スポティファイとフェイスブックが提携してアップル社に対抗!?~クラウド型音楽サービスの近未来は?
この数週間、アップル社が大手レコード会社との契約が同意されて、クラウド型のサービスを始めるとの記事が世間を賑わしています。まだサービスの詳細は不明ですが、ヨーロッパで先行しているスポティファイの現状を見ながら、クラウド型の"聴き放題"の音楽ストリーミングサービスについて、考えてみましょう。
●スポティファイ(Spotify)とは
スウェーデン本社の会社が運営しています。世界の4大メジャーレーベ ル(ワーナー、ユニバーサル、ソニー、EMI)と使用料支払の契約を結んで 行っている合法的な音楽ストリーミングサービスです。その他大手インディ レーベルとも契約していて、商品化されている音楽の ほとんどを自分の パソコン、mp3プレイヤー、スマートフォン等で聴くことができます。
無料でも使えますが、最大月額1200円程度の会費を払えば、その期間中は、広告もなくなり、ネットに繋がっていないオフラインの状態でも聴くことができます。
創立者はpeer to peer技術の専門家で、キャッシュの管理が秀でているそうです。peer to peerと言えば、ファイル共有ソフト「Winny」では、訴訟 にもなっていましたね。「空き巣のプロが開発した鍵」みたいで、面白いで すね。彼らは、スウェーデン人で「違法配信サイトよりも便利なストリーミン グサービス」を標榜しています。最初にこのサービスを教えてくれた友人 が、「海賊の末裔が海賊サービスを撲滅しているんだよ」と言っていたの も印象的でした。
最近、無料サービスの範囲を狭めて、より有料サービスの色彩を強めています。欧州ではかなり普及して、一般的なサービスになりつつあるようです。
◆北欧Tech⇒クラウド音楽サービスのSpotifyがフリーミアムモデルから撤退
アップル社がまもなく、スポティファイと似たようなサービスをアメリカで始めるのは、ほぼ間違いないでしょう。一時期、アップル社がスポティファイ社を買収という憶測記事もありましたが、独自サービスでいくようです ね。以前買収した、Lalaがベースになるのでしょうか?
さて、このようなクラウド型の音楽ストリーミングサービスが広まると、どのような変化とメリットがあるのでしょうか?
●ユーザーに、変化に応じた音楽を楽しむ環境が提供できる
スマートフォンやタブレットを持ち歩く人が増えて、ネットへの常時接続が当たり前になると、音楽の楽しみ方も変わります。音楽ファイルをダウンロードして「所有」する意味は無くなります。むしろ、ローカル(自分の所有のPCやスマートフォン)に、重いデータを持たされるのは、クラウド時代にはネガティブな行為です。
CD等のパッケージは、アーティストとのコミュニケーションの証し=「記念品」として、少なくとも日本では、かなりの期間で存続すると思います。
ダウンロードして音楽ファイルとしての所有は、二次創作に使う場合や特殊なデバイス向け(スマフォ以外の普通の携帯電話も含む)で再生するという特殊な用途に限定されていくでしょう。
普通に楽曲を聴いて楽しむという行為は、欲しい音楽がいつでも好きなだけ聴けるという「アクセスする権利を持つ」=クラウド型ストリーミングというサービスが主流になると思われます。
●違法配信サイトやYouTubeでの音楽試聴に対抗できる
音楽が、デジタルデータになってしまった時点で、違法配信を完全に無く すことは原理 的に不可能です。音質は劣化せず、コピーも容易です。 「わざわざ違法配信を使う必要が無い」サービスを提供するのが、一番 の対抗策です。スポティファイは、違法配信 サイト対策に効果を示してい ます。
YouTubeでの利用も同様です。YouTubeそのものは、違法ではありませんが、音楽の権利者に対する報酬システムは不十分です。現実には検索すれば、多くの曲が聴けてしまいます。より 快適に、楽曲に関する情報も充実させた音楽サービスとしてのスポティファイに期待したいです。
●新しい収益源とPR方法が期待できる
スポティファイの月会費は欧州で1200円です。毎月1200円を払うとユーザーは、世界中のほとんどの楽曲をいつでも好きなだけ好きな時に聴くことができます。日本でも、KDDIが同様のサービスを始めていますが、この月額会費でのクラウド型ストリーミングサービスが広がれば、レコード会社やアーティスト(事務所)等の権利者は、新たな収益源として期待できます。
仮に1000万人が使うようになれば、単純計算で年間1440億円です。現在の音楽配信売上(1000億円強)は、上回ることになります。
また、スポティファイがFACEBOOKと緊密な関係を取り、本格的な提携も噂されるように、ソーシャルメディアと連携したサービスになれば、プレイリストの共有など、ユーザー相互のレコメンドの広がりなど、プロモーションについて、新たな手法が生まれることでしょう。アップルは既にPingでソーシャル的な動きを始めてます。
●楽曲権利者に再生回数に応じた透明な分配が可能
私は、今後の音楽業界は、原盤ビジネスをクラウド型ストリーミングサービスを中心に再構築すべきだと考えています。サービスでは楽曲の再生データが詳細に手に入りますの「聴かれた回数に応じて売上を分ける」ことが可能になります。この分野はJRC(ジャパンライツクリアランス)のノウハウが先行している印象ですが、JASRACやCPRA等、権利者団体もデジタル時代の徴収分配への準備は進んでいます。透明性の高い分配は、ユーザーからの支持を得るためにも必須です。
また、売れた枚数に応じての分配よりも、聴かれた回数の方が、ユーザーの支持が金銭に反映されていますせんか?作品をつくった者としては、こちらの方が嬉しいですし、オリコンのシングルチャートよりもスポティファイの再生回数チャートの方が音楽の価値評価の指標としても、より正しい気がします。
私は音楽プロデューサーとして、また日本音楽制作者連盟の理事としても、新しい時代の音楽ビジネスとなるクラウド型のストリーミングサービスを推進していきたいと思っています。