「枕銀行」の作り方
いきなり何だそりゃ、なタイトルですが、実はローマにある4ツ星ホテル"Hotel Ariston"が実施しているサービスの名前です。雑誌『PEN』の最新号(2007年11月1日号)で紹介されていました。
何でも「枕銀行(バンカ・デル・クシーノ)」とは、宿泊者が枕の種類を選択できる、というサービス。整体枕や羊毛枕など8種類から、体調や気分に合わせて選ぶことができるそうです。面白いのはその開発(?)秘話。PENの記事によれば、
もともと常連客から「もっと低い枕はないの?」「羽毛アレルギーなので、羊毛にしてほしい」といったリクエストが挙がるたび、要望に応える枕を購入しているうちにストックが充実。せっかくだからと宿泊客に提供することになったのだ。
とのこと。あわてて枕を買いに行く従業員の姿を想像すると笑えますが、言ってみれば、お客様に振り回されているうちに新しいサービスが出来上がっていたということですね。
仮に宿泊客から「もっと低い枕はないの?」と尋ねられた時、Hotel Ariston が「ねーよ」……とは言わないまでも「申し訳ございません、枕はお部屋にあるものだけになります」で一蹴していたら、枕銀行は生まれなかったでしょう。逆に常連客という「文句を言いやすい存在」からのリクエストを待っているのではなく、初めてのお客様でも文句を言いやすい仕掛けや雰囲気が用意してあったら、もっと早くこのようなサービスを思いついていたかもしれません。「お客様の要望には何でも応えるという姿勢」「お客様の要望が出やすくなるような工夫」の2つが大切、ということですね。
ちょうどタイミング良く、先日こんなニュースもありました:
■ オータニ、“眠り”を追求する宿泊プラン、個々人にあわせた空間を設定 (トラベルビジョン)
ホテルニューオータニが2006年10月から実施中のサービス「オーダーメード・コンフォート・ステイ」の継続を決めたというニュース。どんなサービスかというと、
枕の素材や高低やベッド・マットレスの硬さ、室内の香りなどについて質問する「眠りのカルテ」をインターネット予約ページに設け、専用の「タワーヒーリングフロアー『快眠ルーム』」を、個々の宿泊客に合わせて快適な環境をカスタマイズするのが特徴だ。
とのことです。ベッドや枕のカスタマイズに加えて、室内の香りまでリクエストに応じてくれるのですね。また対面ではなくネットでリクエストできるという点で、お客様の本音が引き出しやすいという効果もあるのではないかと思います。あ~、こんなネタを書いていたら、なんだか快適なベッドで再び眠りにつきたい気分になってきました……。