期待される社会像に向けて抽出した12の「取り組むべきAI技術開発」
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)は2021年6月14日、「人工知能(AI)技術分野における大局的な研究開発のアクションプラン」を公表しました。
本アクションプランでは、人工知能(AI)技術戦略の策定およびプロジェクトの早期開始に向けて、AI技術や密接に関係する技術、さらにはAIを含む新技術について開発の方向性などを大局的に検討・整理しています。
このAIアクションプランでは2016年に公開した「次世代人工知能技術社会実装ビジョン」を参考に学術界・産業界の有識者で構成した「AIアクションプラン策定委員会」で議論を行い、期待される社会像に向けて12の「取り組むべきAI技術開発」を抽出しています。
「次世代人工知能技術社会実装ビジョン」、「人工知能技術戦略」、「科学技術・イノベーション基本計画」や文部科学省による「国・機関が実施している科学技術による将来予測に関する調査」をはじめとする各省庁の将来予測調査から20分野を選定し、また海外のAI開発動向なども参考に、今後10年程度の期間を見据えて、将来期待される社会像とそれに向けた取り組み、さらにAI技術の関わりを整理し、議論しています。
こういった議論を踏まえて、AIアクションプランの主な内容は、AIを積極的に活用すべき分野として、農業などの第一次産業も含めた「ものづくり(生産)」「生活・都市」「モビリティ」「教育」「健康(ウェルビーイング)」などを掲げ、まずは「期待される社会像」を描いた上で「社会像に向けた取り組み」を整理し、そこから期待される社会像に向けて12の「取り組むべきAI技術開発」を抽出しています。
期待される社会像に向けて抽出した12の「取り組むべきAI技術開発」
出典:NEDO 人工知能(AI)技術分野における大局的な研究開発のアクションプラン 2021.6
今後10年は意味理解のAIの開発が求められており、今後10年を見据えて、「部分最適化から全体最適化/人とAIの関係性の多様化」「画像・音声など、個別の認識精度の向上からモダリティを統合した環境認識」といった方向に進んで行くと予測しています。
それぞれの分野のAIの方向感を以下のとおり整理しています。
ものづくり(生産)の分野
材料探索だけでなく製品の製造も含めた「製造プロセス全体を最適化するAI」
教育の分野
学習過程をAIでモデル化することによる「人の学習工程の解明とAIによる学習支援」
生活・都市やモビリティの分野
多様なセンサー情報を統合できるAI技術の開発を目指す「無人搬送車(AGV)などのための環境認識技術の精度向上」
健康(ウェルビーイング)の分野
脈拍や体温、血糖値などといった各種のセンサー情報も含めた「多様な情報から医師に選択肢を提示できるAI」
複数の分野に共通する課題では、「記号推論と深層学習の結合による意味理解のためのAI」や「深層強化学習の新たなアーキテクチャの創出」も、取り組むべきAI技術開発として抽出しています。