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グルーポン、米リテール業界の「現体制」に宣戦布告

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「共同購入型クーポン」のグルーポンが、物品販売に進出した。

初めてグルーポンの存在を知った頃、その強みは、「ローカル・ベースのサービス・ビジネス」支援だと定義していた。つまり、ご近所のレストランやスパといった、比較的小規模で、どんどんウェブ化、ソーシャル化する世の中においてマーケティングに苦戦しているローカル・ビジネスを支援するということに大きな意義があると思ったのだ。

そのグルーポンが、物品販売に進出した。それも、グルーポンでクーポンを購入して、それをローカルの店舗に行って還元する、というタイプのものではない。あくまでオンライン販売だ。グルーポンの登録顧客にはメールでセールの開始が知らされるが、そのメールからクリックスルーしてクーポンを買い、商品の提供サイトに行って購入を完了する。


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アメリカのビジネス系ニュース・サイトは、『グルーポン、ダイレクトEコマースに参入』と報じる。提供商品を見るところ電化製品やエクササイズ機器、キッチン家電など、いわゆる「ガジェット」と呼ばれるものが主流のようだ。つまり、アマゾン、ウォルマート、ベスト・バイなどといった「米リテール業界の巨人」たちに真っ向から立ち向かうことになる。

リゾート・ホテルを中心にディスカウント・クーポンを提供する「グルーポン・ゲットアウェイ」や、ユーザーの位置情報を利用し、最寄のディスカウント情報を提供する「グルーポン・ナウ」など、最近のグルーポンは、株式公開を睨んでのアグレッシブな事業拡張に余念がない。しかし、今回の「グルーポン・グッズ」は、「ローカル」「サービス」をキーワードに事業展開してきたグルーポンにとって、いまだかつてない大きな飛躍であるといえる。

現時点では、全米展開されているわけではない「グルーポン・グッズ」。ほとんど前触れもなく、都市ごとにロールアウトしていくという慎重な市場導入だ。あくまで本格導入ではなく、トライアルという意図もあるのだろうか。

グルーポンは、グローバル規模では1億3,400万人の登録顧客をもつ。これらの顧客のメール・アドレスを握っており、この膨大なオーディエンスにリーチする「潜在性」をもっていることが、グルーポンにとって今のところ最大の武器だ。

先日、私が住むロサンゼルス地域でローンチされた「グルーポン・グッズ」だが、ある日の品揃えを覗いてみた。

デジタルカメラ、エレキ・ギター・セット、エクササイズ・ウェアなどこの日の提供商品は六種。平均すると50%ちょっとのディスカウント率だ。見たところ72時間限定セールのようだが、対象がモノなので当然在庫に限りがあるらしく、セール開始から24時間以上が経過した時点で「売り切れ」の表示が出ているものもある。ざっと計算してみると、セール初日の売上は1億円程度といったところだろうか。

厳選された品揃えで、在庫の限られた商品を、期間限定、大幅ディスカウントで売りさばく「フラッシュ・セールス」は、米国ネット通販業界で現在最も注目されている販売モデルのひとつだといえる。その「フラッシュ・セールス」が、売り手に提供する価値提案は「余剰在庫の処分」「新商品/ニッチ商品のマーケティング」だ。

先の例を見てみても、「エクササイズ・ウェア」といってもただのエクササイズ・ウェアではなく、着用しているだけでセルライト除去効果があるエクササイズ・パンツ、起床時刻になるとアラームが鳴るだけではなく、跳ねたり転がったりする目覚まし時計、ソープストーンでできたアイスキューブ(保冷効果があって、冷蔵庫で冷やしておくと30分間は低温を維持できる。飲料を冷やすために使うが、普通のアイスキューブと違って溶けて味が薄まってしまうこともない。)など、アイデア商品/面白グッズの類が品揃えに多く、これらは流通業者ではなくメーカーから直接提供されている。メーカーにしてみれば、グルーポンで販促をすることで、いわゆる「販売促進」だけでなく、グルーポンの登録顧客に対してブランド認知/商品認知を高めるという思惑があるのだろう。

ちなみに、米国ではグーグルがグルーポンに対抗して始めた類似サービス「グーグル・オファー」の目覚しい成長ぶりがビジネス・メディアを賑わせている。同サービスを通して提供されるプロモーション一件あたりの売上は、今年8月から9月の一カ月にかけて160%増、販売されたクーポンの数に至っては427%増の成長を記録した。

昨年12月にグーグルはグルーポンに対して60億ドル規模の買収提案を行い、破談に終わったという経緯があるが、最近波乱続きのグルーポンに「グーグルの傘下に入るべきだったのでは・・・」という囁きも巷では聞かれている。アマゾンが出資する競合、リビングソーシャルの追随も激しい。

「グルーポン・グッズ」が、アマゾンやウォルマート、ベスト・バイなど、米リテール業界の「現体制」に対して強力なライバルになり得るかどうかはまだわからないが、共同購入型クーポンの市場においては「追われる立場」になったグルーポンが、あの手この手で首位の維持を試みていることは確かだ。変化の速い世の中である。「驕れる者久しからず」という言葉がこれほどしっくりくる時代も今までなかった。

市場の動きをいち早く読み、次々と新しい弾を投ずるとともに、時には競合の攻勢から素早く身をかわすことが必要だ。グルーポンは果たして逃げ切れるのか、悪あがきなのか巧妙な戦略なのか、今後の展開から目が離せない。


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