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生活者と流通ビジネスの循環をつくるツールとしてのITについて、日々雑感。

ウェブとローカルを結ぶホール・フーズ・マーケットの新たなる試み

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アメリカのテキサス州オースティンに本拠をおき、アメリカだけで350店舗超を展開する世界最大の自然/オーガニック・スーパー、ホール・フーズ・マーケット(通称ホール・フーズ)。アメリカの小売業を語るにはホール・フーズを語らないわけにはいかない、というほど存在感溢れる企業である。


自然/オーガニックというニッチ・カテゴリーをルーツとするが、「自然/オーガニックを好む人たち」のライフスタイルを研究し、高級食材やグルメ・フーズ、ワイン、チーズ、自然化粧品からヨガ・グッズにまでカテゴリー拡張し、「ライフスタイル・リテーリング」という業態を確立してきた。小売業界に与える影響力も、「食品」や「スーパー」という枠をはるかに超える超優良企業だ。


ホール・フーズのウェブサイト


先日、オフィスでの会議中にホール・フーズの話題になり、久しぶりにそのホームページを開けてみて驚いた。みずみずしい鮮やかな緑が美しいキャセロール、ブドウの実を宇宙人キャラに見立てた茶目っ気溢れるイラスト、一目見ただけでは何かわからないアーティスティックな赤カブのクローズアップ、そして、カウボーイ・ルックの男性と雄大に広がる大草原、そんな写真のパネルが背景に入れ替わり立ち代わり出てくる。あまりに大胆なつくりなので、一瞬、どこか新手のソーシャル・サイトかと思った。急いでグーグルの検索結果に戻ってみたが、どんなに目を凝らしても、公式サイトらしきものは他には見当たらない。


結局、先ほどのサイトに戻り、改めて観察を試みた。ホール・フーズのウェブサイトはもともと新鮮な野菜や果物の写真が色鮮やかな目に楽しいサイトではあったが、最近になって大刷新を経たようで、ビジュアル要素を以前にも増して前面に押し出した画期的なサイトになっている。そればかりではなく、ホール・フーズのブランド力、ウェブとソーシャルの威力、そしてスーパーという店舗小売業ならではの地域性を組み合わせた新しい試みである。


ホール・フーズのストアロケーターサイトを初めて訪れると、各地の店の店頭写真がずらりと並んで出てくる。そして、「あなたの店を選んでください」と促される。「スーパー」というのは本質的にローカル(地域性の濃い)ビジネスだ。「近所の店」を贔屓(ひいき)にしてもらい、より頻繁に通ってもらえばもらうほど顧客のLTV(ライフタイムバリュー)が上がる。


だから、サイト訪問者がどの地域に住んでいる人で、どの店を贔屓にしているのかを把握することが顧客に近づく上での第一歩となる。個々の訪問者と店舗の好みを結び付けられれば、その人が毎回サイトを訪れるたびに的確なセール情報やイベント情報を表示してみせることができる。


スーパーの場合は特に、顧客は「店」につくのであり、「企業」につくわけではない。このことを心得てか、ホールフーズでは以前からソーシャル・メディアを展開する際にも、「ホール・フーズ」という企業単体としての公式アカウントを設けるほか、店舗がそれぞれアカウントを開き、店舗の特色を出した活動をすることを奨励してきた。


<フェイスブック上には、本社の公式アカウント、売場別アカウント(チーズ、精肉など)に加え、270件をゆうに超える店舗の運営アカウントが存在する。ツイッターについては、ホールフーズ名義のアカウントをすべて集積したページが設けられているが、五種のトピック別アカウント(チーズ、ワイン、レシピなど)のほか、店舗別アカウントの数は321を数える。ほとんどの店舗が少なくとも日に一度はつぶやき、活発に活動しているようだ。


ホール・フーズの店舗ごとのFB「民主主義」と「地方分権」をモットーにするホールフーズらしく、各店舗のソーシャル・メディア活動に本社からの統制の匂いは感じられない。本社のウェブサイトで特集されているコンテンツに関連するつぶやきもあるにはあるが、大半が店舗独自のイベントや売場、レシピ紹介を中心としている。本社のウェブサイトで特定の店舗を「私の店」として指定すると、以後サイトを訪問するたびに、そのローカル店舗のツイッター・フィードやフェイスブック・フィードがサイト画面下部に表示されるようになる。


店によっては店内にワインバーやパブが設けられていたり、地域性豊かなイベントが催されたり、ホールフーズでは店舗運営も本社から独立した形をとっている。年商100億ドル超のブランド・パワーを梃子にしつつ、ソーシャル・メディアを駆使して店舗ごとの個性を訴求し、ウェブからローカル(店舗)へと顧客の誘導を試みるホール・フーズの新たなる試みに感心した。


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