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B2Bの営業支援システムをわずか6週間で立ち上げ、営業効率を大幅に改善したネスプレッソ

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ネスプレッソ Nespresso は、世界最大の食品メーカーであるネスレが提供するエスプレッソマシンのブランド名であり、またこれを専ら手掛けるネスレの事業部門の名称でもある。

多様な風味を持つ「コーヒーポッド」をマシンにセットしてスイッチを押すだけで本格的なエスプレッソが楽しめるという手軽さとスマートさが受け、数年前から世界的な大ヒットとなっている商品だ。

ジョージ・クルーニーが主演する多くのCMが、こちらも世界的に話題になっている。どれもセクシーかつコミカルで、非常に楽しい(笑)。


YouTube: NESPRESSO 「カプセルコーヒ」ジョージ・クルーニー

筆者が発見できた、日本語字幕つきのものはこれだけだが、英語版はたくさんある。

ネスプレッソはSAPの営業支援アプリケーションSAP Cloud for Sales」を採用し、営業活動の効率化を図っている。同社のCIO、フィル・グリーンウッド氏がSapphire Orlandoでキーノートに参加し、説明しているので紹介しよう。

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5129Nespressoでは現在、全社的な変革プロジェクトが走っています。業務モデルを大きく変え、現在そして未来に合ったものにしていきます。一言でいえば、オムニチャネル化です。

このプロジェクト全体は18~24か月かかると見込んでいますが、われわれとしては成果が出てくるまで2年待ちたくはありません。とくにネスプレッソにとってB2B(小売チャネルを通じた販売)は急成長中のセグメントですので、早く対応したい。

それで、クラウドCRM「SAP Cloud for Sales」を導入することにしたのです。検討開始からわずか6週間でプロトタイプを作り、現場の営業に提供することができました。現場からのフィードバックもたいへんポジティブです。

新しい業務プロセスによく適合しており、売上数値はもちろん、個々の営業マンの活動状況やキャンペーンの進捗など営業活動全体が見える化されました。パイプライン(仕掛中の案件)もさまざまな角度から把握でき、営業プロセスが全体的にマネージしやすくなりました。

またコラボレーションとフィードの機能があり、最新情報が把握しやすいうえ、営業同士でのベストプラクティス・成功事例の共有もしやすい。バックエンドの基幹システムとも統合されているので、処理が自動化されさらに営業活動を効率化しています。

業務への適合性がよく、すぐに使えて、すぐに成果が出ているので、現場は喜んでいます。この大きな改革プロジェクトにおいて、このクイックヒットは、強力な推進力になります。

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キーノートでの発表はこれだけで、具体的な利用イメージは明らかにされなかったが、最近リリースされた下記のビデオがほぼそのイメージを伝えているので、ご紹介しよう。

いちおう架空の企業ということで、「JJ'sコーヒー」という企業名になっている(笑)。


YouTube: SAP Cloud for Sales Retail Executionでパーフェクトな店舗エクスペリエンスを提供

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営業活動の徹底は”パーフェクトな店舗”への第一歩。

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SAP Cloud for Sales は、営業チームと小売店舗を支援して、一貫性のある魅力的なカスタマーエクスペリエンスを創り、お客様が求める商品を適切な価格でタイムリーに提供します。

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プレミアムコーヒーとコーヒーマシンのブランド、JJ's が SAP Cloud for Sales を使用して、小売店舗への営業活動を効率化している様子を見てみましょう。

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営業マネージャーのケイトです。JJ's の最新バリスタマシンの販促活動を開始します。

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担当地区での販促に必要なチェックリストと活動計画は、数分で作成できます。
すると、POS 分類にしたがって活動計画がテリトリー内の対象店舗に自動的に割り当てられます。

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これでもうチームには販促活動に必要なものがすべて揃いました

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こちらはジョン。ケイトのチームの優秀な営業担当者です。

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フィードを通じ、販促活動の通知を受けました。フィードは関係する社員や必要な情報をリアルタイムにつなぎます。

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担当店舗を抜き出して、マップを開いて、最適ルートを表示します。

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最初の訪問先は、「アロー」の店舗です。

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ジョンはタブレットを取り出し、SAP Cloud for Sales をチェックして、割り当てられた活動とチェックを開始します。明快なタスクリストと適切な販促情報があるので、各店舗では短時間で効率よく、すべての重要な活動をカバーできます。

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ジョンは店舗のディスプレイに、最新の販促キャンペーン情報がないことと、カウンターが破損していることに気付きました。

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これでは JJ's コーヒーのブランドを保てません。

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ジョンは写真を撮ってチェックリストに添付し、サービス依頼を作成します。

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すると早くも数分後には、カスタマーサービスから、新しいカウンターとキャンペーン情報を発送したとの回答が届きました。

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ジョンはさらにいくつかのメモ、写真、ライバル社の販促の価格情報を取り込みます。
おや、コーヒーカプセルの在庫が少ないようです。

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JJ's の受発注システムにシームレスに接続すると、確定オーダー分だけでは、新たな販促キャンペーンには足りないことがわかりました。

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そこでジョンは、発注書を作成します。アローと事前に取り決めた仕入れ価格が反映されるので、店舗マネージャーがその場でタブレット上にサインすれば発注はリアルタイムに実行されます。

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この店舗に割り当てられた活動はすべて完了しました。記録的な速さです。ジョンは余った数分で経費レポートまで入力できました。

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SAP Cloud for Sales は ただのSFAシステムではありません。包括的な顧客管理と営業活動支援がタブレット上でひとつになった、使いやすいクラウドベースのアプリケーションです。

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オフィスでは、営業マネージャーのケイトがチームからの情報をもとに、新しい販促活動が売上にどう影響しているかを分析します。

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また、営業チームメンバーの店舗内でのパフォーマンスを比較して、最も生産性の高いメンバーに、その秘訣をチームにシェアするようメッセージを送信します。

状況がリアルタイムに見えるので、ケイトは販促活動を調整したり、メンバーをコーチングして店舗訪問の効果を高め、売上を促進させたりできます。

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SAP Cloud for Sales があれば、店舗訪問が変わります。営業活動が大幅に効率化されます。”パーフェクトな店舗エクスペリエンス”への第一歩を、今日からSAP Cloud for Salesで、営業活動を徹底しましょう

(iPadの画面表示が英語なので、正直何が行われているのか、パッと見ただけではわかりにくいのが残念。各画像をクリックしていただくと拡大画像が表示される。また元のYoububeで「HD」を選んでいだければ、横幅720ドットのかなり高精細な画像になるので、ご覧いただきたい。)

 

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動画としてはあっという間に流れていってしまうので、「ふーん、そんなものか」程度の印象を持たれた方も多いことかと思う。しかしもしあなたが、IT畑、とくにCRM(顧客管理システム)に詳しい方であれば、これだけの業務をサポートするにはどれだけ巨大なシステムとデータと設定が必要になるか... とご想像いただけるかもしれない。

このJJ'sのようなシステムをもし普通に作ったら、6か月では済まないだろう。

これがプロトタイプとはいえ、「わずか6週間で作って、現場の営業に提供」というのは、常識的にはちょっと考えられない早さだ。このスピード感が実現できるのはまさにクラウドならではである。

JJ'sの動画でも、画面が英語なので具体的な機能がいまいちイメージしにくいのは残念。その代わりというわけではないが、「SAP Cloud for Customer のマニュアル(日本語版)」が公開されている。

■SAP Cloud for Customer ユーザーガイド(269ページ)
http://help.sap.com/saphelp_sapcloudforcustomer/ja/PDF/JA-1.pdf 

■SAP Cloud for Customer 管理者ガイド(521ページ)
http://help.sap.com/saphelp_sapcloudforcustomer/ja/PDF/JA-2.pdf

どちらも莫大な情報量だが、それだけに豊富な機能を全般的に網羅している。

実はネスプレッソは、単なる営業マンの業務効率化にとどまらず、流通チャネル全体のオムニチャネル化を進めている。B2BとB2Cのチャネルを一本化し、コーヒーポッドを買い求める消費者が通販でも店舗でも共通のカスタマーエクスペリエンスを受けられるようにするのが究極の目的、とのことだ。その内容が公表されたら、またご紹介したい。

 

※本稿は公開情報をもとに筆者が構成したものであり、ネスプレッソ社のレビューを受けたものではありません。 

【参考リンク】

■SAP Cloud for Sales 概要紹介動画(多数あり、英語)
http://sales.ondemand.com/demo/
おもな機能を紹介している。

■SAP Cloud for Sales デモ(旧名称 Sales On Demand)(多数あり、英語)
http://www.youtube.com/user/SAPCustomerOD?feature=watch
詳しい操作説明動画が揃っている。

https://www.youtube.com/watch?v=fhWP1QgRxiU
とくにこれは、上記JJ'sのストーリーをなぞって説明しているのでわかりやすい。

■SAP Cloud for Sales Retail Execution.  
http://www.sap.com/pc/tech/cloud/software/cloud-for-sales/overview/consumer-goods-retail-reps.html
製品紹介Webサイト。

■Nespresso: Selling the Perfect Coffee Experience with SAP® Cloud for Sales
http://www.sap.com/bin/sapcom/downloadasset.nespresso-selling-the-perfect-coffee-experience-with-sap-cloud-for-sales-pdf.html
ネスプレッソ社の事例紹介だが、あまり詳しい情報はない。 

■“インメモリ×クラウド”が世界にもたらす価値
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1305/16/news058.html
Sapphire Orlandoのキーノートを紹介した記事。ネスプレッソも末尾に短く紹介。

 

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