<出所:Readwriteweb>
スマート革命とサーバー、自ら誕生に手を貸したクラウドサービスに食われるIBMの没落が始まったのか!!?
<序文>
ハードウエアの価値からサービスの価値重視への変化(モノ支配論理からサービス支配論理)を促進するスマート革命の進展の中で世界のIBMが苦しみ始めています。2005年以来、ずっと継続してきたウオール街の売り上げと収益予想にたがわない決算(三十一四半期連続達成)を2013年第一四半期には初めて下回りました。
ウオールストリートジャーナル紙などが、「これは構造上の問題なのか」と厳しい記事を載せています。スマータープラネットなどのサービスの伸びが他の部門の売上減を補えない事態が始まっています。
そもそもクラウドコンピューティングが世界に注目されたのはグーグルが提唱し、IBMがそれに大賛同した為、世界的に産業の方向が定まったと言う歴史が有ります。IBMは自らの生み出した新しい業界ビジネスによって衰退を始めたかに見えます。
ハードウエアの売り上げを30年前から恐竜と呼ばれて久しいメインフレームに頼り、サーバー部門の一部(パソコンサーバー)を中国のレノボに売却すると噂される伝統企業に明日はあるのでしょうか?既に2005年パソコンビジネスを中国のレノボに売却したIBMですが、今度はサーバービジネスが揺らぎ始めました。
★★ IBM Takes a Beating
★★I.B.M., Missing Estimates, Falters as Slow Hardware Sales Hurt Revenue and Profits
★★ Lenovo Considers Taking Over IBM X86 Server Business
★★レノボ、IBMのサーバー事業買収に成功する可能性も
★★ Can Servers Save PC Manufacturers? Sadly, No
★★ソフトバンクテレコムとVCEが戦略的提携
パソコンに続き伝統あるサーバービジネスが大きく揺らぎ始めた!!
<IBMの2013年第一四半期決算>
あの100年の歴史の荒波を耐え抜き、メインフレームの没落とオープン化の波を跳ね返して来た優良企業のIBMがスマート革命と連動したクラウドコンピューティングの進展の中、5%の売り上げの減少と1%の利益の減少に苦しんでいます。過去最大の株価(8%)の下げに見舞われています。 ソフト販売が横ばい、サービスが4%減少、ハードウエアも17%程度減少です。ハードウエアで稼いでいるのは恐竜のメインフレーム(Zサーバー系)だそうですから。
<ホワイトボックスばかりが売れる時代>
上記のRreadwritewebの記事を見れば明らかですが、Hewlett-Packard, Dell, IBM, FujitsuやCiscoが販売するブランドサーバーに対してホワイトボックスと称する無印良品サーバー(部品を集めて組み立てる誰にでも作れるサーバー)の販売が伸びています。例えばHPは2012年第四四半期に663,598台を販売しました。一方クラウドサービスを展開するアマゾンなどの企業が購買するホワイトボックスの販売台数は合計で879,711台と言われています。IBMのようなブランドサーバー企業にとっては既にHP一社分を上回るライバル=ホワイトボックス販売が登場しています。買い手はクラウドサービスの提供企業や自らプライベートクラウドを立ち上げる一般企業です。
HPやデル、エイスースなどはパソコン市場がタブレットに食われて販売が下がり始めている現状をサーバービジネスで補足しようとしていますが、ホワイトボックスに阻止されています。
またグーグルやフェースブックは、自社のプライベートクラウドを作るにあたってホワイトボックスに自社設計を施して、安いプライベート仕様のサーバーを調達し始めています。そしてフェースブックのオープン・コンピート・プロジェクトに代表されるようにオープン化を志向し、それを一般企業にまで広めようとしています。
こうして次第にIBMやオラクル、HPの得意とする値の張るブランドサーバービジネスは衰退に向かっています。そこでIBMがパソコン系サーバービジネスをレノボに売るのではと言う記事が出ていると考えられます。
日本でもソフトバンクテレコムはVCEが提供する統合型プラットフォーム「VCE™ Vblock™ System」(以下「Vblock™ System」)の提供を2012年12月から開始しています。これも一種のホワイトボックスと考えられます。(上記記事参照)
<売れないブランドソフトウエア、一品生産のアプリ、アウトソーシングサービス>
またIBMなどの悲哀はブランドハードウエア販売の落ち込みばかりではありません。ソフトウエア販売が伸びていないようにライセンスをモノとして納めるブランドソフトウエア、一品生産のモノ作りであるシステム開発(ITジェネコン)や従来からある、値段の高いアウトソーシングサービスが安い、速い、俊敏なクラウドサービス型のサービス支配論理の前に衰退し始めています。
<スマータープラネット事業の活躍と音楽業界の比喩>
IBMもモノ支配論理からサービス支配論理への転換は良く知っており、チェスのチャンピオンを下したワトソンのサービスのようなスマータープラネットのサービスに注力して来ました。しかしスマータープラネット事業の売り上げは、落ち込むハードウエア事業やサービス売り上げを補えないと言う構造的な状況が出現しています。これは丁度、米国音楽業界が自ら育てたアップルのネットによる曲単位販売の伸びが、その為生じたCDの売り上げ減を補えないで業界が半分に縮小したと言う構造問題に良く似ています。
パソコン業界の売り上げが次第に減少を始める中、名門のサーバー業界も構造変化が始まっています。
クラウドコンピューティングが注目された数年前から、名門のサーバー企業の富士通などでは「社内で大変な時代が来る」と言った議論が盛んでした。サーバー業界の構造変化はいよいよこれからが本番のようです。