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Newsweek、過去記事を Amazon の Kindle で販売

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過去に掲載した記事という資産を活かしたいが、有料データベースサービスとの共食いは避けたい。そんな思いから新しいサービスの開発ができないでいる新聞社・出版社にとっては、これは注目の動きになるかもしれません:

Campaign Articles From Newsweek Become E-Books for Amazon Kindle (New York Times)

Newsweek 誌が Amazon の電子ブック端末&サービス"Kindle"と提携し、特定のテーマで過去記事を編集した電子ブック(今回は米大統領選の候補者4名に焦点を当てたもの)を販売する、というニュース。ちなみに価格は9.99ドル。Amazon は同様の取り組みを、他の出版社とも行っていきたい考えのようです。

情報に対価を払ってもらうということが、ますます難しい時代になりつつあることはご存知の通り。確かに日本ではまだ(有料・紙媒体の)新聞/雑誌が重要な情報源ですが、ネット上で無料で手に入れられる情報の量は確実に増加しており、それに伴ってクオリティも向上しつつあります。調べ方とコツさえ知っていれば、そして膨大な情報をより分ける時間さえあれば、いまでもある程度の情報を無料で入手することが可能です。

しかしよく指摘されることですが、この「調べ方を知っている」「調査に十分な時間をかけられる」というポイントが曲者だったりするわけですね。そりゃキーワードを入れて検索すれば、関連する記事は山のように手に入る。しかしその山の中から自分の欲しい情報を見つけられるか、また断片的な記事を組み合わせて問題の全体像を把握できるか、そして悠長にあれこれ思案している時間があるか、は別の話。それを解決してくれるなら、対価を払ってもいいと考える人は少なくないでしょう。

過去記事の組み合わせに過ぎないのだけれど、あるテーマについて非常に理解しやすい構成になっており、1本1本の記事のクオリティも高い。そんな電子ブックが必要な時、必要な場所で即座にダウンロード可能になっているとしたら、すぐにクリックしてしまうかもしれません。もちろん全体としての完成度の高さ、そして値頃感(1,000円は妥当?)という問題は残りますが、前述のように「情報を効率的に得ることに対価を払っても良い」と考える人々にアピールできる可能性は高いと思います。また Amazon というチャネルを活用する方法(例えば「オバマ」で検索すると、関連本に加えて上記のような電子ブックも結果に表示されるわけですね)は、カニバリゼーションよりも、新たな購読者層を得ることにつながるのではないでしょうか。

というわけで、そもそも日本ではまだ Kindle は始まっていませんが、日本でも各新聞社/雑誌社と Amazon.co.jp が提携する、なんて話が始まれば面白いのにと期待してしまった次第。「そもそもクオリティの高い記事を日本のマスメディアは書いているの?」「過去記事の中から有益なものを探し出して、再構成する能力はどれくらいあるの?」という問題も確かにありますが、過去記事を有料データベースの中で腐らせておくぐらいなら、新しい活用法にチャレンジして欲しいと思います。

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