暖冬でもスキー
連休を利用して、福島県は猪苗代湖近くの箕輪というところに、家族と共に車で二泊三日のスキー旅行に行ってきた。今年は暖冬のために雪不足と言われているが、少なくとも箕輪の積雪量は1メートル以上あったので、滑走には十分だった。ただ問題は台風並に発達した低気圧で、スキー場によってはこれでやっとオープンにこぎつける恵みの雪となったところもあったろうが、少なくとも僕にとっては疫病神であった。
そもそも冬のスキー場なのに、みぞれ混じりとは言え雨に見舞われたのはこれまでに記憶がない。気象庁は強い冬型と言っていたけれども、低気圧って北半球では時計と反対周りに中心に向かって風が吹き込むわけだから、その中心が北西にあれば強い南風が流れ込むはずだ。台風で言うと西側を南から北へ通り過ぎた後、すなわち台風一過と同じ気圧配置である。南風が吹いたとは言ってもそこは冬のスキー場なので、雨は冷たいし夜になれば氷点下にもなる。
スキーウェアとかスキーブーツなどは安物で身を固めていた(念のために防水スプレーはたっぷりとかけてあったが)ためなのか、しょせんはその程度のものなのかわからないが、下着にまで水が通ったのはまいった。家族は寒さのために午後の早い時間にとっくにホテルに引き上げていたが、一人になって身軽になったのをチャンスとばかりに、風の吹く中をずぶ濡れになって寒さに震えながらリフトに乗って山頂近くに上がり、ほとんど人気のない急斜面のゲレンデを転げ落ちるように滑っていた。それでも頭の中では、コブ周りのターンの仕方がどうだったかとか、次はどんなコースをたどって行こうかとか、そんなことしか考えていなかった。ホテルの部屋に引き上げてみたら、下着ばかりでなく、スキーウェアのポケットの中に入れてあった財布のお札も濡れ雑巾のようになっていた。そうなるまで外で滑っているなんて年を考えろと妻に叱られた。
翌日帰宅するのに、車を雪から掘り出す必要があると覚悟はしていた。それだけでなく前日の雨は、車を氷で鎧のように固めてしまっていた。ジーンズをはいて横なぐりのベタベタ雪が降る中で、凍りついたドアと格闘するはめとなり、何とか車を出せる程度に雪を掻いて、車中にもぐり込んでエンジンをかけた頃には、再びずぶ濡れになっていた。湿気の多い雪はよく衣類に貼り付くものだ。そのまま数時間はおもらしをした気分を味わいながら、家路に着くはめになった。次回スキーに行く時には、ジーンズにも防水スプレーをかけることとしよう。
帰宅後に新聞を見たら、ガーラ湯沢でも強風のためゴンドラが運行停止になり、帰りの列車に乗れない人が出たそうである。あおりを受けたスキー客で、天気が悪いのだったら上げるべきではなかったとか、下山を促すような注意は全く聞こえなかったとか、コメントした人がいたそうである。ゴンドラ運行者の問題もあるのかもしれないが、「自己責任」という概念はどこに行ってしまったのだろう?