米国地上波の運命、スマートテレビの運命を左右するAereo対地上波最高裁判決は一週間以内

» 2014/06/24

■ Aereo対地上波最高裁判決とは

　米国ではロケフリとソニーのビデオレコーダー・ベータマックス以来とされる著作権違反に関する全米大注目のAereo対地上波最高裁判決ですが、一週間以内に結論が出ます。

Aereoは地上波をアンテナで受け、それをインターネット信号（IP信号）に変換して各家庭に届けています。月額８ドルです。ABC,CBS,FOX,NBCなど地上波各社は著作権違反と訴えていました。有料テレビ並みに再送信料を支払えと言う訳です。視聴率と広告売り上げが漸減の米国地上波にとっては有料テレビから稼ぐ再送信料は手放せません。仮に裁判でAereoが勝つとCATV各社は必ず地上波に再送信料の「値下げ要求」をして来ます。現にタイムワーナーケーブルとＣＢＳの契約更新時にそういう議論が出ています。

■ Aereoのサービス内容

テレビはデジタル化されたと言っても現在はそれをスマートフォンやタブレット、スマートウオッチ、パソコンなどスマート機器で受ける事は出来ません。チューナーがついたデジタルテレビかＣＡＴＶなど値段が高い有料テレビを視聴しなくてはならない訳です。

「何という時代遅れ！！」「（観音菩薩として）世の中を正さねばらなぬ」とAereo創設者のカンノンジャさんは考えました。「こんなの単なる標準化の問題じゃないか・・」と呟いたかどうかは知りませんが（＾＾）

既に前例があり、米国のケーブルビジョンはクラウド録画（クラウド版ロケフリサービス）を始め、地上波との裁判で勝っています。その結果、ケーブルビジョンの契約者はインターネットに繋がる様々なスマート機器から見逃がし視聴が可能になっています。

それと類似のこと（地上波信号のＩＰ変換、ライブと録画サービス）をAereoは2012年2月、ニューヨークでサービスを開始し、またたく間にデンバーやボストンなど幅広くカバーエリアを広げました。但し、相変わらず地上波には1ドルも支払っていません。

Aereoにより信号転換された番組視聴は基本ブラウザーであり、iPhone, iPad, iPod TouchなどIOS機器の場合にはブラウザーへのショートカットで視聴できます。アップルテレビはエアープレイ、ロクはアプリ経由視聴です。面白い事にクロームキャストはアプリが提供されています。

■ Aereoが勝てばスマートテレビへの流れが一挙に進む

Aereoの勝利を予測する専門家は何人かいます。一方負けると言う見方もあります。いずれにしても5対４といったレベルの接戦が予測されています。

注目は地上波各社が「Aereoが勝てば地上波サービスを止め、有料テレビに脱皮する」と脅かしている点です。そう簡単に出来る訳は無いのですが、「Aereoに無料でインターネットサービスさせる位なら自分たちで実施して、少しでも稼ぐ」と言う方向に行きかねません。既にＡＢＣ放送などは地方局も巻き込んで直接、インターネット放送の提供を開始しています。（但し、現在は有料テレビ契約をしている視聴者が対象ですが）

そうなればアップルやソニー、デイッシュネトワークなどが計画中のオーバーザトップテレビサービス（ライブ放送版など）に地上波はどんどん番組を出すことになります。（無論、有料ですが、全体として積極姿勢となり、番組提供値段が下がります）

一部の稼げないローカル局は本当に地上波を止め、ＣＡＴＶとインターネットテレビに衣替えをするかもしれません。現在の電波は通信キャリアに販売することになるでしょう。

既にＷＷＥ（米国プロレス協会）はインターネットテレビでの中継を開始しており、米国大リーグ野球も参加しています。

もし負ければ、米国のスマートテレビへの流れ、オーバーザトップテレビサービスは大きく水を差されることになります。ネットフリックス、アマゾンプライム、Ｈｕｌｕ止まりとなります。それはつまらないですね。

■ 未来の地上波の姿？

筆者は一部の地上波は電波利用を止めるかもしれませんが、大きくは各地上波はＬＴＥブロードキャスティングのような方向に向かうと思っています。日本のmmbiさんがNOTTVをサービスされていますが、スマートフォンに特別なチューナーチップが必要です。ＬＴＥブロードキャスティングになれば通常のスマートフォンなどで視聴できますので、地上波にとってはAereo問題が解決するだけでは無く、対象スマート機器を一挙にスマートフォンやタブレットを含むウエアラブル機器全般やパソコンなどにまで拡大できます。また余ったスペクトラムは通信キャリアに販売される方向でしょう。

さてどうなりますか。裁判の行方に注目です。