敵を知り、己を知れば
「敵を知り、己を知れば、百戦殆からず」。セキュリティに関する記事を読んで、有名な格言を思いだしてしまいました:
■ 新種の若手社員はITセキュリティの敵? (TechTarget ジャパン)
ミレニアル世代(28歳以下の従業員と定義される)はそれより年上の層に比べ、Web 2.0アプリケーションを利用する頻度がはるかに高い。例えば調査によると、ミレニアル世代のうち職場でWebベースの私用メールを使っているのは75%(それ以外の層は54%)、FacebookかMySpaceに定期的にアクセスしているのは66%(同13%)、個人資産アプリケーションにアクセスしているのは51%(同27%)だった。
ITmedia 読者層の方々にしてみれば、「何を驚くことがあるの?」という結果でしょう。何らかの形でウェブアプリケーション/新型機器を仕事に活用する、というのはごく普通なことになりつつあります。ただし注意しなければならないのは、
自分が使いたいと思うアプリケーションやデバイスや技術は、出どころや会社のITポリシーにかかわらず使う権利があると思うかとの問いに「そう思う」と答えたのは、ミレニアル世代が69%、それ以外の層は31%だった。実際、職場のコンピュータに私用ソフトをダウンロードしたことがあるのは、ミレニアル世代が75%、それ以外の層は25%。調査対象の組織のうち、85%がポリシーでそれを禁じているにもかかわらずだ。ミレニアル世代は、私物機器への社用データ保存も定期的に行っている。39%はPCに、38%は私物のUSBメモリに、20%は私物のHDDに、16%は私物のスマートフォンに保存していた。
という部分。セキュリティポリシーがなんだ、仕事で必要だから使うまで――という意識を持つ若者が(米国の調査ですが)増えているようです。「決して自分はそんなことはしないが」という前提つきであれば、心情的には理解できる、と感じる方も多いのではないでしょうか。
もちろんセキュリティは企業にとって最重要の課題ですし、従業員にポリシーを徹底させる必要があるというのは当然の話です。しかし、なぜポリシーを無視してもウェブアプリケーションや新型ガジェットを使おうとする若者がいるのか。そこには彼らなりのロジックがあるはずです。「ゆとり教育のせいで若者の倫理観が低下しているからだ」というご意見の方でなければ、頭ごなしに「ルールだから守れ!」と押さえつけるのではなく、そのロジックを理解してやる方が建設的な対応でしょう。
新旧の技術の差は、「鉛筆でメモを取るか、それともシャーペンを使うか」といった程度の話ではありません。ご存知の通り、新しく登場してきたツール達は発想からして異なり、新しい仕事の仕方を提案するものである場合が多々あります。であれば、若者が新しいツールに魅力を感じる理由を調べることで、いち早く新しい働き方の可能性に気づくことにつながるでしょう。また表面的な現象を取り締まるのではなく、「なぜ使うか」という深い理由を探ることで、将来登場する未知のツールにも対処しやすくなるはずです。いっそのこと、若者達にアンテナ役になってもらい、セキュリティ上リスクになりそうな新技術/ツールを探ってもらうこともできるかもしれません。
なぜ若者は新しい技術を使いたがるのか。なぜ自分はその技術を使わないのか/禁止しようとするのか。確かに「ルールはルール」で一律に規制してしまえばラクですが、手間をかけても深い理由に目を向けることで、新しい価値を手にすることができると思います。ポリシーを破ろうとする人は、決して首尾一貫した「敵」ではなく、接し方次第で味方にもアドバイザーにもできるのではないでしょうか。