「機内でネット」は時期尚早?
最近のニュースですが、ボーイング社が機内ネットサービス"Connexion by Boeing"を終了すると発表した、という報道がありました(ITmedia 「Boeing、機内ネットサービスを終了」)。同社ではその理由を次のように語っています:
「6年間、時間とリソースと技術を投じてきたが、残念ながらこのサービスの市場は期待していたほど実現しなかった」とBoeingの会長兼社長兼CEOジム・マクナーニー氏は語っている。(上記ITmedia記事より抜粋)
とのことですが、「機内でネット」にはそれほど需要がなかったのでしょうか。
残念ながら、僕は「機内でネット」を体験したことはありません。なのでまったくの想像で失礼しますが、恐らく多くの人々にとって、機内でネットにつながるということは「できたら嬉しい」というレベルだったのではないでしょうか。「さあネットを使えるようにしましたよ」というだけでは、あの狭い(そして夜になれば薄暗い)機内でノートPCを広げて、ネットに接続し、ぶらぶらとネットサーフィンする・・・気にはならず、機内映画で時間つぶしする方を選ぶ人が多かったのではと想像します。つまりそれがあるからといって、特定の航空会社を選ぶという差別化の要因にはならなかったのでしょう(もちろん数時間でもニュースやメールを見逃したくない、というビジネスマンにとっては貴重なサービスですが)。
しかし一方で、飛行機での移動が退屈だということも事実です。僕は飛行機の狭い座席(当然エコノミーしか使えません!)ではどうしても寝れないタイプなので、特に機内で手持ちぶさたになってしまいます。そういった人々のために、機内映画や機内音楽・ビデオゲームなどのサービスがあるわけですが、こんなユニークなサービスも登場したのだとか:
■ 機内でお答えします -- 英ヴァージン 退屈しのぎに新サービス(日経産業新聞 2006年8月23日 第4面)
ヴァージン・アトランティック航空が近く始めるという新サービスについて。乗客が座席のヘッドレストに付いているスクリーンから質問を入力すると、地上に控えている担当者(ホームショアリングで調達された人々)が数分のうちに回答を返すというもの。例えば「ニューヨークのお薦めバーは?」「空はなぜ青いの?」といった質問に受け付けてくれるそうです。ちなみにサービスの運用を請け負っているのは、イギリスのイシュービッツという会社で、同様のサービスのために約500人のリサーチャーを24時間体制で待機させているそうです。
今回のヴァージン航空の新サービスは、機上でもネットが使えるという環境を有効活用したものです。もし同様のサービスが他にも登場すれば、Connexion のような仕組みに対する需要は十分に増加するのではないでしょうか。目的地のエンターテイメント情報を検索し、その場でチケット予約ができたり(しかも割引価格で)したら「ちょっと使ってみよう」という気になる人は多いに違いありません。また各種メディアを差し込めるようになっていれば、帰りの機内で画像データをアップロード/帰宅するとプリントアウトされた写真が配達されている、などといったサービスも考えられるかもしれません。
そう考えると、ボーイングが機内ネットサービスを終了してしまうというのはちょっと残念です。どこかサービスを提供する会社と提携し、「機内でネット」に対する需要を喚起するという施策が取れなかったのでしょうか。もしヴァージンの「人力退屈しのぎサービス」が人気を集めれば、同様に機上の人々をターゲットにしたサービスが増えて、晴れて Connexion 復活!となってくれるかもしれません。