スクエア・ウオレットの撤退はauウオレットには怪我の光明(功名)か!!?
ツイッターを開発し、決済のスクエアを開発したジャック・ドーシーさんは天才発明家であり、米国ではスマート革命(モノのインターネット)をリードした故スティーブ・ジョブズ氏の後継者の一人と看做されていました。
彼が創設したスクエアはスマートフォン・ウオレット(お財布携帯)の極め付けの仕組みであり、2015年には上場と看做されていました。しかし2013年には赤字が1億ドルを越え、ビサカードやペイパルを含む様々な身売りの試みも失敗し、遂にウオレットアプリから撤退です。(誰も興味を示しませんでした)
代りに事前注文をして店舗に商品を受け取るアプリを開発しています。
しかしグーグル・ウオレットを始め、ウオレットアプリブームの火付け役となったスクエアのお財布携帯(Wallet payments app)からの撤退は、米国では大きな波紋を呼んでいます。
■ 大量のカード顧客も決済も抱えていないお財布携帯は非現実的
スクエアのお財布携帯(スクエア・ウオレット)失敗の原因は、大量のカード顧客も決済も抱えていないお財布携帯は非現実的と言う指摘に尽きています。
スクエアはスマートフォンにドングルを差し込んで屋台でもクレジットカードを使えるようにしました。その上売り上げの2.75%の手数料の内、2.2%をクレジットカード会社に持って行かれるものであり、得をしたのはカード会社でした。0.55%の手数料では、収益面からは明らかに焼け石に水です。これは大変な勢いで普及しましたがペイパルなどのライバルが直ぐ参入しました。
そしてアイパッドと連動したスクエアのスマートフォンアプリは思いのほか流行りませんでした。その理由は多くの生活者が既にクレジットカードを持っており、敢えてスクエアを使う魅力を見いだせなかったからです。またスターバックスと組んだスクエアは、スターバックスに2%の割引きを求められており、スタバの割引券の取り扱いなど複雑な仕組みの為、上手く行かず「デモセンター」になりえませんでした。
同様にライバルのLevelUpもClinkleもLoopも生活者は興味を示さない為、普及せず赤字です。結局、大量の取引と決済の流れと大量の顧客を抱えたeBayを後ろ盾に持つペイパルのようなアプローチで長い時間をかけて普及させるしか方法は無いようです。
■ 日本の電子書籍、電子新聞、スマフォタクシーと類似の失敗
生活者がスクエアのお財布携帯よりクレジットカードを選んだのと類似の例には、遠くは国内の電子書籍や電子新聞、近くは国内のスマートフォンで呼ぶタクシーの例があります。生活者には、紙版(アナログ版)とスマート版(デジタル版)の値段が殆ど同じか追加料金が必要となれば、一部のギークを除いて殆ど同じ紙面のデジタル版には大きな魅力を感じません。だからブームによる大移動が起こりません。その点、ブームを起こした米国アマゾンは良く判っており、出版社と大喧嘩しても電子書籍の値段を6割位に抑えています。多少サービスや技術が優れていると言う程度では生活者は動きません。(昔、文法面から明らかに優れたパスカル言語よりもフォートランが使われ続けたのもフォートラン言語を使い慣れたコミュニティの支持が揺るがなかったからです。今で言えばルビーとジャワ言語の技術の差とコミュニティの支持の差でしょうか)
■ Auウオレットは怪我の光明(功名)で成功するか
先日発表されたauウオレット(KDDI)の発表を見て「お財布携帯をカードで実現する」と言う発想には正直、ショックを受けました。これはIPhone6がNFCの搭載回避を見越した上でのマスターカードとの提携戦略だと思われます。一見大きな後退(怪我)に見えますが、スクエアのお財布携帯失敗、ウオレットアプリから撤退を考えれば、逆に「それよりは普及するかも」(功名=光明)しれません。
auウオレットの特長は「お金が預かり金や口座、クレジットカード」にあり、カードの中に無い(商品券類似のストアードバリュー方式では無い)など物凄く理解や説明が難しいのですが、筆者はスクエアの失敗との関係でじっくり眺めてみようと思っています。
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<出所:ワイアード>
<出所:http://programming.oreilly.com>
<出所:スクエア>
<出所:au>
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