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ある時はコンピュータの製品企画担当者、またある時は?

人前で話すこと

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話始めているうちに、何を言おうとしていたのか、主語が何だったのかがどこかへ飛んで行ってしまい、支離滅裂な文脈の羅列に終始する、そしてかろうじてプロジェクターに映し出された資料にすがりながら話を進める、というのがいつものパターンであった。それがいつの間にか、話のスピードは速すぎていないかとか、誰が聞いていて誰がわかっていないかとか、図々しさと言うべきか全体の雰囲気を把握する余裕が生まれている。どうしてそう変化したのかと問われたことがあるのだが、要するに場数を踏んだことが最大の要因と考えている。それだけでは話にならないので、効果的なプレゼンテーションの仕方について、僕がセミナーで教わったことを少し思い出してみたい。

そのセミナーは生徒12人、外人講師2人による丸二日間という、今から思うとかなり贅沢なものであった。会社内のセミナーだったので、個人負担はなかった。まともに外部セミナーに申し込んでいたら、きっと10万円を超えるような料金になったに違いない。ここで僕が強制的に背負わされたハンディキャップは、英会話の実力を度外視して、講義も演習も全て英語というものであった。英語のプレゼンテーションなんぞやったことは皆無であったが、話す際に主語と述語と目的語が何なのかを必ず意識する必要があったのは役立ったかもしれない。

講師が最も強調していた点は、プレゼンテーションの場はステージであるという考え方だ。ステージなんだから皆に聞こえるように話すだけでなく、ステージを左右目一杯歩き回れ、止まるな、身振り手振りを大きく使え、聞いている人と時々数秒間目を合わせろ(アイ・コンタクト)、特にキー・パーソンがいる場合には重点的にアイ・コンタクトを行なえ、内容がどうであれとにかく自信たっぷりに話せ、と徹底的に叩き込まれた。質問を受けたら皆に聞こえるように繰り返せ、意地の悪い答えづらい質問だった場合には、関係のありそうなことを答えておいて、さっさと別の人に次の質問を促すようにし、質問者と議論をしてはいけない、であった。

おそらく謙虚に「プレゼンテーションをさせていただきます」という発想では駄目で、「俺様のありがたい話を聞かせてやるから、耳の穴をかっぽじって良く聞けよ」くらいの勢いで行かないといけない。聞いている人はカボチャか大根(で、いいのかな?)だと思えと昔から言われていたのと同じであろう。このあたりの度胸みたいなものが基本にあって、初めてそれぞれの注意点を考慮する余裕が生まれてくる。だから得体の知れない優越感みたいなものをもって終わるプレゼンは、大概うまく行くような気がする。

セミナーの話に戻るが、最初の演習でそれぞれ自己紹介を行なう時間があった。外人講師も自己紹介を行なったのであるが、うち一人は、趣味はプレゼンテーションだと言っていた。その時は変なヤツくらいにしか思わなかったが、プレゼンの際に得られる充実感とか優越感を知っていたからに違いない。

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