時代はソーシャルからゲーミフィケーションへ
9/16のGigaOm記事より。
企業向けのソーシャルネットワーキング技術は、昨年のSalesforce.com社のBuddy Media社の買収($689M)、や、Microsoft社のYammer社の買収($1.2B)等を筆頭に、買収対象として大きくクロースアップされてきている。このトレンドがさらに進歩して、Gamification(ゲーミフィケーション:ゲーム理論に基づく業務の最適化)をターゲットとした買収に発展するだろう、というのが同誌の予測。
ゲーミフィケーションは、ポイントやバッジの獲得、リーダーボードと呼ばれる順位表の採用、賞品の提供、等、人間が元来持っている遊び、競争心、ゴール達成感、等に対する欲望を駆り立てる点が大きな特徴である。コンシューマ向けのアプリケーションの世界では何年も前から存在し、飛行機のマイレージプログラムや、ポイント制度等、非常に種類も数も多い。
この理論を、企業内の従業員に対しても適用し、生産性を向上させるようなソリューションにならないか、と言うのが昨今の企業が考えている事である。
ITのコンシューマ化、という言葉でも昨今のIT業界に於ける変化を見る事が出来、このゴールを達成するためには、エンタプライズが今後買収を通してそのノウハウの獲得に動くだろう、と予測されている。
Gamification Summitという業界団体も存在し、そのChairmanである、Gabe Zichermann氏によると、買収は今後12~24ヶ月間の間に非常に活発になるだろう、と予測している。
同氏は、既に市場として確立されつつある上記のソーシャルネットワーキングアプリにさらに機能を追加する形でゲーミフィケーションアプリが採用されるパターンが増えるだろう、と予測しており、既にSalesforce.com社のRypple社の買収や、IBM社が自社開発している、Innov8の様な動きが顕著になりつつある。
Gartner Groupの予測によると、2014年までには、70%のグローバル企業が少なくとも1つのゲーミフィケーションアプリを採用しているだろう、と予測しており、さらに企業内の業務改善に取り組む部門の半分は、2015年までにはその業務をゲーム化するだろう、と予測している。
その方法としては、自社内で開発を促しているケースもあるが、Bunchball、BigDoor、Gigya等のベンダーの技術を採用するケースも急激に成長している。
Bunchball社は、2007年に自社技術を開発し、既に200社の顧客を持つまでに至っている。顧客も、Warner Brothers、Comcast、Hasbro、Mattel等、大手のエンタプライズが目立つ。興味深いのは、従来、ゲーミフィケーションの採用を通してコンシューマを引き込む戦略を作り上げていたのが、今では企業内の従業員の生産性を上げるために利用されている、と言う点である。
これらの企業に共通している点として、ゲーミフィケーションが企業内の従業員にITアプリケーションを積極的に利用してもらうためのモチベーション強化に寄与している、と評価している、と言う点である。
Bunchball社は、昨年、Nitroと呼ばれる製品を発表し、Salesforce.comのAppExchangeで提供を開始している。この製品は、Salesforce.comのユーザに対して簡単にゲーミフィケーションツールを統合するソリューションを提供している。同様のアプローチで、Jive社との協業で、Jive社のソーシャルビジネスプラットホームにもゲーミフィケーションソリューションを提供している。
競合である、Badgeville社は、Yammer社とパートナーシップを組み、Jive、Omniture、Salesforce.com社のプラットホーム向けのゲーミフィケーションソリューションを提供している。
今後大きな分かれ道になりうるのは、エンタプライズ企業がこういったベンダーの技術を採用するのか、それとも自社開発に投資するのか、と言う点である。これについては、まだ方向性が見えていないようである。その決め手になるのは現在先行的にこの技術を採用している事例の成長具合であろう。アナリストの中でゲーミフィケーションは単なる一時のトレンドであろう、と評価している人も多く、実際の成果がどういう形で現れるかが業界が注目しているところである。
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さて、このトレンドは日本のIT業界によって吉と出るか、凶と出るか。元来、NTT DoCoMoのiモードの時代から携帯端末でのゲームの文化は日本市場が欧米社会より遥か先を走っていた年代が長い。これはスマートフォン等と言う言葉が登場するはるか前から登場し、広く市場に浸透していった文化であり、そこで培われたノウハウは相当の価値がある、と容易に想像できる。ここで蓄積されたノウハウを、この記事で言うエンタプライズの世界にうまく展開できる方法論については、北米の市場の動向をよく見ながら、うまく日本なりのゲーミフィケーションのビジネスを作り上げる事が大事なのでは、と思う。
これはゲームの世界と、エンタプライズの世界という、かなり距離のある業界を両方知る事により始めて見いだせるビジネスなのでは、と考える。意外とこの2つの業界は距離が離れており、日本国内に於いては出来るだけこの2つの業界の間にブリッジを築くための動きが出る事を期待したい。