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組織を活性化させていく上で外せないポイントを、企業や組織が抱える問題や課題と照らし合わせて分かりやすく解説します。日々現場でコンサルティングワークに奔走するコンサルタントが、それぞれの得意領域に沿って交代でご紹介します。

組織・人事施策が効果を発揮しない理由

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 組織や人事に関する取り組みは、取り組みそのものが、問題や課題に直接的に作用をして効果を発揮するのではなく、その取り組みの成果(制度や研修の内容など)に沿って、組織や人が行動することで、初めて効果や結果につながります。

 つまり、効果や結果から逆算して考えてみると、問題や課題に対して、間接的な施策になる場合が多いと言えるでしょう。そのため、組織・人事の取り組みは、具体的な効果や結果が見られるまでに一定の時間を要する場合が少なくありません。企業各社においては、少しでも早く組織・人事に関する取り組みの効果を発揮させるために、新しい解決策を模索しつつ、取り組みの精度や完成度にこだわりを持ち、日々試行錯誤を重ねているのが現状でしょう。

 しかし、この新しい解決策の模索や取り組みの精度や完成度へのこだわりが、逆に取り組みの形骸化を促進している場合もあるのです。経営戦略やマーケティングなどにトレンドがあるのと同じくして、組織・人事の領域においてもトレンドが存在します。

 モチベーションやコンピテンシー、リーダーシップ、チームビルディングなど、アカデミックなバックボーンがあり、また、その手法を有名企業や優良企業が導入し ていることで、その理論や解決策はトレンドとなり市場に流通します。しかし、このトレンドが、取り組みの形骸化を招いている場合があるのです。

 例えば、コンピテンシー。コンピテンシーとは、行動特性の事を指しており、一覧化されたもの(ディクショナリー)が存在します。

 少し乱暴に言うと、このコンピテンシーディクショナリーをバイブルにして、人事制度の設計や教育研修を実施することで、高業績をもたらす人材作りを行ったりします。ここで少し考えて頂きたいのが、高業績者に見られる行動特性と呼ばれるものの存在についてです。

 市場には、金融、商社、製造、IT、サービスなど、さまざまな業種・業界が存在すると共に、その組織の中で与えられた役割や職種においてもさまざま存在します。また市場環境における自社の立ち位置(勝ち組/負け組)も違えば、成長ステージ(創業・成長・成熟・衰退)も異なり、当然、打つべき戦略や施策も異なってきます。

 そのような中、本当にコンピテンシーディクショナリーのような定型化されたバイブルを基にして、人事制度の設計や教育研修を行って、高業績を残す人材作りが出来るのかと考えると、少し疑問が残ります。

 本来論で考えるならば、業種・業界や役割・職種、市場環境、成長ステージを理解しつつ、戦略や施策の実現に向けて、組織・人事の取り組みは存在すべきでしょう。

 しかし、前述のようなトレンドやアカデミックな理論、また同様の解決策を導入したばかりに、そのトレンドやアカデミックな理論に対する精度や完成度を追求してしまっている場合も少なくありません。前述で、新しい解決策の模索や取り組みの精度や完成度へのこだわりが、逆に取り組みの形骸化を促進している場合もあると述べました。

 つまり、これらのトレンドやアカデミックな理論に沿った解決策を導入することそのものが目的になってしまい、本来目的となるべき、経営課題の解消が語られないまま、取り組みが進んでいく場合があるということです。このような、手段の目的化が発生しないように、トレンドやアカデミックな理論の精度や完成度よりも、むしろ、これらの使い方に拘るべきであろうと私は考えています。

 このようなトレンドやアカデミックな理論に沿った解決策は、どれだけ秀逸なものであったとしても、それはあくまで手段であり、目的ではないことを常に頭におき、改革を進めていく必要があると言えるでしょう。

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