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商社マンの営業として33年間(うち海外生活21年間)、国内外で様々な体験をした。更に、アイデアマラソンのノートには、思いつきを書き続けて27年間、読者の参考になるエピソードや体験がたくさんある。今まで3年半、ITmediaのビジネスコラム「樋口健夫の笑うアイデア動かす発想」で毎週コラムを書き続けてきたが、私の体験や発想をさらに広く提供することが読者の参考になるはずと思い、ブログを開設することにした。一読されれば「読むワクチン」として、効果があるだろう。

海外旅行・出張危険回避講座 (一読さえすればリスクは最小、そしてあなたは、海外旅行のプロ) その33  水中の地獄と天国

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海外旅行・出張危険回避講座 (一読さえすればリスクは最小、そしてあなたは、海外旅行のプロ) その33 水中の地獄と天国

 私がダイビングの簡単な資格を取ったのは、1986年。
 以来、潜った経験は6度。数年に1度ずつダイビングをしてきた。だからいつまでも素人ダイビングの域を出なかった。
 最後に潜ったのは、モルディブだった。海の楽園モルディブへ行って、ダイビングをするのは、夢の一つだった。
 夫婦で滞在したのは、中のクラスのリゾートホテルで、遠浅の海岸に建てられたバンガローに泊まり、ダイビングツアーに参加した。ボートから飛び込むダイビングだった。ホテルに付属のダイビングクラブには、日本人の女性のインストラクターがいた。長い髪の毛の、すらりとした美人だった。

 彼女が私を含んだ3名のお客をダイビングツアーに案内する。私が一番(はるかに)年寄りだ。小さなダイビング用のボートで島を出て、別の島に向かった。その島の裏側で、ダイビングが始まった。浮力を調整するジャケット(BCD)から空気を抜いて、自力で潜って、海底に着いた。海底で集合した私たちはインストラクターの指導で移動を始めた。巨大なナポレオンフィッシュが影絵のように見られた。

 どれくらい進んだか忘れたが、ふっと気が付くと、私は一番後ろで、数メートルほど遅れてしまっていた。海底にかなり強い反対向けの流れがあって、それに逆らって進むのが難しかった。
 それでもチームに近づこうと懸命になっていた。チームとの距離はますます開いていく。水中の距離感は地上と異なるかもしれない。私は焦りを感じた。それと、私が感じている海流の流れが、更に早くなっている。普通に足をバタバタさせた位では、前に進まないほど強い逆の流れだ。逆に流され始めている。
(こりゃ、いけない)と私は、海底の岩にすがりついた。

左手で岩に触れると、体は海流で鯉のぼり状態となるほど、流れは激しくなった。
 私は恐怖を感じた。そのとき初めて、チームが止まって、私の来るのを待っているのが見えた。
(あそこまでいかなければ)と、私は海底の岩から、岩に、手で、ロッククライミングのように手づたいで、一歩、一歩進み始めた。


(落ち着け)と、ゆっくりと一つの岩ずつ前進して、チームに接近していった。ようやく女性インストラクターから2メートルのところまで、近づき、彼女の水中メガネ越しに笑顔が見えた。
 彼女は、私に大丈夫?とジェスチャー、私は大丈夫と合図。いつも通り、彼女は自分の体の前のボンベの空気圧計を指さしたので、私は自分の気圧計をチェックした。

気圧がゼロだった

見間違えたかと、再度確認、たしかにゼロになっていた。エエッ!こりゃいかん。


私は気圧計を、インストラクターに向けた。彼女も仰天した。その時だった、突然、ぐっと空気が吸えなくなった。本当に空気が切れてしまったのだった。

 私はパニック寸前だった。インストラクターの女性が、私のところに飛んできた。そして、私に、彼女のボンベから着いている2つ目のマウスピースを私に渡して、私は空気を取り戻した。


 

 その後、彼女は、他の2人に、その場所にとどまるように指示をして、私を抱き上げ、上昇を始めた。
 深い海底から、一気に海上まで上昇できない。途中で2度か3度、中性浮力で停止する。私は彼女に赤ちゃんのように抱かれていた。結婚式で女性が男性を担いで、階段を下りてくるような妙な感じだったが、恐怖はまったくなくって、極楽の雰囲気で、彼女の長い髪の毛が私に絡んでくるのも、心地良かった。人魚姫と交際していたら、こんな感じだろう。

 中年の終わり、高齢の入り口が見えている私が彼女にしがみつき、彼女は、お父さんを担いでいるような気分だったろう。
 水面に出たら、浮き(BCD)に口からも空気を入れて、彼女はボートに合図して、ボートの接近を確認した上で、もう一度、水中に戻っていった。
 最初にチェックしていたから、はじめからエアーが少なかったとは、思えない。そうなると、あの早い海底の流れで、私が思わず、普通よりもはるかにたくさんエアーを吸ってしまっていたということだろう。
 海底のエア切れ対策では、インストラクターの資格試験で、練習をしているおかげで、その対策どおりに、彼女は行動した。そして、私は一瞬の地獄と天国を見た。

  そうタイトルのように、地獄を見たあとで天国を見たから良かったのだ。逆だったら、インストラクターが、あのエア切れ寸前で、空気圧のチェックを指示しなかったら、今日、このシリーズのブログを書いていることはなかったかもしれない。


 海外でのダイブで、2度ほど、浮上してみたら、えらくボートから離れたところにいて、ボートがなかなか気が付いてくれないことや、海流があり、懸命に泳がないと、どんどん流されるという恐怖を感じたことが2度あった。最終的には、私が泳ぎ戻ったか、ボートが気が付いたことで、問題はなかった。
 いつも、海上に戻った後の、ボートへの合図をもっと簡単にする工夫のアイデアをたくさんノートに書いている。

ポイント 

(1) ダイビングの資格を持たないで、海外でやってみようとすることは、絶対にやめた方がよい。

(2)初心者でも回れるコースかどうかを確かめること。

(3)特に海流に注意をすること。晴れた日なら手鏡のようなもので、ボートに合図することも知恵。

(3)ダイビングでは、バディ(もう一人のパートナー)と二人で行動する。今回の場合でも、私一人が長く遅れる前に、チームが私を待っているべきだった。


アイデアマラソン一口メモ

現在、全国の6つの幼稚園と2つの保育園の年長組の園児約600人が、プレ・アイデアマラソンとして、毎日(夏休みを含めて)絵を描いている。みんな絵を描くのが大好き。一つの絵に掛ける時間は約20分程度。開始後数ヵ月後のアンケートで、ご両親が子どもたちの変化で一番驚いたのは、子どもたちが絵が上手になったのと、絵を描くのに子どもたちが集中している姿だった。すなわち集中力を見せているということだった。

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最新刊のアイデアマラソンの本
「仕事ができる人のノート術」(東洋経済新報社)
一読すればあなたも、毎日発想を残すことができる。それがあなたの財産だ。

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