江戸時代の「2.0」?
雑誌「BRUTUS」の9月15日号は水族館特集です。かわいいアザラシの写真が表紙で、思わず購入(何を隠そう、昔から水族館が大好きだったりします)。そこで今日は水族館の話・・・と思ったのですが、それよりも一番最後のページに載っていた「こんぴら参り」に関する話に興味を引かれました。
その記事(p.140の「みやげもん」)によると、江戸時代、四国の「こんぴらさん(金刀比羅宮)」にお参りすることが庶民の憧れとなり、遠路はるばる赴く人が後を絶たなかったとのこと。しかし現代のような交通機関が無かった時代で、当然ながら行きたくても行けない人がいたのだとか。そうした人たちはどうしたかというと、代理の人がお参りしてくれる「代参人」というシステムを利用したそうなのですが、中には飼い犬に初穂料と食費を持たせて代参させる場合まであったそうです。
そうした「代参犬」は「こんぴら狗(こんぴらいぬ)」と呼ばれ、こんぴらさんを目指す人々は彼らの世話をすることが恒例になっていたとのこと。調べてみると、他にも「船員たちが初穂を酒樽に入れ、『金毘羅大権現』の幟(のぼり)を立てて海に流し、それを見つけた沿岸の人たちがその樽を持ってこんぴらさんへ代参するという『こんぴら流し樽』という風習まであったのだとか(こちらのページから引用させていただきました)。どうやらこんぴら参りには、見知らぬ人(というより「見たこともない人」!)でも助け合い、共通の目的を達成しようという精神が息づいていたようです。
WEB2.0の時代になり、見知らぬ人と協力し合うということが普通に行われるようになりました。表面的な事象だけを見ていると、いかにもWEBアプリケーションがそんな協力・参加といったものを促しているように感じられます。しかし実際には、「こんぴら狗」「こんぴら流し樽」が示しているように、人々は協力が必要とされれば、そこにシステムを作ることができる生き物なのかもしれません。その意味で、旅人の善意が可能にする「こんぴら狗」というシステムは、江戸時代の「2.0」であると勝手に認定してしまいます。
現在はちょっとお休みがあれば、日本全国どこへでも簡単に出かけていけるようになりました。しかしその「ちょっとのお休み」を取るのが難しかったりするんですよね。代参人のようなシステムをネットで実現したら、意外に利用する人は多いのではないでしょうか(あるいはこんぴら参りする人・したい人や、彼らのための宿や旅行ガイドを提供する人々で構成された「こんぴらSNS」とか)。さすがに愛犬を旅に出すのは問題ですから、「こんぴら狗2.0」は無理かもしれませんが・・・。