます。
良き相談相手とは、決して相手の話しに相槌を打ち、それに従う存在ではありません。「自分ならこのように考える、行動する」を伝えられる存在であることです。相手が求めているのは違う視点であり、異なる意見です。それらをぶつけ合うことで、何が正解かを一緒になって見つけ出してゆく。そんな触媒となる存在なのです。
不安や迷いを課題として整理し直す
「なんとかしなくてはいけない。このままではまずい。」
そんな不安や迷いをいだいているお客様は少なくありません。そして変革を進めたいと思われているでしょう。しかし、変革への意志や問題意識はあっても、解決すべき対象となる課題やニーズを明らかにできてはいません。また、それ以前の問題として、どのような方向に変革を進めてゆけばいいかのビジョンが描けていないのです。
そこでは、「他社の事例」など役にはたちません。なぜなら、自分たち自身がどうしたいかといったビジョンが明らかになっていないわけですから、何が自分たちにとっての課題なのかを決めることができないのです。そこに他社の事例を持ち出しても役に立ちません。
営業は、そんなお客様について、お客様以上に深く考察し、お客様から新しい気付きを引き出し、お客様自身が自らのビジョンに確信が持てるように支援することです。そして、それを具体的な課題に落とし込み、具体的な解決策を提示することです。さらに、自分たちがそれを支援する決意を示し、背中を押してあげるのです。
「求めに応じるのではなく、求めを引き出すこと」
そんな役割を果たさなくてはなりません。
解決策をデザインする
テクノロジーは日々進化し、最適解は変わり続けています。様々な選択肢が有り、絶対の解決策を見出すことは容易なことではありません。解決策はプロダクトやサービスなどのシステム・ソリューションばかりではありません。業務プロセスを変革する、新しいビジネス・モデルを実現するといったビジネス・ソリューションも必要になります。ITによって常識が置き換わる時代、新しい常識を前提にビジネスを考えれば、まったく新しい発想が生まれてきます。
人間が行うことを前提に最適化されたビジネス・プロセスを新しい常識で問い直し、人工知能やロボット、クラウドといったITを駆使し、機械が行うことを前提して最適化したビジネス・プロセスを実現することも可能な時代です。UberやAirbnbなどのデジタル・ビジネスはそんな新しい常識から生まれてきたものです。
このようなことを実現するためにはどのようなテクノロジーを使い、それをどのようなビジネス・モデルに当てはめればいいのでしょうか。そのためのグランド・デザインを描き、組合せを作ることが必要です。
ひとりの営業だけでできないのであれば、それができる知恵ある人たちを集め、一緒に考えることです。そのためのプロデューサーとなることです。営業には、そんな役割が期待されているのです。
以上のようなことができるようになるためには、お客様の業務のこと、ビジネスやテクノロジーのこと、経営のこと、時事のことにアンテナを張り情報の収集を怠らないことです。また、同僚やお客様だけではなく、立場を異にする様々な人たちと会話できるコミュニティ活動や会食などに積極的に参加し、視点や見識を拡げる努力を怠らないことです。
そして、自らの知恵を働かせて人工知能やロボットなどの新しい手段を使いこなすことです。それが「これからの営業」に求められる能力ではないでしょうか。
【最新版】最新のITトレンドとビジネス戦略【9月版】
*** 全て無償にて閲覧頂けます ***
最新版【2016年9月】をリリースいたしました。
今回は全資料について、ノートへの解説を追加しています。また、更新履歴が増えすぎたことで、ダウンロードボタンが押しにくいというご指摘をいだき、過去の履歴を別ファイルに集約して、すっきりさせました。
【インフラ&プラットフォーム編】(295ページ)
内容的に古くなったページを削除し、新たなページを追加、ノートの解説も増やしました。
【新規】「セキュリティが不安でパブリック・クラウドは使えない」は本当か? p.79
【新規】サーバー利用形態の歴史的変遷 p.160
【新規】SDIの求められる必然性 p.162
【新規】サーバー仮想化の3つのメリット p.188
【アプリケーション&サービス編】(256ページ)
人工知能関連のチャートを大幅に追加、解説(文章)付きスライドも増やしています。内容の古いチャートは削除しました。
【新規】「自動化」から「自律化」への進化 p.139
【新規】人工知能・機械学習・ディープラーニングの関係 p.147
【新規】「記号処理」から「パターン認識」へ p.152-153
【更新】ディープラーニングの画像認識能力 p.160
【新規】シンギュラリティの意味 p.184-185
【新規】システム資産・運用の歴史的変遷 p.232
【新規】汎用目的技術 p.254
【新規】PC誕生の歴史 p.255
【ビジネス戦略編】(94ページ)
記載内容が古いチャートを削除し、解説文付きのチャートを増やしました。
【新規】デジタル・トランスフォーメーションの意味 p.4
【新規】テクノロジーが変える社会基盤 p.8
【新規】"uberlist"になるための実践ステップ p.12
【新規】バイモーダルITと人材のあり方 p.73
【新規】求められるスキルの転換 p.74
閲覧は無料です。ダウンロード頂く場合は会員登録(500円/
「ポストSIビジネスのシナリオをどう描けば良いのか」
これまでと同じやり方では、収益を維持・拡大することは難しくなるでしょう。しかし、工夫次第では、SIを魅力的なビジネスに再生させることができます。
その戦略とシナリオを一冊の本にまとめました。
「システムインテグレーション再生の戦略」
- 歴史的事実や数字的裏付けに基づき現状を整理し、その具体的な対策を示すこと。
- 身の丈に合った事例を紹介し、具体的なビジネスのイメージを描きやすくすること。
- 新規事業を立ち上げるための課題や成功させるための実践的なノウハウを解説すること。
また、本書に掲載している全60枚の図表は、ロイヤリティ・フリーのパワーポイントでダウンロードできます。経営会議や企画書の資料として、ご使用下さい。
こんな方に読んでいただきたい内容です。
SIビジネスに関わる方々で、
- 経営者や管理者、事業責任者
- 新規事業開発の責任者や担当者
- お客様に新たな提案を仕掛けようとしている営業
- 人材育成の責任者や担当者
- 新しいビジネスのマーケティングやプロモーション関係者
- プロジェクトのリーダーやマネージャー