米国地上波が4K動画に出ない訳(国内もフォロウか?)、スマートテレビとの離婚のきっかけ話になるのか
■ 試験放送が開始された4K放送
4Kの試験放送が日本(次世代放送推進フォーラム、2014年6月2日開始)を始めました。総務省の主導の下、放送、通信、家電メーカーの全日本連合が協力しています。2020年の東京オリンピックを目指して一挙に4K/8K放送を普及させ、メーカー製品を含む、グローバルな日の丸テレビ全般の競争力を復活させようとしています。
また韓国では地上波放送局は2012年からそれぞれUHD TVフィールドテストを実施しています。またNHKに相当する韓国の地上波放送局KBS(韓国放送公社)が、来年12月末から地上波超高画質(UHD=4K)放送を実施するという計画を出しています。
4K放送への積極姿勢は韓国と日本が明らかに世界をリードしています。
確かに国内地上波各局は次世代放送推進フォーラムの試験放送には協力しています。また2016年をめどに放送を有料にしたり番組にスポンサーを付けたりする方針と日経新聞は伝えています。しかし肝心の国内地上波にはNHK以外に4K動画の本放送を積極的に計画する姿勢を見せている処はありません。(東洋経済記事)
50インチ以上の大きなテレビ(最低価格は10万円まで料金が低下)が売れ始めている程度では、消費者からお金をもらっていない地上波(除くNHK)には関係ないと言うことなのかもしれません。本音は「金食い虫で広告売り上げも伸びない地デジ祭りを再度、4Kで繰り返す気は無い」と言う処でしょう。
■米国地上波も計画なし
国内の地上波が具体的実施計画提示など積極姿勢を見せないで総務省主導の試験放送への付き合い姿勢に終始している一つの理由は、明らかに米国地上波の動向があります。2011年頃のグーグルTV非協力姿勢も、国内各局とも米国地上波の姿勢を真似ていました。(これは何度も聞かされた某社の裏話です)
米国では地上波には4K放送の計画なし、コムキャストやAT&Tが買収したDirecTVなど一部の有料テレビは積極的ですが、サービス自体はインターネットから開始するとしています。一方インターネット勢は積極的でYouTubeは既に対応済み、ネットフリックスは独自番組でエミー賞を獲得した「ハウスオブカーズ」の4K放送を開始しています。またアマゾンも積極的にタイムワーナーや21世紀フォックスと4K動画の提供契約を締結しています。
スタンダード画質からHD動画への移行がゆっくり進む米国では、地デジ化(2009年)の次にHD化がやっと終焉したばかりであり、視聴率と広告売り上げが減少する中、もう一度、4K用カメラへの買い替えや施設の整備などお金がかかって広告売り上げが増えない地デジ化の愚を繰り返す気は無いようです。
この辺りはABC放送がはっきりと明言しています。「視聴者が十分居ない段階で4K放送を始める気は無く、また直ぐに増えるとも思えない」「我々はやっと(地デジの次に)HDへの移行を終わったばかりだ」「バンド帯域が十分あるCATVや衛星テレビが先行して十分な顧客を増やして、K4に見合う値上げをしてくれたら、採算に合うかも知れないのでその時考えます」この発言だと有料テレビの再送信料金の値上げが4K放送開始の前提になっています。
■ 3DTVの後遺症?
米国4K放送にインターネットを除く様々なテレビ放送が熱心でない理由は、NBCなど地上波も巻き込んで大騒ぎになり、結局放送を中止し、多くの販売済み3Dテレビ機能が無駄になったメガネ型の3DTVの失敗の後遺症も引きずっています。
■ 4K放送を期にスマートテレビは地上波と離縁するのか?
一方インターネットの世界は広い意味でのムーアの法則が働いており、ブロードバンドも携帯無線ネットワークも激しい通信キャリアのスマートフォン競争によりどんどん高速化されています。3GからLTEへ、更に数年後にはLTEの次のワイアレスネットワークは1ギガー10ギガに進むと言われています。圧縮技術もどんどん進歩しています。だからコンテンツデリバリーネットワークやネット中立化など大変なもめごとが起きながらも4K放送にも対応できます。ブロードバンドも既に1ギガの時代です。
面白い事に地上波や有料テレビの電波は同じデジタルなのに何故か何時まで経っても高速化しません。これではまるでデジタルの仮面を被ったアナログテレビと申せましょう。(ムーアの法則と無縁な(偽物の)デジタル化はモノのインターネット(IOT)時代には滅びます。)
米国地上波などが4K放送でもたもたする間にスマートテレビはハイブリッドを止めてインターネットのオーバーザトップサービスに特化するかもしれません。そこまで行かなくても地上波は技術革新に確実に取り残されます。少なくとも消費者の眼にはそう映ります。
■Aereoの違反判決と4Kに不熱心な米国地上波
米国は多様な国ですが基本は「市場優先、イノベーション優先」の国です。インターネットに信号を変換して家庭に届けるAereoが最高裁違反判決を受ける一方、勝った側の地上波は非常に保守的、4K化と言うイノベーションから脱落していると先進的な消費者や議員の眼には映っています。恐らく「地上波から電波を取り上げろ」と言った声がますます高まるでしょう。
日本も総務省が尻を叩いて4Kまでは何とかたどり着くでしょうが、こう言った状況では8Kの実現は疑問ですね。
モノのインターネット(IOT)を支えるムーアの法則の外にあるデジタル化は早晩、滅びる可能性があると言うお話でした。
What Is 4K Video?
Panasonic 4K Channel Japan
の4Kビデオで放送するネットフリックスのハウスオブカーズ
<出所:http://www.webpronews.com>
★★地上波は対応予定なし、4K放送普及の難題 推進する総務省と放送局の間には温度差
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