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あれこれ考えるよりも作ってしまった方が早いんじゃね?と思う、ギークなサラリーマンのアジャイルな日々。

ANAの欠航判断に思う、顧客至上主義と利益至上主義

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私ごとですが、先週1週間夏休みをいただいたので、沖縄県の石垣島を訪れました。

本当は日曜日から29日土曜日までの6泊7日の予定だったのですが、ご存知の通り、台風17号が28日から29日にかけて石垣島を直撃する予報が既に26日には出ていたので、予定を切り上げて29日の全日空の石垣-那覇便、那覇-羽田便を、27日石垣-那覇最終便、翌28日朝いちの那覇-羽田便に振り替えました。

ところが、27日夕の段階で石垣島では既に強風が吹き、台風に慣れていない私は空港に向かうタクシーの中で、「もしかして飛ばなかったらどうしよう・・・」と内心ひやひやしていました。

搭乗の1時間半も前に、空港の全日空の出発ロビーに着くと、そこには既に空席待ちをしている多くの旅行者でごったがえしていました。

早めに予約を変更して良かったなーと思いつつ、出発案内ボードを見ると、そこには、

「18:40 ANA1782 CANCELED 欠航 」の文字が・・・。

え?!俺が乗る便じゃん!!

一気に血の気が引いた私。さっきまで、「あー、可哀そうだなー」と少し上から目線で見ていた空席待ちの旅行者たちのひとりになってしまった私は、仕方なくその最後尾に並び、空席待ち整理券を何とかもらったものの、そこに記された空席待ち案内番号は種別B:番号156番。。

空席待ちの状況を知らせるディスプレイを見ると、現在の種別Bの空席待ち案内番号は14番。。私の前には種別Bだけで140人以上が待っていることに。。

前の便は既に予約でいっぱい。ちなみに石垣-那覇を空で結ぶ、B737-500の旅客定員は約120名。。前の便の全員がキャンセルしたところで乗れるわけがありません。。

数十分の違いが天国と地獄の分かれめ。「あー、なんで一本前の便にしておかなかったんだろう。。」と本当にがっかり。でも、それはもう後の祭り、後悔先に立たず。前の便の搭乗が始まるころにはえいやっと覚悟を決めて、数十分前にチェックアウトした空港近くのホテルに戻るべく強風に交じって小雨もちらついてきたタクシー乗り場に向かった私。。

ホテルに戻るタクシーの車中、運転手さんに自分が乗る予定だったANA最終便が欠航になったことを話すと、運転手さんからは意外な言葉が!

運転手さん:「あれー、これくらいの風だったら普通飛ぶんだけどなー」

私:「いや、台風のため欠航ですって。前の便は出たんですけどね。。」

運転手さん:「あー、そうか。うちの倅が(那覇から)乗る便が欠航になったって言ってたから、その機材を使う便やね」

運転手さん:「でも、たぶんそのあとの那覇からの最終便は来ると思うよー。うちの倅はその便で帰ってくるから」

私:「え?降りられるですか?」

運転手さん:「たぶん、那覇からの便が欠航になったのは客が乗ってないからさー。カラの便飛ばしても仕方ないさぁ」

私:「え?天候のせいじゃない?!」

運転手さん:「まー、そうさねえ。島人以外、こんな台風の中来ないからねぇ」

私:「・・・。」(え?飛ばそうと思えば飛ばせたのに、採算が合わないから飛ばさなかったの?!そして、その機材が来なかったから最終便を欠航にしたの?!)

運転手さん:「でも、たぶん最終便が飛ぶからー、その機材を返す臨時便が出るかもしれんねー」

私:「ほんとですか!?」

運転手さん:「明日、朝一かもしれんけど、早めに機材を引き上げたほうがいいからねー」

というような話を運転手さんとした私は、ホテルに戻ってすぐに、ANAの予約センターに電話をしてみることに。。

私:「すみません。本日石垣から那覇の最終便に乗る予定だったのですが欠航したので、再度振替をお願いします。」

オペ:「それは大変申し訳ございません。いつの便に振替られますか?」

私:「もしかしたら、今日、臨時便があるかも?って聞いたのですが」

オペ:「申し訳ございません。こちらにはそういった情報は一切入ってきておりませんので。。」

私:「今日、臨時便が出たらそれに振り替えていただくことは可能ですか?」

オペ:「こちらにはそういった情報は入ってこないので、空港で直接聞いていただく形になります」

私:「先ほどまで空港にいたのですが、運航予定の便の空席待ちが無理だったので帰ってきたのです。空港に連絡すれば、臨時便があるかどうか教えてもらえますか?」

オペ:「空港に直接連絡とれる電話番号はございませんので。。」

私:「じゃ、空港にもう一度行けと??」

オペ:「そうしていただくか、こちらに再度お電話いただく形になります」

私:「わかりました。。とりあえず、搭乗予定だった予約を搭乗時刻までに振り替えないといけないので、明日、乗れる便を案内してください!!」

オペ:「はい!承ります!明日の便ですと11時の便が一番早くお取り・・・」

納得いかないものの、とりあえず、予約を振替えないといけないので、その手続きを済ませ、ネットで一縷の望みの那覇-石垣最終便の動向をチェックすることに。

ANAの運航状況(http://fli.ana.co.jp/fsm/jmp/fli/fli/pda/mobiledom)でその便のフライト情報を見ると、「出発済み」の表示が!!

イエス!!と喜んだのも束の間。その下に「※到着地の天候により引き返す恐れあり」という注意書きが!でも、JTAや日本航空、RACの飛行機は今も問題なく着陸しているようだし、タクシーの運転手さんは、ANAのB737が最も風に強いと言っていた。。

これは、来る!きっと来るー!ということで、その便が臨時便として客を乗せて那覇まで戻るだろうという運転手さんの言葉を信じ、またタクシーで石垣空港にトンボ帰りすることに。

そして、ANAの出発ロビーに入ると、最後の飛行機が出てから2時間くらいが経とうとしているロビーはまだ旅行者で賑わっていました。そして、搭乗案内を見ると、臨時便の表示が!!!

ただ、空席待ち番号の数字は種別Bはまだ40番。。種別AやSで待っている人も入れると乗れるか?乗れないか微妙なところ。。手に汗を握り、口を乾かしながら待つこと10分。空席待ち番号の表示はみるみる進み、とうとう150番台に!

イエス!!!!ANA最高ー!!!!

とうとう、臨時便の席を手に入れた私は、まさに地獄からまた天国に舞い戻った気持ちで保安ゲートを抜け搭乗ゲートに向かいました。

搭乗口の前の席でなんとか落ち着いた私ですが。。

よくよく考えてみると、なぜ、こんなに私が苦労したかというと、そもそも、ANAが採算の合わない那覇からの便を欠航にし、搭乗予定のお客さんを最終便に回し、その機材が来なかったから、石垣からの最終便が早々に欠航になったのではないか。

そのせいで、早く台風から逃れたいと思っていた多くの搭乗客をパニックに陥れ、無駄に空港とホテルを行き来させたり、泊ろうと思っていた那覇のホテルをキャンセルさせたり、予約センターに何度も電話をさせたり(その度にANAのメロディーを何分も聞かされ待たされる)したのではないか。

ノー!!!!ANA最低ー!!!!

私の中で、一気にANAの株価は急降下。

よくよく調べてみると、JTAやJALで27日に那覇行きで欠航した便はない。それどころか、JTAは翌28日の朝に那覇から石垣に2便も飛ばしている(そのうちの1機は引き返した模様)くらいだ。JTAの石垣行きに乗った人のTweetを見てみると機内はガラガラ、20人くらいしか乗っていなかったらしい。

そのエアラインのタリフ(定価)や、航続距離や機材によって変わってくると思うが、一般的にB737-500の場合だったら60%くらいの搭乗率(つまり約70名以上)くらいが採算ラインと言われていると思う。

ANAが採算のために欠航の判断をしたというのは、もしかすると私の邪推かもしれない。

ただ、ANAが欠航を決めた数十分前の便は問題なく飛び、欠航の数時間後に欠航した搭乗客には何の案内もなく臨時便を出すというはちょっとおかしな話だ。

非常時のときの対応にこそ、その企業の姿勢が浮き彫りになる。

ローコストキャリアの参入があり、コスト削減など経営の効率化を進めないといけないのは企業人として十分分かる。だが、離島石垣と沖縄本島を結ぶ航路は重要なライフラインである。それに、石垣空港には週末までの楽しい旅行の予定を切り上げてまでそれぞれの職場や学校に戻ろうとしていた多くの旅行者がいた。それを無視して、採算性だけで欠航を決めたのだとしたら問題なのではないだろうか。また、その欠航した便に乗ろうとした搭乗客に対するケアが酷過ぎる。天気天災だから仕方が無いですねとはとても思えない。

既存のエアラインとしては、ローコストキャリアとの競争やすみ分けをしていく上で、今一度、利益至上主義だけではなく、適切な顧客至上(満足)主義に立ち返ってもらいたいと思う次第だ。

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