アップル最大の悩みはiTunes音楽販売の深刻な減少、技術革新に敗北するのか？
アップルの悩みは外部から言われているような技術革新体質＝商品イノベーション（ハードウエア・スマート機器）の喪失ではありません。新商品は確実に6月2日のWWDCにおいて登場するでしょう。しかしアップルの悩みはもっと本質的な「サービス支配論理」そのものの創造的破壊にあります。
■ 回線スピードがムーアの法則で改善した
アップルの音楽スマート機器（スマートヘッドフォン）と音楽ストリーミング・サービスのビーツ社買収交渉が「行きつ戻りつ」している様が米国で報道されています。そこで注目されているのはインターネット音楽の構造変化です。アップルの故ジョブズ氏がアイポッドを対象に音楽ダウンロード販売を始めた頃は、まだ回線スピードが遅く、また対象となるスマート機器もパソコンとマック、アイポッドだけでした。しかし2014年の現在はLTEなどの技術により回線のスピードは速く、また対象スマート機器の数もウエアラブルの台頭とどんどん増えています。その結果、二年くらい前からスポッティファイやパンドラが伸び始めています。
そしてストリーミングサービス（月次課金）が主流になり始め、ストリーミングサービスから気に入った曲を買ってロッカーサービスに保管し、何時でも何処でも聞ける形の「サービス支配論理」の方向に向かっていました。しかし更に深刻な事態がアップルを待っていました。
■ 音楽ダウンロード販売が減り始めた
音楽のダウンロード販売は、音楽業界にとっては既存のCDビジネスを破壊しました。今また同じことが音楽ストリーミング・サービスの台頭で起こり始めています。音楽ダウンロード販売の深刻な減少です。2012年から2013年にかけて音楽業界のダウンロードビジネスは年間で約5％減少、また2014年第一四半期には前年比13.3％減少しました。ダウンロードビジネスにおいてアップルのiTunesは６３％の市場シェアを持っています。これが減り始めたとなればアップルへの影響は音楽ダウンロード販売だけに留まりません。アップルの強みは、販売した音楽コンテンツをロッカーサービスに格納し、何時でもどこでもアップルの様々な機器から楽しめる点です。アップルから買った音楽を聞きたければアップルのデバイスを買わざるを得なくなります。これでスマートデバイスの囲い込みを成功させてきました。
音楽ダウンロード販売が減り始めたと言う事は、アップルのスマート機器ビジネスの縮小に跳ね返ります。また音楽業界と苦労して築き上げて来た信頼関係が壊れるかもしれません。音楽業界はストリーミングへの移行で「また売り上げが減る」「アップルはそれを勧めるのか？」と戦々恐々です。また音楽のダウンロードビジネスの縮小は映画やドラマの映像ビジネスも同様の縮小の波が時差を置いて押し寄せて来ます。
そうなればアップルのビジネスモデル（サービス支配論理によるハードウエア販売）が創造的に破壊されます。だから音楽のダウンロード販売の減少はアップルには大きなピンチと言う訳です。同じことはアマゾンやグーグルにも当てはまります。しかしアップルは63％の市場シェアを持っており、一番影響されます。
■ 音楽ビジネスの防衛とビーツ社の買収
アップルが昨年始めた広告付きの音楽ストリーミングサービスは冴えないようです。一方ビーツの有料音楽ストリーミングサービスは大人気であり、そこからiTunesへのアクセスが相当あります。アップルは現在、8億万枚のクレジットカードを持っています。そしてこの生活者がこれまでアイフォンなどスマート機器を延々と買い続けて来た人々です。2014年4月に立ち上げたビーツの有料音楽ストリーミングサービス用インアップパーチェス（音楽購買）は大人気であり、またたく間にアップストアでのフリーアプリのダウンロード数がトップに躍り出ました。ビーツを買収により、しっかり取り込まないと下手をすればアップルの音楽顧客は皆ビーツに持って行かれます。またグーグルが買収するかもしれません。そこで買収交渉が始まりました。そして当面アップルはスマートテレビ（アップルTVの脱玩具版）をターゲットとしているのでしょう。ビーツが作る音楽ビデオを流す訳ですね。
スマート革命（モノのインターネット）の技術革新がアップルの古い殻＝初期のサービス支配論理を打ち砕き始めています。当然、アップルはビーツ買収でソニーミュージックやソニーピクチャーズになることまで構想しているでしょう。そして再度、様々なスマート機器を販売し、顧客を囲い込む事を考えていると思われます。
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再び輝けるかアップルのサービス支配論理！！？
＜出所：http://jonmaples.com ＞
＜出所：テッククランチ＞
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