【問い】アイデアに必要な基礎筋力はありますか? 自分の考えとしては色んな経験をして筋力をつけておかないと有用なアイデアは出てこないと感じています。
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アイデアワークショップをしながら放浪の旅をしている人、と認識されがちですが、本職は、発想支援ツールの開発者です。アイデアプラント 代表の石井力重です。
知人友人には、「創り出す人」が沢山いて、興味深い問いをいくつも突き付けられます。
そんな、問いは、それ自体に価値がある。だからまた今夜も一つ紹介します。そして、それに対し、私なりの回答も試みます。
【問い】
アイデアに必要な基礎筋力はありますか? 自分の考えとしては色んな経験をして筋力をつけておかないと有用なアイデアは出てこないと感じています。
【回答】
この方も、とても創造的な人で、創る人、です。彼に薄っぺらいことを答えても、そんなの年末に使いにくいカレンダーをプレゼントするようなもので、まったく役立ててもらえないでしょう。
ですが、まずは、オーソドックス系の所から。
アイデアは、既存の要素の組み合わせ。
これは、アイデアの本を買ったことのある人の多くがしっているジェームズ・ウェブ・ヤングの言葉です。
いろんな領域の発想法や創造技法をみると、これはかなりの領域で正しい、と言えます。
(ただし、その概念が100%ではない可能性もある分析から指摘されていますが、と、同時に、その分析は、99.数%までは、正しいであろう可能性も示唆していました。話の簡単化のために、今は99%側に絞って話を進めます。)
「アイデア=既存の要素の組み合わせ」
このことから2つのことが、想起できます。
1)創造的努力の、具体的な方法を得よ
新しいアイデアを作ろうと思ったら、過去にあるものを大量取集し、ざくざく切り刻み、ごっそり混ぜたら、適当に取り上げて組み合わせて。組み合わせてみる。いくつも、組を作ってみる。そうすると、時々、「お、これは」と感じるものをみいだす。それを、左官屋さんのようになんどもなんども撫でて、滑らかな一つの概念にしあげたら、アイデアになります。知性の光はどこにいったんだ、そんなの、人海戦術というか単純労働みたいじゃないか、という声もありますが、実際に抗して大量の掛け算を生み出す中から光るものは見つかります。そこには、創造的努力の具体的な方法があるからです。組み合わせの中から、お!と思えるものをみいだす力、それを磨いて洗練させる力。どちらも、いうほどには簡単じゃないですからね。
2)経費かけても、インプットを増やせ
既存要素の組み合わせ。ということは、既存の要素を沢山持っている方が、たくさん掛け算、組み合わせもできるわけです。日々面白事例を知っておく。それらは、記憶の中で断片になったり、記憶の加工過程で概念的な削ぎ落しと意味づけをへて、アイデアの材料の素材集になり、いざという時に、(いっぺんにたくさんは引き出せないものの)アイデアの素材として掛け算の幅をひろげていきます。遠くから持ってくる方がよいというのは、いろんな創造の名手のいうところ。なので、自分の専門領域じゃないことにも、思い切り好奇心をもって、何でも体験してみたがる、なんでも、表面の中にあるインサイトも知ろうとしておく。仕事に関係ないことを日々一杯やっておくことも仕事の一種、必要経費であると、アイデア型産業(アイデアと製品の距離が近いような産業分野)の人は心得よ。そんなことが、ここからわかります。
で、この2つ。
これぐらいは、知見の広いビジネスマン、研究者的な思考ベースを持った起業家、その他、いろんな人でも、うっすら、あるいは、はっきり、気が付いていますよね。
なのでここからは、その先へ、もう一歩、踏み込みます。
質問者の「有用なアイデアが出てきませんよね」という部分は、一言で深いくさびをさしていて、そうだな、と思います。
"有用な、アイデア。"
、、、そうなんです。
大量の組み合わせを作るだけなら、コンピュータによる形態素解析で、無数の人工的な組み合わせを生成できてしまいますが、その中にきらりと光りを見つけるのは、人間しかできません。人間が高度だから、ではなく、有用という概念を生じさせるのは人間たちだから、です。なので、人間たちにしかその点が見つけられません。(ただ、この先もそうかは、わかりませんがね。僕らよりも人間の感性をみずみずしくわかり、感動するセンスをよりデリケートに持つアルゴリズムができちゃったりすると、もう、人間ってなんだろう。。という哲学の深い井戸におりておかねばならないでしょう。。)
浮かんでは消えてく大量の原始の状態の閃きの中から、有用なアイデアをセンス良くたくさん取り出せるかどうか。そこにかかっています。
浮かんでは消えてく大量の原始の状態の閃きの中から、有用なアイデアをセンス良くたくさん取り出せるかどうか。そこにかかっています。
インプットを大量に得るのは、もちろん大事だとして、特に何に意識を立てておくかというか、価値、気持ち、自分ち、だと、私は思います。
実は、自分ち、というのは、無理やり今作りました。何となく韻を踏みたくて。でも、概念的には正しいです。
自腹カスタマーになっていろんなものを体験しておく、サービスを享受してみる。この製品やサービスはどんな、実際に気持ちになるだろう。どんなことが便利になって物体を離れて無形の価値として存在しているのだろう。自分ちでこの商売やったら、実際にはこれって、見た目ほど簡単じゃないだろうな。かなりの手間があって校で来ていると思うんだけれど、ちょっと店員さんにきいてみるか。
そんな点です。
価値、気持ち、あたりは、当たり前に分かる。というか、自腹カスタマーして気持ちがわからないってのはめったにないですね。ただ、興味の牛うものだと感度のチューンを上げないといけないってのはありますが。
で、よく見ている観察者と飲みに行くと、お客の視点と、やる側の視点を、行ったり来たりしながら、見たり、考えたり、聞いたりしています。自分ち=自社、としてそのサービスの中の人になってみてみると、体験から得られるクリエイティブなストックは倍になる。そんなところです。
例えば、ですが、、私の場合に過ぎませんが、、、地方の特急列車の遅い時間乗ったりすると、乗客がほとんどいないような、銀河鉄道みたいな夜もありますが、そういう時には、ワゴンのお姉さんにコーヒーをもらいながら、工夫を聞きいたりします。夜遅いほど、お酒が売れる。なので、軽くて値段の高いおつまみ。でも、販売数が読めないので、なるべく日持ちするタイプの物。あとは、意外とお土産品が出る。お酒飲んでると面倒なので、ワゴンの売り子さんに名産ないか?と聞く。なので、軽くて少し値段も良いお土産もおく。、、、そんな風にコーヒーを継ぎながら彼女は教えてくれました。自分が、この列車のワゴン事業をするならこんなに乗客が少ない列車にも対応するには利益率が大変だろう、といおもいましたが、思いのほか、夜が遅ければ遅いで、やり方があると知りました。
そんな感じです。
実は、アイデアの基礎筋力として、述べたいことは、これとは違った観点からも言いたいことがいくつもあるのですが、時間となりましたのでまずはこの辺にしておきます。
あっと、それでも、付け加えておきますと、実際の筋力、つまり、背筋や脚力、上腕二頭筋の力、というのも、アイデアの基礎筋力だとおもいます。というのも、創造的努力や思考の高速な継続というのは、思いのほか体力が要ります。年を取ると集中力が、というけれど、それは、実は体を支える筋力が衰えて、長い間、思索にふけるための体力がなくなり、脳の疲れじゃないところで集中がおわる、という考え方をする人もいます。なので、長く長く作品を作れる人の中には、たくさんの野菜を食べ、毎日走り、ちゃんとした規則的な日常を送る、ということを心がけている方もいますよね。
ただ、創造的な人は、忙しい。それも事実です。なので、毎日、ブレストできる仲間と、20分ぐらい、帰り道か、午後の休憩時に、ウォーキングブレストをすることをお勧めします。血行が良くなり、脳の回転もはやくなります(あと、軽い、判断の甘さがでて、それは、創造的退行につながるよい面があります)。
長くなりました。まずは、そんなところです。
良い質問をありがとうございました。
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面白い問いがあればぜひ教えてください。
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に書いてくだされば、力不足ながら、私なりの回答をこころみます。
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