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決して最先端ではない、けれど日常生活で人びとの役に立っているIT技術を探していきます。

ITで島おこし

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「町おこし」「村おこし」というと、特産品を作ったり、映画やテレビドラマに取り上げてもらったりといったイメージがあります。僕の出身地である東京都青梅市は、最近「レトロ映画看板のある街」というコンセプトを掲げていて、JR青梅駅の周辺には何枚か懐かしい(といっても僕らより前の世代の映画ですが)映画の看板が展示されています。しかし地域の特色、しかも人気を呼ぶものを打ち出すというのはなかなか難しく、即効性のある施策を考えるというのは大変な作業です。

そんな中、「ITで島おこし」をしようという島が現れたというニュースがありました:

東京の離島「式根島」、島おこしIT技術者を募集中(ITmedia News)

伊豆七島の1つである式根島が、IT技術を活用して島を活性化させるアイデアを募集するとのこと。コンテスト形式で行われ、優勝者には豪華商品が贈られるそうです。マイクロソフトもこのコンテストを後援していて、応募はマイクロソフトのウェブサイトから行うことができます(詳しくは記事を参照のこと)。マイクロソフトが支援している背景には、「IT技術者の社会的イメージを向上させたい」という狙いもあるようですが、このような取り組みは純粋に歓迎したいですね。

ただ、実際どこまで有効なアイデアを期待できるでしょうか。募集サイトによれば、作成するのは「四季を通じての観光客の誘致につながる IT システムの提案」、ターゲットは「都市圏に住む子連れファミリー」、条件は「IT を駆使していること」「概算100万円」などの制限があります。また参加者も3人1チーム(編成は主催者側で決定)で5チームのみとのこと。本当に島おこしを考えるなら、どんなアイデアでも受け付けて、その中から優れたものを採用するという形式でも良かったように思います(それこそキャンペーンブログ/SNSなどを立ち上げて、アイデアをどんどんポスト/トラックバック/コメントしてもらうとか)。

ともあれ、提示されている条件の中で、どのような提案が考えられるでしょうか。「四季を通じて家族連れを呼び寄せる(しかも予算は100万円で)」というな企画というとなかなかハードルが高いですが、IT技術を活用してとなると、やはり最近流行りのWeb 2.0的なアプローチが1つのアプローチとなるように思います。「地元の観光協会→潜在観光客」という構図ではなく、「式根島の島民⇔東京の核家族」というような関係を実現するような場をウェブ上に用意できたら面白いのではないでしょうか。

例えば、式根島島民の全員が参加するSNSを設置し、島民の方々には積極的に情報を投稿してもらいます。ITに詳しくない方々をどう取り込むかという問題がありますが、例えば郵便局など住民が頻繁に利用し、かつ事務員が常駐している場所に端末を置いて、閲覧/投稿を事務員の手助けを借りて行ってもらうなどの対応が可能でしょう(もちろんサイトはユニバーサルデザインに準拠するもので)。投稿する情報は何でも可。それこそ、特産物やビーチ・温泉の宣伝といった従来型の「観光客誘致用情報」も良いですし、地域の悩みや問題、地域の昔話や伝承・神話などまで網羅した、式根島のあらゆる知識・知恵が詰まったおもちゃ箱的なサイトを目指します。もちろん島民以外の人々にもサイトを開放し、島民達の「会話」に参加してもらって、式根島を身近な存在として感じてもらいます。

バイラル・マーケティングの専門家として有名なSeth Godinが、

All you can buy is the story.(人々がお金を払うのは「物語」だ)

という言葉を残していますが、逆に物語を伝えることによって、従来は興味を持ってもらえなかったものに人々を惹きつけることができると思います。式根島にも島民しか知らない、これまで語られたことのない「物語」が数多くあるはずです。それらが語られ、伝えられる場をIT技術で造り出すことによって、四季を通じた観光客の誘致が可能になるのではないでしょうか。いや、「観光客」を呼ぶというよりも、「関心客」を参加させるという表現の方が適切かもしれません。

適当な意見を言うのはこれぐらいにして。イベントは5月12日から14日にかけて行われ、14日にプレゼンテーションと審査、各賞の発表が行われるとのこと。作成された提案は他の地方自治体にとっても参考になるでしょうから、どんなアイデアが出てくるか注目したいですね。

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