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【3/4】火力?水力?原子力??乱立エネルギー供給体制 - 発電方式ごとの仕組みを考える

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★乱立状態のメリット

このような形で、それぞれ利点欠点あるエネルギー生成方式は、
「乱立しているという形が一番望ましい」
と僕は考えています。

化石燃料がなくなってしまったら火力発電はできなくなります。
なくならないまでも価格が異常に高騰してしまったら、高騰した火力発電のコストはそのまま電気料金に跳ね返ってきます。
CO2をはじめ炭素系の汚染物による大気汚染が進んだ暁には
「電気を諦めるか、未来を諦めるか」
なんて事が囁かれる日がくるかもしれません。

ガスタービン方式も同様です。
ガスがなくなってしまったら、ガスの価格が高騰したら。。。
不安は尽きません。

水力発電や風力発電には発電量の限界がありますし、
太陽光発電は現状ではスポット毎の電力を一部供給するくらいの力しかありません。

未知の危険と囁かれる核分裂方式原子炉の原子力発電でさえ、ウラン採掘が滞ってしまったら利用する事すらできないのです。

こんな状況の中、自己資源の乏しい日本はいくつもの発電方式を併用する事で安定した電力供給を実現しています。
この状態は、ある意味では一番賢く、安定した状態だと捉えることもできます。

乱立状態がもたらす一番のメリットは「どれか一つがこけても他でカバーできる可能性が大きいこと」です。
完全なサイクルエネルギーによる安定的な電力供給が見込める夢のような時代がこない限りは、現在の消費型の熱源をいかに効率よく、資源が枯渇してしまう前にまた新たな発電方式を探る、という技術努力を続けるしかありません。

そして、そんな状態がもたらした「いろんなモノを原料にして電気が作れる」技術は現代社会の宝であると言えます。
産業革命後の諸国が「自分たちの生活が電気に依存していることを」誰よりも理解し「もし今の発電方法が行き詰まってしまったら」と様々な代替え案を模索してきて今の電気の「当たり前」があるのです。

そして、その宝を支えてきた発電技術の要は、極シンプルな構造の「熱タービン式」です。
以下で、別な切り口を使った発電方法の種別を考えます。

★火力・ガス・地熱・原子力発電は「熱タービン式」が1Gか。

実際に今も使われているいくつかの発電方式に共通する「熱タービン式」は、蒸気を使って発電タービンを回す方式です。
これは蒸気機関の延長線上で、古くは蒸気機関車の時代からある「熱を機関エネルギーに変換する方法」の一つです。
その原理をごく簡単に言えば「沸騰したやかんの口からでる蒸気をプシューと風車に当て、その勢いで風車を回す」ことであり、より勢いよく沸騰させて、いかに勢いよく風車を回すかが勝負の発電方式です。

燃料として、化石燃料をはじめ、天然ガス・地熱・原子力と、さまざまな資源を「熱源」として利用することができる非常に応用のきく技術なので、産業革命後の世界はこの発電技術に支えられてきたと言っても過言ではありません。

熱タービン式では、要は安定的にやかんを沸騰させ続ける熱を発する燃料が欲しい訳で、そういった燃料の一つとして石油があり、石油が枯渇してきたタイミングで現れたのがガスやウランだったわけです。

これらの長所は、燃料さえあれば供給能力が安定していることです。
現在の電力供給が安定して行えるのも、この基盤があるからと言えます。

逆にデメリットとしては、熱を発生する際にどうしても環境に何らかの負荷が「継続的に」かかることです。
言い方を変えれば熱タービンは運転している限り何かを燃やしてなくてはならないということであり、その間は環境を少なからず汚染し続けるのが熱タービン方式の宿命とされてきました。

熱タービン方式の理想は「ほぼ環境を汚染しない熱源」を発見することです。
その理想に一番近い技術として「核融合炉」の開発が進められています。「核」と聞くと原子力発電を思い出してしまいますが、現在の原子力発電は「核分裂方式」で、熱発生の原理的には全く違うものになり、放射性物質の発生もほぼないとされています。
この方式が実現したら「エネルギーに困らない未来」がまっているかもしれません。

★タービンを回すチカラを熱源に頼らない水力・風力・潮力(2G)

また、水力や風力による発電も「タービンを回す」という意味では同じ部類に入りまが、熱源を使用しないので環境負荷が少ないとされています。
水力発電はダムなどを建設して「高いところから水を流し落としてその水圧でタービンを回す(他にも方式はありますが、その中の一つとして)」方式で、風力発電は巨大な風車を建設して自然風でタービン直結の風車を回すのですが、タービンを回したあとの発電原理は一緒です。 また、潮力発電も潮の満ち引きで発生する水の流れを利用してタービンを回すもので、水力発電と原理は似ています。

この方式は、最終的にタービンを回すという意味では1Gと似ていますが、動作原理はむしろ「おそばを挽く石臼を回す為の水車」や「小麦を惹く為の風車」の流れと考えるのが自然です。
1Gのような環境汚染を引き起こすことがない比較的クリーンな方式と言えますが、水力発電などは緑生い茂る土地へのダム建設のように「地形そのものを変えてしまう」事による別な切り口での環境破壊を伴います。このように、全く環境負荷がない訳でもありません。

また、水力発電は河川などがあることが建設の条件にもなる為、建設規模は限られますが、海という広大なフィールドを舞台にした潮力発電なども、本格的な運用を始めると「自然発生的な潮力」を利用することで、海全体の本来的な潮力バランスが崩れるのではないか(突発的な高潮などの危険性が強まる?)などの懸念もあります。
2Gのサイクルエネルギー利用による発電はまだ規模が小さい事例しかない為、大規模な施設を建設した際の環境への影響は「まだよくわかっていない」と言った方が正しく、同時に「やってみなければわからない」のが現状です。

★次世代技術代表は太陽光・振動発電(3G)

対して太陽光発電は「タービン原理」から離れたところで電気を生み出すため、「次世代発電技術」と呼ばれます。
ざっくり言うと太陽光から微弱電流を生み出す特殊な半導体を敷き詰めた「太陽光パネル」に太陽光を当て、発電します。
発電量は他の方式から比べれば小さいですが、運用に際して有害物質が発生するような事もなく、非常にクリーンな発電方式と言われています。
家庭の屋根に敷き詰めて電力を補うなど、アンテナの高い人達の間で様々な運用方法が試されています。
電力も家庭レベルの需要量の中でサポート電源として十分な供給能力を持つまでになりました。
が、まだまだパネル自体のコストが高い事、当たり前ですが昼間しか発電できない事などもあり、一般的な普及には至っていません。
また、無視されがちですが「パネル自体の製造に付随する環境負荷」を視野に入れるべきだという話題もしばしば上ります。
しかし、一度設置してしまえばほぼメンテナンスフリーな手軽さも兼ね備えているため、この震災と近年の蓄電池性能の向上も後押しした形で急速に普及するかもしれない方式です。

また、振動発電も先の説明の通りタービン依存でない新しい発電方式です。
ここ数年程度の技術である為、まだまだ道な部分も多いですが、パネル当たりの発電量が比較的予測しやすいため、サポート電源として普及する可能性もあるでしょう。

ご意見・ご要望・文句は@ikunaiまで。

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火力?水力?原子力??乱立エネルギー供給体制
【1/4】火力?水力?原子力??乱立エネルギー供給体制 - ここまで嫌われる原子力発電とは?
【2/4】火力?水力?原子力??乱立エネルギー供給体制 - 発電方式にはどんなものがある?
【3/4】火力?水力?原子力??乱立エネルギー供給体制 - 発電方式ごとの仕組みを考える
【4/4】火力?水力?原子力??乱立エネルギー供給体制 - オール電化住宅の意義(近日公開)

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