Microsoft はフロントエンドとしての Cortana に拘るべきなのか?
「Microsoft なう」というツイッターアカウントをフォローしているのですが、こんなニュースがツイートされてきました。
Microsoft にとって、あまりよろしくない記事なのにツイートしてくると言うのはなかなかですね。自動化しているのかもしれませんが。
記事の中で、c|net はなかなか手厳しいです。
Microsoftの「Cortana」が、「Windows」搭載PCで競争に勝てないとすれば、他にどこで勝てるというのか。
Microsoft の牙城であるはずの Windows10 にまで Alexa が搭載されるようになって、Cortana が危機だ、という論調です。
しかし、本当にそうなのかなあ、と思います。音声認識を使ったパーソナルアシスタントのためのフロントエンドとしては、いまのところ Alexa のほうがスキルの量からしても利便性は高いでしょうし、それなら Alexa 使って貰う方がユーザーにとってのメリットは大きいでしょう。Microsoft も以前ほどは自社技術に拘らなくなっていると思います。
PC に話しかけるか?
そもそも、PC に向かって「話しかける」というのは、かなりハードルが高いと思うんですが、私が古すぎるんでしょうか? それどころか、人前だとスマホにだって話しかけないですよね。Amazon の Echo が成功しているのは、それが家の中にあるから(話しかけやすい)ということなんじゃないかと思います。
そういう意味では、スマホを持たない(というか、成功できなかった) Microsoft は最初からハンデがあります。音声アシスタントで先行したのは Apple ですが、それも iPhone というプラットフォームを持っていたからですよね。音声と電話ですから、相性は良いです。Google もそうですね。Amazon はスマホへの進出が失敗しましたが、その代わりに Echo がヒットし、フロントエンドを手に入れました。スマートスピーカーには各社が参入していますが、Microsoft も昨年末にスマートスピーカーを発表しています。
ただ、スマートスピーカーという分野で Microsoft が(というか Amazon 以外のベンダーが)成功するのはなかなか難しくなってきていると思います。もちろん、Microsoft も諦めたわけでは無いでしょうから、いろいろと活動はしています。IoT になったら何かチャンスはあるかも知れません。
Microsoft はフロントエンドに拘るべきでは無い
Microsoft は、フロントエンドとしての Cortana にはあまり拘らなくても良いのではないかと思います。
パーソナルアシスタントは、音声認識と自然言語解析、その後の最適な回答の検索の組み合わせで、各段階で AI の品質が重要になります。しかし、(少なくとも英語の)音声認識についてはかなり研究が進んでいて、各社の精度の差はだいぶ無くなってきています。これから大事なのはユーザーに直接相対するフロントエンドでは無く、その後段階をブラッシュアップすることだ、という考えも成り立ちます。出遅れて勝ち目の薄い分野は潔く捨てて、本当に大事なところで頑張ることで、その先が見えてくるのでは無いでしょうか。少し前ですが、Amazon、Google、Microsoft の音声アシスタントを比較した記事がありました。
ユーザーからの質問に対してどれだけ正しい答えを出せるか、という「賢さ」のテストでは、正答率は Google、Microsoft、Amazon の順だったということです。Amazon はスマートスピーカーでは先行していますが、AI 技術という面ではまだ課題があることがわかります。恐らくそのためと思いますが、Amazon と Microsoft は昨年提携を発表しています。相変わらず辛口のWiredは
と書いていますが、この提携には大きな意味があると思います。記事にあるような使い勝手上の問題は、その気になればすぐにでも解消できるでしょう。(まあ、「その気」になるかどうかが問題になる場合も多いのですが)しかし、Microsoft がバックエンドに回ることで、Amazon のソリューションは強化され、Google に対抗できる大きな力となります。
以前の Microsoft は、他社の製品やサービスを何でも自社で取込んでいくという「何でも欲しがる」 病がありましたが、今は時代も違いますし、Microsoft が「最強」というわけでもありません。ナデラ CEO なら、前例に縛られない、柔軟な発想ができるのではないかと思います。フロントエンドという「名」は Amazon に渡しても、背後の AI の強化という「実」をとるという戦略がとれれば、リソースと時間が有効に活用でき、Microsoft のポジションはかなり良い方向になるのではないでしょうか。
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