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2015年・ビジネスの変革を牽引するテクノロジー・トレンド(メイキング編)

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年初より3回にわたり連載してきた「2015年・ビジネスの変革を牽引するテクノロジー・トレンド」だが、これをどのような過程で仕上げてきたかを今日は紹介させていただく。プレゼンテーションを作成される方にとって、何らかの参考になればと願っている。

1.キーワードの洗い出し

まず準備するのはたっぷりの白紙となめらかな書き味のボールペン。ジェット・ストリームは気に入っている。

まずは「今年のテクノロジー・トレンド」というテーマだけをぼやっと決めて、思いつくままに書きなぐる。話題になっているキーワード、気になっているキーワード、だれかが「これだ!」と叫んでいるキーワードなどなど、思いつくままに書き出してゆく。それらがお互いにどんな係わりがあるのかを考えながら書いてみる。言葉のレベル感や妥当性などは、この段階では余り考えない。

スクリーンショット 2015-01-04 11.14.27.png

特に意識しているわけではないが、書いているうちに何となく「構造」らしいものが描けてゆく。そうやって出来上がった最初の下書きは、お世辞にも整理されてはいない。しかし、こうやって書いて見ることで、自分が何を書けば良いのかに気付かされる。「なるほど、こういう整理ができそうだなぁ」と曖昧ながらもイメージが膨らんで来たところで、最初の落書きは終了だ。

2.規則性の抽出

最初の「殴り書き」を眺めながら、これらに何らかの関係性がないだろうかと思いを巡らす。そして、何枚か描いてみる。そして、3枚くらい描いて、「これ、いけるんじゃないかなぁ」と思えるチャートに巡り会った。

スクリーンショット 2015-01-04 11.14.41.png

最初に描いた殴り書きとはだいぶ違う絵になっているが、殴り書きにあるキーワードに共通する要素をつなぎ合わせることで、見えてきた自分なりの「規則性」だ。

「オープン化」、「スマート化」、「サービス化」

この3つのキーワードに賭けてみようと、自分なりの仮説を立てる。これをどのように配置すれば、いろいろなキーワードをうまくマッピングできるだろうかと思いを巡らす。

そして、そこに最初に書き殴ったキーワードを見直しそれらを改めて配置してゆく。キーワードを書き込んでは、それをぐしゃぐしゃと消し、また別のキーワードを書き込んでゆく。最初のチャートはもはや真っ黒で何が書かれているか、自分でも判別できないくらいになる(笑)。そこで、心機一転、新しい白紙に書き直したのがこのチャートだ。

スクリーンショット 2015-01-04 11.16.12.png

この過程で言葉が選別されてゆく。言葉のレベル感、表現の妥当性、相互関係などを意識しながら、言葉を選んでゆく。

こうやって書いているうちにあることに気がついた。先ほど仮説として立てた「オープン化」、「スマート化」、「サービス化」の3つの軸は、それぞれに「OSS」、「AI」、「クラウド」がドライビング・フォースとなっているのではないかと。ならば、これをそれぞれの角に配置してはどうか。そんなことを考えながら、全体のイメージを仕上げていった。

ちなみに「ドライビング・フォース」などと書かなくても「原動力」としたほうがわかりやすいのだが、こういうチャートの場合、カタカナがなんとなくしっくりくる。そんな安易な理由で、この言葉を使うことにした。

3.ビジュアルの作成

さて、これをどのようなビジュアルにしょうかと考える。最近、Googleが提唱するMaterial Designに興味を持っているので、そんなスタイルにしてみようと方針を立てた。「ユーザーのことを第一に考えた Visual Language (視覚的な言語)への挑戦」というコンセプトに共感している。

ほんとうにそれができているかは怪しいところだが、気持ちは" Material Design"でやってみようということにした。

まず、大きな四角形を描いてみる。そして、先に仮説を立てた3つの軸をここに描く。次にインフラを左端に配置して、対角線にそって、より上位のレイヤーに関連するキーワードを配置しいった。Material Designで提唱されている「デザインの古典的原則」を意識し、四角と三角のシンプルな図形要素の組合せでの配置を考えることにした。

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「この3つの軸は、ベクトルと考えると、何をエネルギー源に拡がってゆくのだろうか」

書き進めてゆくうちに、なんだかいっぱしの哲学者にでもなった気分で、こんなことが気になった。そうやって思いついたのが、「IT(Information Technology)からDT(Digital Technology)へ」という言葉だ。これについて、本編(1/3)にて解説したのでそちらをご覧いだきたい。

いい感じながら、まだ違う。そこで、新しい白紙を置いて仕上げにかかる。今度は、パワーポイントでの仕上げを意識して、できるだけ綿密に配置や関係、言葉の妥当性を考えてゆく。レイアウトは、ほぼ確定しているので、言葉が妥当でなければ、一度書き出した言葉を修正液で消して上書きをしてゆく。

スクリーンショット 2015-01-04 11.16.41.png

これを最終現稿に仕上げたのが以下のチャートだ。

スクリーンショット 2015-01-04 11.20.18.png

ただ、これを眺めていると、それぞれの境目が曖昧でいまひとつメリハリがない。しかも、「IT(Information Technology)からDT(Digital Technology)へ」が上位のドライビング・フォースだとすれば、これを上に配置すべきではないか。タイトルもインパクトに欠ける。そんなことをいろいろと考え、最終的に出来上がったのがこのチャートだ。

スクリーンショット 2015-01-03 12.35.32.png

Material Designとはほど遠いが、まあ、こっちの方がわかりやすいから良いかなぁ、といつもながらの安易な妥協で納得する。

*教訓

まずは「手書き」で思考せよ

既に頭の中でしっかりとイメージが出来上がっている場合はともかくとして、何をどう書こうか決まっていないときは、まずは手書きで書いてみることだろう。綺麗に書こうなどとは考えてはいけない。しゃしゃっと思いつくままに殴り書きできる「手書き」に勝るものはない。そうやって、何枚も書いて見ることで次第に整理されてゆく。ディスプレイに向かうのは最後の仕上げだけだ。

書き出すことで思考され「伝える言葉」が生まれる

以前、このブログで「アウトプット思考」について書いたとおり、「人にどのように伝えれば、わかりやすく伝えられるだろうかを考えながら」絵を描くことで、「情報」という材料は、「思考」され、「知識」として定着してゆく。

わかりやすく伝えようとすれば、自ずと本質を見つけ、枝葉末節を省かなくてはならない。この過程こそが、「書き出す」という行為だ。そして、それを発信し人前にさらさなければならないという緊張感は、ますます思考を研ぎ澄ます。

情報を頭の中に溜め込んでいるだけでは伝える言葉は見つからない。だから、書き出しながら思考する。そんな繰り返しが、言葉を自分の武器にしてゆくのだろうと思っている。

もっと知識を手に入れたければ、図々しくあれ

どんなに考え、どうなに自分なりに「完璧」なプレゼンテーションが描けたとしても、それを受け取る人たちの価値観は多様だ。だから、万人が納得するものなどできるはずがない。むしろ、そんな不完全を仕方のないことと思い、人前に晒してみることで、だめ出しを頂く方がよほど勉強になる。

「完璧」を追求するなと言っているのではない。自分なりに「完璧」をめざすべきだ。しかし、それは今の自分にとっての完璧であって、世の中での完璧ではない。だからこそ、人の批判は素直に受け止め、「じゃあこれならどうだ!」と闘争心を持って、改善してゆくことが必要なのだろう。

そのためには、図々しくなくてはいけない。主張してみなくてはいけない。そうやって、自分を発信し人前にさらすことで、さらに多くの知識を手に入れることができる。

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参考になっただろうか。今年も、この調子でいろいろと発信してゆこうと思っている。よろしくお付き合いのほど、お願い申し上げます m(_ _)m

2015年2月4日(水)より開講するITソリューション塾【第18期】の募集に参加しませんか?

このブログでも紹介させて頂いたテクノロジーやビジネスに関する最新のトレンドをビジネスにどう結びつけてゆけば良いのかを考えてゆきます。そのための提案やビジネス戦略・新規事業開発などについても解説します。また、アジャイル開発でSIビジネスをリメイクした実践事例、クラウド時代のセキュリティとガバナンスについては、それぞれの現場の第一線で活躍される講師をお招きし、生々しくそのノウハウをご紹介頂く予定です。

きっと貴重なきっかけを手に入れられると思います。どうぞご検討ください。

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詳しくはこちらをご覧下さい。また、パンフレットもこちらからダウンロードできます

最新ITトレンドとビジネス戦略【2014年12月版】を公開しました

今回は解説文を大量に追加しました。プレゼンテーションの参考にしてください。また、新しいトレンドを踏まえ、プレゼンテーションを13ページ追加しています。無料にてご覧いだけます。

【2014年12月版】(209ページ)の更新内容は次の通りです。

  • 「クラウド・コンピューティング」に解説文を追加しました
  • 「仮想化とSDI」を「ITインフラと仮想化」に変更し、プレゼンテーションを大幅に追加しましたました。
  • 「ITインフラと仮想化」に解説文を追加しました。
  • 「IoTとビッグデータ」に解説文を追加しました。
  • 「IoTとビッグデータ」に3Dプリンターの解説を追加しました。
  • 戦略について一部チャートを変更し、資料を追加しました。

よろしければ、ご投票頂ければ幸いです m(_ _)m

拙著「システムインテグレーション崩壊」が、「ITエンジニアに読んでほしい!技術書・ビジネス書大賞」にノミネーションされました。お読み頂きました皆さんに感謝致します。

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「システムインテグレーション崩壊」

〜これからSIerはどう生き残ればいいか?

  • 国内の需要は先行き不透明。
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  • クラウドの登場で迫られるビジネスモデルの変革。

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