年次有給休暇取得の義務化について概要及び対応策
まだ皆様の記憶に新しい、平成30年6月29日「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案」の可決により、様々な働き方に関する話題が日々ニュースで流れています。
中でも注目を浴びたのは、時間外労働時間の上限規制や高度プロフェッショナル制度です。
他にも、同じく2019年4月に施行されるのが、年5日間の年次有給休暇の取得義務化です。
今回は年次有給休暇の取得義務化についてお話いたします。
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そもそも年次有給休暇の取得義務化の背景として以下のようなことが考えられています。
事の始まりは、世界各国に比べ日本人の有給取得率の低さが起因となっております。厚生労働省の「労働条件総合調査」によると、日本の有給休暇消化率は【49.4%】です、一方、フランス【100%】やイタリア【75%】など各国で大きな差があります。
また、以下のような日本特有の考え方も有給休暇消化率の低さに影響しています。
・取得に関して皆に迷惑をかけてしまいためらいを感じる
・職場の雰囲気で取得しづらい
・上司が良く思わない
※参照:アンケート「仕事休もっ化計画」厚生労働省
このような背景の中、企業が有給休暇を社員に年間5日間の取得を義務化する流れになりました。
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ご存知の方も多いとは思いますが、改めて年次有給休暇の取得義務化の概要を簡単にまとめますと、
【対象】年次有給休暇の付与日数が10日以上の労働者
【付与日数】5日間
【取得期間】付与日から1年間
【違反】違反した場合、30万以下の罰金
もともと年次有給休暇は、労働者が自由に取得できる権利(時季指定権)をもっていますが、今後は、労働者が自由に選択することに加え、企業から年次有給休暇取得を働きかけることが必須となり、早急に対策・改善案を考える必要があります。
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企業が対応すべき2点あります。
・1点目:法律・現状を正しく把握し、記録
・2点目:年次有給休暇取得の仕組み化・方法
■1点目:法律・現状把握
対象となる従業員は、正社員・フルタイム契約社員に加えアルバイト・パートも対象となります。特にアルバイト・パートについては、出勤日数に応じて年次有給休暇の付与日数が10日以上になるタイミングが異なるため注意が必要です。
10日の年次有給休暇を付与された日を基準日として1年間を有効期間の定めとする為、人により基準日が異なります。その為、管理が複雑化するので、システム用いてステータス管理をする必要があります。また、2019年4月以降から年次有給休暇の管理が義務付けされる為、いまから管理方法について検討することが重要です。
■2点目:仕組み化・方法
方法には2つあります。
(1)個別指定
従業員ごとに個別でチェックを行い、違反(5日未満/年)にならないように、会社が有給休暇取得日の指定・提案をする方法です。
計画して有給休暇を取得させる事ではない為、柔軟に運用することができます。
しかし、従業員ごとにチェックする必要があるため、ステータス管理の手間がかかります。
(2)計画年休制
あらかじめ従業員の年次有給休暇のうち、5日/年を超える部分について、会社が日にちを指定することができる制度です。しかし、本来の従業員による年次有給休暇の自由取得に反する為、従業員代表との労使協定を締結する事が必須となります。
計画年休制度は、個別でステータス管理する必要がなくなるため、運用負荷が軽くなります。一方、労使協定を締結をすることや、指定した年次有給取得を会社都合で変更することができない為、個別指定方式とは反対に柔軟な運用は難しいです。
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また、業務側の観点では、年次有給休暇の取得を実現させるためには、業務改善についても考える必要があります。
現状で年次有給休暇を取得しづらい理由として、属人性が高い仕事や業務量が多いことが挙げられます。その為、今後は「常に休む人がいる」前提で業務改善をしていかなければなりません。
具体的には、業務のマニュアル化や情報・資料共有の仕組み化、業務に対しチーム制をひき、お互いをカバーできるようにするなど対策をすることができます。
実際に他社事例ですが、有給取得を推進し業務の引き継ぎを行わせることにより、以前より生産性や組織の活性化につながった企業も存在します。
個人の生産性やワークライフバランスの関係を考慮し、業務改善について今一度向き合う良い機会だと考えます。
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ここ数年で、働き方が変化していく中、労働者側は企業がどのような働き方改革をしているのかきびしい目で企業を見ています。最近では、働き方改革に則り、採用競争力として企業間で差を出している会社が非常に増え、企業は対策を考えなければなりません。
改めて、今回お話した年次有給休暇取得の義務化は、大手・中小企業関係せず2019年4月から施行となります。本題の対策を考えるのはもちろんのことですが、有給休暇を取得させることを前提とした要員構成や業務改善など・・・、周辺領域も整備も今回法改正をきっかけに検討してみてはいかがでしょうか。
組織開発コンサルティング事業部
田中 海斗