「実は私、隠れMacファンなんですよ」(……しばし沈黙)
最近は「私、実は萌え系が大好きで」なんて事を、プライベートで飲みに行くと”告白(?)”(バリバリの固そうなマーケティング担当者だったりするのだが)されたりして、そっち方面では時代が変わったのだ、と全く驚かなくなってきた。
実はMac方面でも似たような話がある。
「実は私、隠れMacファンなんですよ」(……しばし沈黙)
先日、アップルのWWDCでMacintoshがインテルプラットフォームに移行するという発表を行い、ITmediaだけでなく非常に多くの媒体に取り上げられた。Blog関係もPC系、Mac系のところは大量にその手の情報で埋まっていったが、それと同時に取材や普段のメールのやりとりで上記のような告白を聞くことが多くなった。
たぶん、僕自身がノートPC以外の環境を(サーバ以外)ほとんどMacに移してしまったと、ある雑誌の短期連載で書いていたから、わざわざそんな話をしてくれるんだろう。でも、その話している相手は、WindowsやWindowsパソコンを売る側だったり、Windowsプラットフォームにフォーカスしてソフトウェアやハードウェアを開発している人だったりするから、え?(……しばし沈黙)となってしまう。いや、そんな事にもそろそろ免疫ができて驚かなくなってきた。
このMacのIntel化に関しては、ちょっと面白い現象も起きている。これまで、比較的スッパリと分かれていたMac系のモノカキさんとWindows系のモノカキさんが、それぞれ異なるフィールドの媒体で仕事をするようになってきているのだ。
というわけで、Macコミュニティとはさほど縁の無かった僕も、アスキー刊行のMac PeopleからPowerPCの将来像みたいな記事とMacにIntelが載るとハードウェアは何が変化するのかといった原稿を依頼されたり、異文化と接する機会をいただくことができた。
雑誌に原稿を書くと、見本誌といって自宅まで1冊サンプルを届けてくれるので、読んでみると、元インテル日本法人会長の西岡郁夫さんがインタビューで面白い事を話していた。昔、PowerPCへの移行を決定する前にPC上で動くMacOSのデモを見た話や、PowerPCのAIM連合にインテルが本気で恐怖を感じていた事などが書かれている。が、へぇ〜と思ったのは、西岡さん自身がMacユーザーだったという事だ。読み進めると、なになに、古川享さんも実はMacのファンだって?
その昔、インテル社長時代の西岡さんに話を伺ったことがある。実は共著したりプライベートでもお世話になったり、当時はご近所さんだったY's staff社長の田澤由利さんが、以前シャープ時代に西岡さんの部下だった(さらに言えば西岡さんと田澤さんが作っていたAll-in-noteという薄型AXノートパソコンのプリインストールソフトウェアには、ITmediaの代表取締役会長も関わっていたりする)という縁もあり、初めてのインタビューなのに本当に大丈夫かなぁと思うほど、いっぱい面白いことを喋ってくれた。
いかん、話が逸れてきた。
西岡さんは「インテルは本当にAIM連合を恐れていた」と話した。巨額の研究開発投資を続けなければ成長できないインテルは、その投資サイクルの源泉であるプロセッサのシェアを奪われると投資と収益のバランスが一気に崩れて吹き飛ぶ可能性があるというのだ。「あの巨大なIBMとモトローラが、アップルの魅力的な製品と共に勝負をしかける。内心、冷や冷やものだったが、AIM連合はインテルのPCにおけるシェアに対してかなり及び腰だった。Mac互換機をやったり、PRePをやったり、x86コードのエミュレーションもできるプロセッサを作ってみたり(実際には未発売)。ば〜んと、RISCで、新しいアーキテクチャで未来を語り始めたら、うちは負けると思ったのに、互換路線ばかり。それに助けられてインテルは売り上げを伸ばすことができた」
アップルにまつわる話は、西岡氏以外からもいろいろ聞いているのだけど、知れば知るほど、よくもまぁ、アップルは今まで生き残れたものだと思う。とにかく当時(主にマイケル・スピンドラー時代)は事業的にはむちゃくちゃな失敗が多かったのだ。
失敗を重ねながらも、未だに注目を集め、そもそも会社そのものが潰れもせず、買収もされずに残っている。それだけMacに魅力があるということなんだろうか。と、PowerMac G5でキーボードを叩きながら思うのだった。