【問い】メンバーでブレストし、アイディアがたくさん出たので、「さぁ、まとめに入ろうか!」っとなるのですが、そのときに新しいアイディアが出てきて、また広がって... 最後は、疲れてグダグダのまま、まとめになってしまう。どうしたらいいでしょうか。
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アイデアワークショップを大学や企業で実施したり、アイデア会議の道具を作っています。アイデアプラント 石井力重です。
「以前、ある方から、アイデア発想についてご質問をいただきましたので力不足かも知れませんが、私なりに切り口を考えてみます」シリーズ、第3弾、トライしてみます。
【問い】
メンバーでブレストし、アイディアがたくさん出たので、「さぁ、まとめに入ろうか!」っとなるのですが、そのときに新しいアイディアが出てきて、また広がって...
最後は、疲れてグダグダのまま、まとめになってしまうことがよくあるもので。
【回答】
この方(Iさん)は、アイデアを引き出す空気を作るのが上手く、セミナーなんかをすると女性の方がたくさん集まるような、そんな方なのですが、たくさんアイデアを創出させる人には、それはそれでまた、特有のなやみというのがあります。この方の問いはその典型の一つなのですが、たくさん出せたら今度はまとめていくのに苦慮する、まとめていたはずがまた広がってしまうし、広げる資質の強い人の醸すものはファシリテーション上、どうしても広がる力が出がちになります。
この辺は、ムードメーカーの宿命、かもしれません。私の友人のとある男性は、戦前からあるような古い商売事業を起こして地道に店頭に立ち、今では事業だけでなくその地域にイベントまで作り、かなり知られるような事業をしています。彼のムードメーカとして資質はものすごくて、彼が話すと企画立ち上げにつきものの負担な作業が、楽しく面白いもののような感じがして皆が次々参画していくような流れが起こります。天性だけでなく、精神的努力ももちろんたくさなってのそういう人なのですが、やっぱり魂の部分が、憎めないようなところ、というか、愛嬌のある人なんです。そうすると、会議・話し合いは収束が必要なフェーズでも発散力が強く、ち密に役割をふりきれず、本人が人知れず裏でいつも膨大な作業を引き受けているようなところがありました。
さて、話を戻します。
ブレスト的な、創造的なムードを作るムードメーカは、じゃあ、アイデア収束をさせることができないのか、というと、そうでもありません。創造技法の中には、収束技法も結構あります。それらのエッセンスからいくつか紹介すると次の三つのことが考えらえます。
1)アイデアを出しきる工夫を
発散中に出し切れていないならば、出し尽くしたな、ともったらそこから「後1ダース出そう」と言って更に出してもらいます。そこが創造性のおいしいゾーンでもあります。
2)収束中に広がる時には、「広げる時間を取ろう」と明示し、その時間も示す
収束に入ってから、絶対に発散したら駄目か、というと、そうでもありません。ベテランの職人の創造的な所作を観察分析していると頻繁に発散と収束をして高度な技術的思想にたどり着いています。なので、発散→収束→発散→収束・・・と忙しく切り替えることも決して悪いわけではありません。ブレストのルールの根底にある「判断遅延」の概念で、切り詰めていって最後に残る最も重要な概念は「アクセル」と「ブレーキ」の2つの力を同時に使わない、ということです。なので、収束中に「あ、これは、広げるともっと革新的なコンセプトにたどり着くな」という場合は、発散過程に戻してもいいでしょう。
ですが、 だだし、次のように明確に言います。
「そのアイデアは重要そうですね。じゃ、ここで、収束の作業を一時中断し、その観点から、アイデアを拡げる作業をしてみましょう。この時計で、今から8分間はブレストフェーズを行いましょう。」と。(8分、出なくてもいいですが、いきなり30分とかにするとかえって勢いが落ちますので、適度な時間を示します)。
ブレストが大いに盛り上がり、成果を生むようであれば、指定した時間がたった時に「では時間なのですが、まだ発展しそうなのでもう少し伸ばしましょう。何分ぐらいにしましょう。10分?みなさんいいですか。・・・はい、じゃ、そうしましょう。では、継続します。」
という形で、続けます。
大事なことは「発散のフェーズ」にいるのか「収束のフェーズ」にいるのかを、皆が共有して同じフェーズにいるように、リードすることです。なし崩し的にブレストに戻ったり、ブレストフェーズが盛り上がりすぎてなんとなく延長していってしまい、半分ぐらいの人がごうをにやして、誰かが"もう!いつまでもやってないで早く決めようよ!"というようなリードの仕方はいけません。その状態に至るまで、参加者の力はベクトルが打ち消しあって、十分に全員の創造的知性をつかえてない状態にあったといえましょう。
所要時間を示し、少なくとも「今からのN分間は、このフェーズを進む」という共有があれば、思い切りその作業に打ち込めます。
日本人は特に配慮深いので、「何となくこういう流れだから、、、最初に提示した通りじゃないけれど、場に任せよう」としがちですし、場の流れに任せることもとても良いことではあるのですが、こういう「打ち消しあう2つの力」が混在するようなフェーズを混ぜるのはいけない、ということです。
磁石のイメージで言えば、構成する分子の磁性がNであれSであれ皆の向きがそろっていること大事。どちらの向きであれ、それぞれの分子の力の総和が磁石の力の総和になる、そうであれば、大きな機能を発揮できるわけです。
この辺は、とても感覚的なことなのですが、それを言語的に説明するとこんな感じです。(長くてすみません)。
3)アイデアをいきなり評価するのではなく、評価軸を出しあい、皆が重視したいと考える評価3軸を作る
この点は、さらに長くなるので、口頭で説明したいところなのですが、各種の収束技法の本質でもあり、どうしても紹介しておきたいポイントです。
アイデアを評価していくと、途中で、口数の少なかった人が「実はこういう観点から、この方向性のアイデアを重視したい」とおもむろにいったりします。それまで、リードしていた人には内心抱えていた評価軸がありますのでそこで少し議論になります。その時点で指摘された評価軸が皆に受け入れられてその軸が新しい評価軸になったりします。この構造はアイデアが多い場合は幾度か出現します。そうすると最初と最後では異なる評価軸でセレクションをかけていて、最後の方の評価軸でなら優秀案となったはずのものが前半で落ちてしまったりします。つまり、ブレます。その気持ち悪さは、疲れますし、企画さ中車の皆の心の中に、先行き不安、暗雲が立ち込めます。
アイデアを評価する作業をするときには、まず皆にアイデアの評価軸として重視してしたいものをあげてもらいます。できるだけ具体的でエッジの立ったものを出してもらいます。時には文章であってもいいです。そしてそれらをリストアップしたうえで、3軸まで議論して絞ります。ここは簡単に譲らないでなぜその軸を重視したいのかを主張しあいます。場合によっては激論してもいいぐらいです。やってはいけないのは、みんなの軸をグルーピングして、3つになるまで統合するやり方です。これは各論反対総論賛成の構造をもったものであり、そして、評価軸としては使えない「非常に総合的な評価軸」になってしまいます。激論してでも、エッジの立った具体的な評価軸を3つ作ります。具体的には「なぜそれを重視したいか」をつまびらかに紹介しあい、納得し合意できるところまで行きます。
そうしたら今度は、その3軸で、アイデア群を評価していきます。ここからは高速道路のように、非常に快速作業が可能です。ファシリテータが判断をするのではなく、1軸目の軸を担当する人を1人決めて彼に全部のアイデアをその観点で評価してもらいます。皆でワイワイ言いながらフィードバックをします。2軸目、3軸目、も同様です。そうしていくと、最終的に、皆の重視したい3軸において、優れたアイデア、というのが明確に分かります。
大抵は、3つともGoodになるアイデアというのはなくて、一長一短です。全部NGになったものは削ったとして、残るのはへっこみ、でっぱりがあります。場合によっては、そうした良い所悪い所が相補的なアイデア同士を融合して発展案ができないか、と、ディスカッション~ブレストをしてもいいでしょう。
参考情報) 評価軸ワーク関係のツール (自分のつくった道具で恐縮ですが)
以上です。
この3つのポイントを全部実施する必要もありません。好きなところを、好きなようにアレンジして、使えるところがあれば活用してもらえれば幸いです。
ただ、昔の創造技法の先生方なら、こういうでしょう。
「石井君、4つ目があるぞ。というか、これが1番だ。それはな、議論尽くすまで夜を徹してアイデアを出し合い議論するんだ。疲れただ、なんだの、のその先にあるんだよ、アイデアが。」と。
現代の多忙なビジネスマン、忙しいスケジュールの中でそんなことができるのは、ごくまれかと思いますので私はそう言いません。
が、しかし、ひなびた温泉か、季節外れの安いコテージでも借りて、で、そこに酒でももっていって、ばたっ、ばたっ、と一人ずつ寝落ちしてクマで、一晩中ブレストをするってのも、時には楽しそうだなぁと、内心思わなくも、ないですけれどね。
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