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【YouTuberの仕事と稼ぎ方はどう変わる?(1)】UUUM上場廃止でもYouTubeは絶好調----事務所の時代が終わった理由

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【YouTuberの仕事と稼ぎ方はどう変わる?(1)】UUUM上場廃止でもYouTubeは絶好調----事務所の時代が終わった理由.png 2025年2月17日、UUUM(ウーム)という会社が株式市場から姿を消しました。HIKAKINさんやはじめしゃちょーさんが所属していた、日本で最初の本格的な「YouTuberの事務所」です。2017年に上場したときは大変な話題になりましたが、その7年半後、広告会社のフリークアウト・ホールディングスに買収されて上場廃止となりました。

「YouTuberって、もう稼げないの?」

このニュースを見て、そう思った方もいるかもしれません。でも実は、まったく逆のことが起きています。YouTube本体の売上は、その同じ時期に過去最高を更新し続けているのです。

この連載では、これから3年、つまり2029年ごろまでにYouTubeでお金を稼ぐ世界がどう変わっていくのかを、全3回で見ていきます。第1回は「なぜ事務所の時代が終わったのか」。ここが分かると、次に何が来るのかも見えてきます。

※この記事では、1ドル=160円で計算しています。 事務所は苦戦、YouTube本体は最高益

そもそも「YouTuberの事務所」とは何だったのか

まず、UUUMのような会社が何をしていたのかを整理します。こうした会社はMCN(エム・シー・エヌ)と呼ばれます。マルチチャンネルネットワークの略で、ひらたく言えば「たくさんのYouTubeチャンネルをまとめて面倒を見る会社」のことです。

2013年にUUUMができたころ、YouTubeで人気者になった人たちは、こんなことに困っていました。

企業から「うちの商品を動画で紹介してください」と言われても、いくらもらえばいいのか相場が分からない。広告代理店は会社としか契約してくれないので、個人のままでは大きな仕事が受けられない。確定申告のやり方も分からない----。

つまり、人気はあるのに、それをお金に変える「事務手続き」が個人には重すぎたのです。UUUMはそこを丸ごと引き受けました。契約も請求も税金も炎上対応もやってあげるかわりに、収入の一部を手数料としていただく。これが事務所のビジネスでした。

この仕組みのおかげで、日本では「YouTuber」が驚くほど早く職業になりました。2014年にYouTube自身が「好きなことで、生きていく」というテレビCMを流したことも重なり、小学生の「なりたい職業ランキング」の常連になったのは、みなさんご存じのとおりです。

事務所のビジネスには、最初から3つの弱点があった

ところが、この事務所モデルには構造的な弱点が3つありました。しかも、そのすべてが2017年の上場時の資料に、会社自身の手で書かれていたのです。

弱点その1:もうけが薄い

UUUMの一番いい年(2019年5月期)でも、売上197億円に対して営業利益は12.5億円。率にすると6.3%です。売上の大部分は所属クリエイターへの支払いとして出ていってしまい、事務所の手元に残るのは手数料の部分だけ。しかも人気者を増やせば、支えるスタッフも増やさなければならない。「売上が伸びても、もうけはあまり増えない」という構造でした。

弱点その2:値段を決めるのはGoogle

UUUMの売上のおよそ6割はアドセンスでした。アドセンスとは、動画に流れる広告の売上をGoogleが分け合ってくれるお金のことです。ここで大事なのは、この分け前のルールを決めるのはGoogleであって、YouTuberでも事務所でもないという点。Googleが「収益化できるチャンネルの条件を厳しくします」と決めれば、翌日から収入が変わってしまうのです。

弱点その3:育てるほど、卒業される

これが一番切ない話かもしれません。事務所の看板になるような人気クリエイターほど、自分のチームで営業も経理もできるようになります。すると、収入から手数料を払ってまで事務所にいる理由が薄くなる。テレビの芸能事務所と違い、YouTubeではチャンネルの持ち主はクリエイター本人です。この「持ち物は自分のもの」という仕組みが、事務所の立場を弱くしました。

とどめを刺したのは「ショート動画」でした

そこへ2021年以降、決定打が来ます。ショート動画、つまりスマホで縦にスクロールしながら見る短い動画の大流行です。

視聴者にとっては楽しい変化ですが、収入の面では大問題でした。ショート動画は、同じ再生回数でも入ってくる広告収入が、従来の長い動画にくらべて1桁から2桁も低いと言われています。たとえば1,000回再生あたりの収入で比べると、長い動画が数ドル〜十数ドルなのに対し、ショート動画は0.01〜0.1ドル程度という試算もあります。 ショート動画は「見られても稼げない

つまり「再生回数はどんどん増えているのに、収入は減っていく」という、なんとも理不尽なことが起こったのです。

実際、UUUMの2023年5月期の決算では、ショート動画の再生回数が72億回(前の年から22%増)と大きく伸びる一方、会社は上場してから初めての赤字(営業損益マイナス1.96億円)に転落しました。収入の柱だった長い動画のアドセンスが細ってしまったのです。

その後、UUUMはブランド事業やライブ配信から撤退し、所属クリエイターを絞り込み、経費を削るという厳しい立て直しを行いました。そして2023年8月にフリークアウトの傘下に入り、2025年2月に上場廃止となりました。

でも、YouTube本体は絶好調でした

ここが今回いちばんお伝えしたいところです。

同じ時期、Googleの親会社であるAlphabetが公表しているYouTubeの広告収入は、2021年の288億ドルから2025年には403億ドル(約6.5兆円)へと、過去最高を更新し続けていました。動画とサブスクを合わせたYouTube全体の売上は600億ドル超、日本円で9.6兆円を超えます。

つまり、市場が縮んだのではなく、お金の流れる場所が変わったのです。長い動画からショート動画へ。スマホからテレビ画面へ。そして「事務所に囲われたタレント」から「自分で事業を回すクリエイター」へ。

日本のYouTube経済そのものは、いまも拡大しています。イギリスの調査会社オックスフォード・エコノミクスの調べでは、2024年にYouTubeのクリエイター経済が日本のGDPにもたらした貢献は4,600億円超、支えた雇用はフルタイム換算で8万5,000人以上とされています。

終わったのは「囲い込み」であって、YouTuberではない

UUUMの上場廃止が教えてくれたのは、「YouTuberはもうダメだ」ということではありません。「たくさんのYouTuberを囲い込んで、広告の分け前から手数料をいただく」という一つのやり方が、通用しなくなったということです。

象徴的なのは、HIKAKINさん自身の動きでした。2023年、彼は自分の会社を立ち上げ、UUUMとの関係を「所属」から会社同士の提携へと結び直したと報じられています。囲われるタレントではなく、パートナーとして組む経営者へ。これがいまのトップクリエイターの標準的なかたちになりつつあります。

実際、事務所という仕事がなくなったわけでもありません。権利の処理、炎上への対応、企業案件の請求と与信、税務----個人では抱えきれない専門業務を「サービスとして売る」方向へ、事務所の役割は変わりつつあります。UUUM自身も、いまはクリエイター向けのシステム開発やマーケティング事業に軸足を移しています。

まとめると、これから3年のクリエイターエコノミーを見るうえで、押さえるべき変化はこうです。

  • YouTube市場は伸び続けている。ただし収入の入り口が変わった
  • 「所属して守ってもらう」から「自分で経営する」へ、主役の形が変わった
  • 広告の分け前だけに頼るビジネスは、プラットフォームの方針変更に弱い

では、自分で経営するといっても、これから何で稼げばいいのでしょうか。しかも、AIが動画を作れてしまう時代です。次回・第2回では「AIが動画を作る時代に、人間のチャンネルは何で稼ぐのか」を考えます。(つづく)

主な参照資料:UUUM 各期決算説明資料および新株式発行目論見書(2017年)、Alphabet 2025 Annual Report、Oxford Economics「YouTubeの日本における経済効果(2024年)」、エビリー(kamui tracker)調査。金額は1ドル=160円で換算。ショート動画の収益単価は各種業界調査・実測に基づく推計値です。


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