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生活者と流通ビジネスの循環をつくるツールとしてのITについて、日々雑感。

生活者あってのIT、生活者あっての革新

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こんにちは、初めまして。石塚しのぶです。

私は、ロサンゼルスでダイナ・サーチという会社を経営しています。パイオニア精神豊かなアメリカという土壌で、先進的な企業がどのように考え、革新を進めているかを研究し、それを日本企業の皆さんの「革新の火種」として役立てていただく、それが、ダイナ・サーチの仕事です。

私自身は、1980年代の半ばごろから、アメリカの流通業界の変遷を辿ってきました。主に、オフィス用品やIT用品などの法人市場向け流通を追ってきて、巨大ディスカウント・ストアの台頭やカタログ通販の発展、インターネットの普及など、消費者(以下、「生活者」と呼びます)の生活様式や価値観の変遷と、それに対応することを目的とした企業の動きを研究してきました。

過去10年~15年間の市場変化におけるキーワードは、「顧客(または生活者)主導」ということではないかと思っています。ネットやウェブの普及の影響によるところが大きいと思うのですが、90年代後半から2000年にかけて、一般の生活者がめきめきと力をつけてきました。どういう「力」かというと、大きくまとめると、「自己表現の力」と「つながる力」です。特別なお金や地位をもたない、ごく一般の生活者がウェブというインフラをつかい、自らの考えを不特定多数に向けて発信し、そうした活動を通じて、共通の興味や関心、あるいは意見を持つ人たちとつながることができる・・・。そのおかげで、市場における主権が売り手から買い手へ大きくシフトしたということができます。

ウォルマートが他社に先んじてサプライ・チェーン・テクノロジーに多大な投資を始めた80年代から今日まで、「情報テクノロジー」の重要性は変わらないどころか、ますますその重みを増してきていると思います。しかし、昔と今と、ひとつ大きく変わったことは、「情報テクノロジー」の使われ方と方向性です。80年代、そして90年代の後半までは、「情報テクノロジー」は流通インフラや社内の業務効率の向上を主な目的として使われてきました。それが、先に述べたように、ウェブの普及を起爆剤として、市場における主権が売り手(企業)から買い手(生活者)に移行してくるにつれて、「効率」というアスペクトだけでなく、むしろ、テクノロジーの利用を、いかに「価値創造」につなげるか、といったところに焦点が置かれるようになってきたと思います。それも、いかに、「顧客に対する価値創造につなげるか」です。いわゆる「ソーシャル・ウェブ」の発達に伴い、今日、「情報テクノロジー」の焦点は、生活者が「安価」かつ「容易」に利用でき、そこからより大きな「価値を享受」することのできるテクノロジーというところに移ってきています。ここでも、売り手(企業)主体から買い手(生活者)主体へと変わってきているということです。

私は、すべての革新は、「生活者あっての革新である」と思っています。すべてのビジネスは、生活者にとってより高い価値を生み出し、生活者に力を与える(empower)からこそ存続でき、繁栄できると思っています。それと同じく、すべての情報テクノロジーは、「生活者に価値を与えるから存在し、普及する」ということができると思います。ですから、このブログでは、情報テクノロジーそのものについて難しく語ることはしません。もとより、私はITの専門家ではないですから、ITについて専門的に語ることはできないと思います。このブログでは、あくまで、「生活者」の視点、そして、流通市場を長年にわたって観察してきた者の視点から、生活者にとって価値を生み出す情報テクノロジーの利用、それがもたらす市場変化と、生活者に力を与える仕組みをつくることで成功している企業の例などを取り上げていきたいと思っています。


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