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Philosophical Speculation and Debate in IT Matters

「哲学するIT ITする哲学」開設にあたって

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<ブログ・タイトル「哲学するIT ITする哲学」について
 私は、20年余り製造業のIT現場で働いてきた。当初、生産管理や品質保証の仕事も行なっていたが、この20年余り、基本的にコンピュータと付き合ってきた。 その間、大小いろいろなシステム開発・構築のプロジェクトを経験してきたが、最近とみに IT(Information Technology)と哲学との関係を意識せざるを得なくなってきた。
 

 もともと、大学では、数理経済学、計量経済学をやっていたので、経済思想に興味があり、経済思想の勉強を続けてきた。 そうしているうちに、それぞれの時代背景や哲学・思想が知りたくなり、哲学書を読みはじめたが、ITが如何に哲学に依存したものか、依存しているかを感じるようになった。 「システムの開発はどのようにあるべきか」、「どういう言語を使うべきか」、「どう異なるシステムをつなげるか」等を考える機会が多くなればなるほど、「哲学とITとの関係」を意識しだしたのである。 もっとも、ある意味で哲学はすべての学問の父(母?)なのだから当然なのかもしれない。
 背後にある思想や論拠を知らずに、「ただ IT を使っている危険」を感じるのは私だけだろうか? ときには、原点に立ち戻ることも良いと思われるのだが。

 
 私には、アリストテレスが、オブジェクト指向やオントロジーとつながって見えるし、ライプニッツの二進数へのこだわりや、論理学への貢献がなければ、今のコンピュータはなかったと思える。 また、ウィトゲンシュタインの"The limits of my language mean the limits of my world."のLanguage(言語)は、プログラム言語等の人工言語(記号言語)についても言えることであろう。 哲学者といわれる多くの人たちが、現在のITを直接、間接に支えてくれていると私は感じて仕方ない。
 一方逆にITの視点から哲学を見れば、新たな発見があるとも思っている。 私は、XMLの"M"を"Mark-up"の"M"というより、"Meta"の"M"と見ているが(これについては、後日、本ブログにて言及する)、XMLの"M"をMeta(メタ)と捉えれば、Metaphysics(形而上学)としての哲学が見えてくるし、自己参照や形式言語に関して理解が深まるように感じる。  B2B(Business to Business:企業対企業の電子商取引)をするときには、パートナー間で意志伝達の架け橋となるもの-Lingua franca(共通語)-が必要となる。 そのときに、「言語とは何か」、「標準化とは何か」、「定義とは何か」、「プロセスとは何か」等を考えることになり、これらは、哲学につながる。また、異なる視点からの見ることにより、 哲学をよりよく理解できると思う。
 最近このようなことを考えており、現在の私の立場を表していると思う「哲学するIT ITする哲学(Philosophical Speculation and Debate in IT Matters *1)」をこのブログのタイトルとすることにしたしだいである。
    〔注〕*1 この英語は、当初 " IT Speculating in Philosophical Manner & Philosophy Debating IT" であったが、友人のJohnが、「意味が良くわからない」と言うので、彼に日本語の内容(日本語自体がまともなものでない!)を説明して、最終的に現在のもの "Philosophical Speculation and Debate in IT Matters" となったものである。 やはり、英語と日本語は違うなあ。

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<では、本ブログに何を書いていくか>
 本ブログで書く予定のトピックスをカテゴリー(アリストテレスは『カテゴリアイ』でカテゴリー論を展開している!)分けすると、
 1) IT (Information Technology)
 2) 哲学 (Philosophy)
 3) 経済学・経済思想 (Economics, Economic Thought)
 4) 前向きに生きる (Moving Forward)

の4カテゴリーであるが、これらは相互に関係しているので、各話題では、複数のカテゴリーに跨って言及していくことになると思う。 経済学が一つのカテゴリーとしてあるのは、私が大学時代から自分の専攻として勉強し続けているので、外したくないだけでなく、経済学はその昔、道徳哲学・道徳科学(モラル・サイエンス)に分類され、哲学には深く関連しているからである。 このブログを読んでくだされば、経済思想もITに繋がっていることが理解していただけるのではないかと思う。

私は、ITを使う立場であり、学問的にきちんと勉強したわけでもなく、目の前にある技術を組み合わせてビジネスの仕組みを作ってきたわけなので、偉そうに言える立場でないが、今のIT業界が本来のあるべき姿からどんどん離れていっている気がしてならない。 Web Services関連の仕様書を見ても、ますますページが増えていく。もっと「つなぐ・つなげる」ことをシンプルに考えれば良いのにと思う。 毎年毎年新たな3文字熟語が生み出され、皆が踊らされる状況や、B2Bにおいてもユーザーやソフト・ベンダー、SIer(System Integrator:システムインテグレータ)の思惑で仕様が膨らんでいく。 最近、このような状況に苛立ちを感じているので、これらに関してもコメントすることもあろう。

 ここはブログなので、その時々の話題に言及するべきだろうし、意見をいただいた場合のレスポンスも必要になるとは思うが、上記の4つの分類に基づいて、現時点で以下のようなトピックスを考えている。 記述順序をどうしていくかやトピックスの統廃合は、今のところ定かでない。 状況に応じて対応していくつもりである。

なお、本ブログ内での発言は、私の所属している会社の見解でなく、あくまで個人的な見解であえることを申し添えておく。
 
【IT】
 □XMLとは何なのか? 
-私のXML論- 
 □IntegrationよりFederation! 
-「つなぐ」ということ- 
 □Asynchronous vs. Synchronous 
-Asynchronous Messagingの重要性-
 □私の開発方針 
-二つの"V"とBusiness Mind & Diversity-
 □SIerに騙されないためにITを学ぶ 
-Mrs. Robinsonに学ぶ-
 □システム・メンテナンスとマルサスの『人口論』の関係
 □システムをいつでも捨てられる状態にしておく 
-「捨てる」の重要性と「捨てる」ための準備-
 □Web Servicesとは何なのか? 
-Application Functionalitiesを「つなぐ」-
 □大福帳としてのERPの終焉 
-私がERPに望むこと-
 □パソコンはやさしくなったか? 
-PC vs. 家電-
 □Duration(持続時間)に関する考察
 □システムは難しくない 
-コンサルタント不要か?- 
 □コンピュータにやらせることと、人間がやるべきこと 
 □コピー&ペーストの功罪 
-自分で考えることの大切さ-
 □SCMとLogistics 
-Logisticsの重要性- 
 □システムの捉え方と「連続性・非連続性」
 □ウォーターフォールかプロトタイピングか? 
-ユーザーに振り回され、仕様が決められない人-
 □中小企業向けのソフトウェアってあるの?
 □アルゴリズムとは何か?
 □計算可能性と計算の複雑さについて
 □ゲーデルの不可能性定理とチューリング・マシン
 □バインディングに関して考えたこと
 □オントロジーとは何なのか?


【Philosophy】
 □"The limits of my language mean the limits of my world."の意味を考える
 □連続と非連続(不連続??)
-Natura non facit Saltum-
 □メタとは何か?
 □言語でもって言語を語ることはできるか? 
-メタ言語の可能性/不可能性再考-
 □Pure Mindの「力」 
-純粋な素直な心の持つ力は言葉の力を超える!?-
 □ITにおけるウィトゲンシュタインの影響 
 □ライプニッツとデジタル世界 
 □アリストテレスとオブジェクト指向、オントロジー…
 □抽象・具象と実在感 
-存在すると信じることができるかどうか-
 □時間とは何か? 
-モモにとっての時間-
 □アインシュタインは精神分裂症!?
 □すばらしい数学の証明やプログラムは美しい絵画と同じだ!
 □演繹と帰納法とアブダクション
 □ITは哲学の後追いか?
 □論理学とIT
 □必要条件と十分条件
 □「否定」とは何のか?
 □定義の定義
 □思考と時代背景
 □価値からの自由(価値中立)はあり得るのか?
 □20世紀は『科学』の時代なら、21世紀は『哲学』の時代?
 □神の存在証明
 □『エチカ』の文体、『論理哲学論考』(『色彩について』)の文体
 □自然に関する神の書物は数学の言葉で書かれている?
 □科学と技術 
-科学と技術はどういう関係なの?-
 □『人はなんで生きるか』 
-トルストイの考え-

【Economics】
 □将来を予測するということは可能なのか? -実証主義は成り立つのか?- 
 □社会を工学なんてできやしない!
 □IT革命で市場は完全市場に近づいているのか? 
 □貨幣とは何か?
 □先発の利益か後発の利益か
 -リスクをどう捉えるか-
 
□Stationary Stateという考え方 -J.S.Millの考え方の現代的意義-
 □足るを知る
 □土地っていったい誰のもの?
 □「所有」とは何なのか?
 □ゲームの理論の功罪 
 □Risk loverとRisk averter
 □なぜ経済学は自然を無限と考えてしまうのか?
 □マーシャルの現代意的意義 
-with cool heads but warm hearts再考-
 □マーシャルとシュンペーター
 □アダム・スミスの道徳感情論 
-Invisible Hand再考-
 □方法論と経済理論
 □自然科学と社会科学は同じ手法と基準を適応すべきか?
 □グローバリズムは我々に何をもたらしたか?
 □複雑なものを複雑に考えろと言われても...
 □経済学は金儲けのためのものか?
 □未来は我々を必要としているか?
 □仏教経済学とは?
 □経済学の道徳哲学への回帰
 □レトリカル・エコノミクスとは何か?

 □トニー・ローソンの考え方
 □経済学者はかく語りき
 □経済学はどこに行くのか? -経済学は科学足りえるのか-

【Moving Forward】
 □「見られること」と「見えること」 
-Visibility(可視性)の意味-
 □Diversity(多様性)の重要性 
 □チャンスの神(髪)!
 □事をうまく運ぶための5つの言葉 
 □両極端を併せ持つことの大切さ 
-with cool heads but warm hearts-
 □D・R・E・A・Mのイミ
 □欧米人のコンファレンスに参加する意識 
 □点から線、そして線から面へ 
-プロセスの大切さ-
 □自由度の高いことは良いことだ!
 □プログラムを組むことと外国語を話すこと 
-なぜプログラムが書けないか?-
 □Macro-viewとMicro-view -本当の意味のマクロ-
 □黒字倒産から考えること
 □自分の理解できないことは、他人に説明できるわけないじゃない -
自分の言葉で語る-
 □役に立つとは何なのか? 
-実学を超えて-
 □感謝の心、気持ちを持つ 
 □多くの人との出会いに感謝!!
 □信頼を築くは難しく、信頼を失うは簡単。だが、失った信用を取り戻すのが一番難しい
 □今日のことを7割、明日のことを3割しようとまず思うこと
 □自分の能力・都合で絶対仕事をしてはならない。自分のやれる範囲で仕事はするな!
 □原理原則に則って考えることの強み
 □今のたった1度の違いが、後々大きな開き、違いを生み出す
 □うんと名刺で仕事をしよう 
-自分の能力を高めるために、出会いを求めて-
 □デカルトなんて糞食らえって言えますか? 
-要素還元主義への功罪- 
 □どんでん返しの楽しみ方 
 □歴史を学ぶことの重要性
 □遊び心の重要さ 
-無駄の効用-
 □人間の真価が問われるとき

次回は、『「見られること」と「見えること」 -可視性(Visibility)の意味-』について書いてみることにする。

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