女性の活用ほどメリットのある施策はない
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クレイア・コンサルティングの調です。こんにちは。
女子サッカーのワールドカップやオリンピックでの躍進を受け、ダイバーシティの推進、なかでも女性の活用を推進すべき、という議論が活発化しています。最近では
東証に「なでしこ銘柄」 女性活躍の企業を選定へ
東京証券取引所は、上場企業の中から女性が活躍できている15社ほどを選び、「なでしこ銘柄」(仮称)として投資家に紹介する。女性の社会進出を後押しするとともに、個人投資家らの資金を市場に呼び込む狙いだ。
と、上場企業で女性が活躍している企業を選定したファンドまで生まれようとしています。
しかし、企業活動が営利目的である以上、女性の活躍を促すことに経済合理性がなくては、企業が前向きにダイバーシティ推進に本腰を入れることはないでしょう。果たして女性活用にメリットはあるのでしょうか?
利益を生むダイバーシティ
マッキンゼーが2008年から2010年にかけて行った調査が発表されています。
経営幹部クラスのダイバーシティは利益をもたらすのか?
Is there a payoff from top-team diversity?
https://www.mckinseyquarterly.com/Organization/Talent/Is_there_a_payoff_from_top-team_diversity_2954
この調査では、フランス、ドイツ、イギリス、アメリカの上場企業180社を対象に、ROE(株主資本利益率)、 EBIT(金利税引前利益)について、取締役会メンバーでの女性比率および外国人比率の上位25%(上位グループ)と下位25%(下位グループ)とを比較して、どれくらいダイバーシティと業績パフォーマンスとの間に影響があるかを調べています。
その結果、
for companies ranking in the top quartile of executive-board diversity, ROEs were 53 percent higher, on average, than they were for those in the bottom quartile. At the same time, EBIT margins at the most diverse companies were 14 percent higher, on average, than those of the least diverse companies.
取締役会のダイバーシティの上位グループに位置する企業においては、ROEが下位グループと比べて平均53%高かった。同時に上位グループのEBITのマージンは下位グループより平均14%高かった。
国ごとに若干の違いがあり、フランスではROEは下位グループのほうが若干高かったものの、逆にEBITは上位グループが50%多くなっています。詳細は上記リンク先の表をご覧ください。
調査対象企業の会社自体がバラエティに富んでいる中での結果であり、業種ごとで結果が異なるようなことは無いようです。
対象となった会社の一つ、アディダスにおいてはダイバーシティ推進の一環として女性活用に力を入れ、戦略的目標として掲げて実践を進めており
Today, women account for 30 percent of all managers, up from 21 percent three years ago. The company's goal for 2015 is 35 percent. The effort is supported by numerous policies, including gender-balanced recruiting, child care assistance, and flex- and part-time work opportunities.
今日、管理職に占める女性の割合は、3年前の21%から30%にまで増加している。2015年における全社目標は35%である。この努力は多様なポリシーのサポートによるものであり、ジェンダーバランスを意識した採用や、子供のためのケアに関する支援、フレックスやパートタイムでの仕事機会の提供などが含まれている。
またデザインセンターでもダイバーシティ推進を進めており、製品の創造性に関して多くの賞を受賞する結果になっているそうです。
どうやら女性活用には経済合理的なメリットがありそうです。
女性によるリーダーシップの利点
ではそのような業績を生みだす女性の強みはどのあたりにあるのか?
Sandyが猛威を振るう中、アメリカの著名な経営者、Tony SchwartzがHarvard Business Reviewのブログでの寄稿が話題を集めています。
男性が知らない女性だけが知っているリーダーシップの極意とは?
What Women Know about Leadership that Men Don't
No single challenge has been greater for me as a leader than learning how to take better care of the people I lead, and to create a safe, supportive space in which they can thrive.
自分が率いるべき人のことを心にとめ、彼らが生き抜いていくための安全で支援が整ったスペースを作りだすことほど、リーダーとしてやってきた中で最も素晴らしかったことはない。
そこでのキーワードはEmpathy(共感・感情移入)であるが、もともと自分がいわゆる男性的な特質を持った経営をしてきた中で、未だに自分の行動が鈍感に思えることが多い、と述べています。そして、
An effective modern leader requires a blend of intellectual qualities ? the ability to think analytically, strategically and creatively ? and emotional ones, including self-awareness, empathy, and humility.
現代の有能なリーダーは知性にまつわる特質―分析的、戦略的、そして創造的に考える能力―と、自己認識や共感、謙遜などを含む感情的な特質の双方を合わせ持つ必要がある。
端的にいえば、a whole human being(人間)であることからリーダーシップの全てが始まる、とのこと。そして、
I meet far more women with this blend of qualities than I do men, and especially so when it comes to emotional and social intelligence.
これまでの経験では、この2つの才能をあわせもった人は男性よりも女性のほうが多く、特に感情の部分や社会的知性については特にそうだった。
と述べています。
そして、Zenger/Folkmanというコンサルティングファームのまとめた調査が紹介されています。これは7,300人のリーダーに対する多面評価を分析したもので、同僚や上司、直属の部下からの評価を集めたもの。それによると、
Women scored higher in 12 of 16 key skills ? not just developing others, building relationships, collaborating, and practicing self development, but also taking initiative, driving for results and solving problems and analyzing issues.
女性が16個ある主要スキルのうち12個で(男性より)高い結果を残した。そしてここには人材開発や関係性の構築、協力や自己開発の実践などだけではなく、主体性の発揮や成果・問題解決への注力、課題の分析なども含まれていた。
また、2,250人の成人を対象に行われたPEW Centerによる調査でも、
women were rated higher on a range of leadership qualities including honesty, intelligence, diligence, compassion and creativity.
女性のほうが、誠実さや知性、勤勉さ、思いやりや創造性といったリーダーシップの特質について高く評価されていた。
といった結果が出ているそうです。
女性活用の現状と対策
このような結果が出ている一方、アメリカでさえ女性活用は十分には進んでいるとは言えない状況です。
全てを手に入れることをためらうスイスの母親
上記サイトを含め多くのサイトで取り上げられたアン・マリー・スローター氏の独白が示すように、女性のキャリア進出は難しいのが現状で、先のSchwartz氏の記事にも、アメリカフォーチュン500社のうち、女性の取締役は14%しかいないとのこと。
また、日本において女性が活躍出来ていない背景には、キャリアを築く前の段階における学習の部分に問題があるのでは、とのTwitter上のやり取りも数日前にTogetterにまとめられ注目を集めていました。(タイトルは直截的ですが真面目な議論です)
何故日本の女性は学力が低いのか?
ただこのように厳しい環境がある中でも、組織を成長させていくためには、先に見てきたとおり、今大勢を占めている男性よりも有能である女性を活用していくのが効果的な方法であることは間違いないものと思われます。
当社が以前、昇格や選抜、人材育成などで活用される人材アセスメントの1,000人分の結果を分析したところ、女性管理職と男性管理職との間での能力の差異が明らかになりました。
- 女性管理職の強みとなっている能力は、チームメンバーの気持ちを理解し動機づけを行う「意識統合力」、メンバーに裁量権を与えて自発的な行動を促す「エンパワーメント」など、『人のマネジメント』が得意
- 一方、弱みとなっている能力は、優先順位を判断して経営課題を解決する「課題解決力」、組織を活用して仕事を進める「組織感覚」、相手の意に沿わないことも説得して仕事に向かわせる「対人変革力」など、『経営課題の解決』や『組織のマネジメント』が不得意
また、当社の意識調査の結果でも、女性が重要だと考えている能力が「コミュニケーション」や「チームワーク」など『人のマネジメント』に偏っていることがわかってきました。
これまで見てきたように、これからのリーダーシップは男性・女性それぞれが強みとするところを十全にブレンドさせていくことが重要であり、そのためには現在均衡が崩れている男女のバランスを取っていく、いわゆる女性活用を中心としたダイバーシティ推進は、経済合理性のある取り組みであると言えそうです。そしてその実現の近道は、おそらく今社内でうまく活用されていない女性のポテンシャルを発揮させていくところから始まるのではないでしょうか。
お読みいただきありがとうございます。
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当社では「女性管理職マネジメントコース」を提供しています。先に述べた女性にとって弱みとなっている能力(コンピテンシー)に焦点を当て、その強化を図っていきます。
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